15 激白と告白
「どんな人でも、あの人は私の運命を変えた!ここにいるのは誰のおかげでもない、義父上のおかげなんだ!義父上があの時、私を救って下さらなかったら、お前達は私の存在につゆほども気付かない。ましてやどこで野垂れ死のうと、私の死に気付くものなどいなかった!だが今は違う、そうだろう?私の名は通り、私が死ねば世界中の者が知る。誰のおかげだ?義父上、エドモンド卿が私を救って下さったからだ!愛情なんて、家族なんてなくても良かった。初めっから望んでもいない。でも私は命を救って下さった代償として、義父上のためにこの一生を差し出すことを決めた。だが守れなかった……。だからせめて、遺志を継いでいこうと決めたのだ。何も知らぬくせに、義父上を侮辱することは許さん!」
ローランド卿は興奮のあまり、目に涙が溜まっていた。カニバーリェス卿は面食らった表情をしていたが、すぐににやりと笑うと口を開いた。
「そうだったな……お前の義父親は。シアーズはこのことを知っているのか?」
そして、シアーズをちらりと見やった。なんとも嫌な大人の目だ。何のことかさっぱり分からず、シアーズは大きく目を見開いている。ローランド卿はしまった、と思った。だがもう遅い。
「何のことだ……」
シアーズが小さく呟いた。とてもとぼけているようには聞こえない。
「知らないのか。丁度いい、死ぬ前にシアーズに真実を教えてやれよ、ローランド」
「それはっ……。昔、三人で封印すると約束したはずだ、カニバーリェス卿……」
「そうだったか?今、気が動転していてね……」
そう言うとカニバーリェス卿は髪を掻き上げた。口許にはとても愉快そうな微笑みがある。
「何なんだ……一体!言えよ、ウィル!」
ローランド卿は若干青ざめた顔をしていた。気分が悪そうだ。サンタ・バールバラ島でスペインに敗北を味わった時よりも悲壮な顔をしている。だが、覚悟したように、口を開いた。
「さっき言った……私は、私の命の恩人を、義父上を守れなかったと。お前は知る必要が無かった、いや、知って欲しくなかったから、だから言わなかったんだ。……以前、私がロバート・シアーズ伯爵を海の上で殺したのは、自分の保身の為だと言った。それも事実には違いない。実際、私は伯爵に命を狙われていた。こんな貧民出身の穢れた血の者が権力を持っては面倒だからな。だが、もう一つ理由があった」
ローランド卿は覚悟を決めたかのように目を閉じた。




