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海に堕ちた太陽 【蒼碧の鎖-4-】  作者: 沖津 奏
第2章 泡沫の末路
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14 沼地の海鳥

 シアーズは一瞬で考えをめぐらした。戦っていたスペイン兵の頭上をひらりと飛び越え、ローランド卿の前に跪いた。少々いらついた表情で帽子をとり胸の前に持ってきて、上目づかいでにやりとした。

「これで満足か?将軍殿?」

 ローランド卿は目を見開き、息を飲んだ。やっぱり馬鹿かもしれない、と思い直した。こんなところで自らしゃがみこむなんて、とても正気の沙汰とは思えない。

「シアーズに続け!私は後から行く!」

 スペイン軍が広場になだれ込んできた。シアーズは、とりあえず蹴散らせ、と命令する。彼の部下はもちろんそれに従っている。そして、イギリス海軍も上官の命令に諦めたように、だが信頼をもってその言葉に従った。

 カニバーリェス卿がローランド卿の前に立ちはだかった。

「堕ちたものだ!海賊に助けられるのか!」

 いくら体力が落ちていないとはいっても、ローランド卿が不利なことに変わりはない。

「言い残したいことがあるなら言え。私だって鬼じゃないんでね。それくらいはやってやるぞ。愛しの恋人や、家族に別れを言うなら今だ。確かに伝えてやろう。」

 ローランド卿は鼻で笑って、顔をしかめて言った。

「あいにく、私にはそんな者はいないのでね……。親切を無駄にしてすまない」

 カニバーリェス卿は非常にうれしそうな顔をした。

「なんと、可哀そうな奴め!せっかく子どもの頃に生き残ったと思ったら、あのローランド卿なんかに引き取られたせいで、愛情も何も知らずに育つとは!そのせいで家族もいないのか。他の貴族にもらわれていたら、奴隷としてでもまだマシだったろうに!」

 ローランド卿の顔が引きつった。

「黙れえっ!義父上を侮辱するな!」

 広場がしん、と静まり返った。皆がローランド卿に注目している。


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