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海に堕ちた太陽 【蒼碧の鎖-4-】  作者: 沖津 奏
第2章 泡沫の末路
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13 掴んだ手

 指揮をとっていたカニバーリェス卿も思わず振り返った。人の輪が崩れ、その中から一人が広場に躍り出た。

「お前っ、シアーズ!何でここに!」

 カニバーリェス卿が叫んだ。ローランド卿は、よくあの海軍の警戒の中来られたものだという驚きと同時に、こいつは正真正銘の馬鹿だと思った。

「お前にこんなことで死なれちゃ寝覚めが悪いんだよ。それに……」

 シアーズはカニバーリェス卿を睨んで言った。

「こいつを殺していいのは、俺だけなんだ」

 カニバーリェス卿は顔を引きつらせながら、部下に叫んだ。

「こいつをローランド共々撃ちぬけ!」

 だが崩れた態勢を立て直すのに時間がかかった。シアーズは、ほら、とローランド卿に剣を投げた。先に手錠を外せ、とローランド卿は文句を言う。動きにくくて仕方がない。部下は、と目をやると、シアーズの部下に手錠を外されたようで、武器を受けとり戦っている。だが、何が何だか分かっていないようだ。どうやらローランド卿を見て、上官が海賊と共に戦っているから自分たちも、という感覚でやっているようだ。まあ、当然か。

 シアーズの部下の一人が駆け寄ってきて、ローランド卿の手錠を外した。礼を言うと、キャプテンの元へ行って下さい、と言われた。そういえば奴は昔から、逃げ道を作るのは上手かった。作戦失敗の時も助けられたことがある。奴がきちんと計画してここへ来たとしたら、いけるかもしれない。

「シアーズ、わざわざやって来たからには、ちゃんと計画があるんだろうな。俺はどうすればいい?」

 ローランド卿は戦いながらシアーズの元へ行った。シアーズも戦いながら答えた。

「お前の部下を寄越せ!全員無事に帰してやる!お前はカニバーリェスと決着つけるのか?」

「なっ……ふざけるな!誰が海賊なんかに私の部下を!」

 ちっと舌打ちが聞こえた。

「じゃあ俺はどうすりゃいいってんだよ、ウィル!」

「知るか!信じるに値すると今この場で証明して見せろ!そうしたら信じてやる」

 呆れたようにシアーズはローランド卿を睨んだ。

 こいつは昔っからそうだ。頑固な石頭だ。

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