18 降り積もる
「とぼけるな!何年も前、私がランバル公爵邸の舞踏会に出席した時、海賊の襲撃があった。シアーズだ。その時、貴様は、貴様は……!」
カニバーリェス卿は怒りのあまり、言葉が出なくなっている。スペイン兵は、上司とローランド卿をちらちらと見比べている。
「ランバル公爵邸にスパイに来ていた!私はお前らに騙された!」
ローランド卿はよく覚えていないようで、少し難しい顔をしていた。
「お前が『デイジー夫人』号を盗られた時のことだろう?お前らって言われても……あれはシアーズが返したと聞いたし、俺は何もしていない!全く関係ないだろう。どうした、俺と同い年でもう痴呆が始まったのか」
「ふざけるな!お前が変に女装なぞしておったせいで、私を惑わせてそのすきに鍵を盗ろうという魂胆だったんだろう、この変態が!」
ローランド卿は今ので完全に思い出したようで、頬を赤くした。兵士達が一斉にローランド卿を振り向く。まるで変態を見るような視線。ローランド卿は恥ずかしさで、握った拳が震えていた。
「お前なあ……さっきからあることないことべらべらべらべらと……なんでもかんでも俺のせいにするなっ。だいたい、その女装した奴に下心見え見えで、へらへら近づいてきたのはてめーだろーが!この野郎!」
二人の横で、スペイン兵が明らかに困っていた。カニバーリェス卿はローランド卿の口の悪さに驚いた。
だが、今度は部下が己のことを変態を見るように見ていた。
「そ……そうだったんですか、上官殿!ちっとも存じませず……失礼しました!」
「違う!断じて違う!私はそういう趣味はないんだ!」
嘘つけ、とローランド卿の声がした。
「思い出したぜ。お前、女の格好してた俺に慣れ慣れしく近づいてきた挙句、いきなりベッドへ引き込もうとしたよなあ。任務遂行のためにネタばらしは回避したが、そうでなきゃあの場で恥かかせてやったんだぜ?あと、俺に女装趣味はねえからな!あれは任務だ!分かったかこの色ボケ野郎!」




