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エルフの森

ファンタジーというか、そんな雰囲気の少年二人と少女一人の物語です



ふたりの少年がならんで歩いている。


一人はルセ。年の頃は13歳位だろか?細くて多めのサラサラな栗色の髪を短髪にした、

かわいらしい小柄な男の子。


もう一人はカルミク。

長身でルセより少し大人びてみえる彼は金色の長い髪が良く似合っていた。


ピンクかムラサキか決めかねるような色をしていた雲が放射状になって後ろの方に躍動しながら横につぶれたSOLを町のむこうに押し込んでいく。

カルミクの横顔はピンク色だった。

SOLが押し込まれていくのにはまるで興味がなさそうに真直ぐ、がたがたしてる地平線をみていた。


きれいだった。


ルセはカルミクとはずっとなかよしだった。

 

二人は町の学問所の帰りに本屋に寄って、少し長居をしすぎてしまった。


カルミクがなにを考えてるのかわからなかったし、気になってしかたがなかった。

じっとカルミクの横顔を見ていたルセはカルミクがこっちを突然見た時びっくりして前を向いた。

「なんだよ」

カルミクはいじわるそうに一言だけ言った。

「いや、なんでも」

ルセはそのままカルミクを見ずに歩きつづけた。

カルミクもそのままルセの横顔を見ながら歩き続けた。

しばらくそんなふうにそのまま歩き続けた。

「な、なに?」

ルセは前を向いたまま横目でカルミクをみた。

カルミクはククッと笑った。

「おかえし」




 

屋根裏のモノノケと呼ばれる小動物(単にモケとも呼ばれることもある)には奇妙な習性がある。

この毛むくじゃらの丸っこいほ乳類は多くの生物学者の研究対象にされていたが、いまだに誰一人としてなぜそんな習性を持ったのか、

正確な答えを見つける事はできずにいる。  

この小動物は文字どおり、普段は屋根裏にひっそりとくらしている。

ところが一日に24回、ぴったり同じ間隔の時間に一回、ぞろぞろと集団で屋根裏から飛び下りて、

そしてまた急いで屋根裏のもといた場所に戻り、またひっそりと次の時間を待つのだ。  

でも研究者達が何を言おうと人々にはあまり関係がなかった。

人々にとって この小動物は、寺院や学問所の鐘を一定時間で鳴らしてくれるかしこく便利で無害な動物だった。  

彼等は今日も時間になると学問所の釣り鐘塔の屋根裏から次々と飛び下りて、ちょうど中間あたりにある円盤状の鐘に頭をぶっつけて、

ガゴ〜ン ガゴ〜ンと鐘を鳴らし、時を刻んではまた屋根裏にもどっていった。  

鐘が鳴り始めると先生はすぐに教科書をぱたっと閉じて

「それではこの続きはまた明日」と言って鐘が鳴り終わるのを待たずに、教室を出ていってしまった。

ルセは教科書に顔半分を隠して斜め前方三つめの席にある、きれいなうなじと白く透明感の頬と、やや、とがりぎみの耳をもつ女の子の後姿をぼぉっとながめていた。


もし、手をのばしてそれに触れたら、そのまますぅっと存在がなくなってしまいそうな気がした。



女の子の名はチャチャといった。



今ではもう、珍しくなってしまったエルフの一族で、ずっと遠くにあるエルフの森から通っているらしかった。


ルセはこの、おとなしくてかわいらしいチャチャが気になってしょうがなかった。

春のクラス替えの時、出会ったときから。

だからいつも見ていた。

仲良くしたいとも思っていたけど、ルセにはこのおとなしい女の子に自分から声をかけられるような勇気はなかったし、チャチャの方もルセどころか、他の誰ともあまり喋ったりはしなかった。


「ルセ!」

「・・・・・・あ、カル、カルミク?」

授業が終わって、カルミクがすぐに声をかけてきた。

ルセはチャチャの事ばかり考えていたので、返事が出てくるまで少し間が空いた。


「今日もよってくから・本屋さん。」

「ん、ああ・そうだね、行こう」

チャチャがすっとこちらを見た気がした。カルミクもチャチャを見た。

「はーい!ラブリーチャチャー!今日もすっげーすてきだ!」

ルセはギョっとしてそう言ったカルミクを見て、それからチャチャを見た。


カルミクはよそ行きみたいな爽やかな笑顔を作って大きく両手を広げている。

チャチャの透明な顔がさっと赤くなった。

カルミクがチャチャのそばに寄ろうとする動きが少しあった。

右手の親指がちょっとだけ上を向いたのだろうか。チャチャはそれをすぐに察知した。

教科書を急いで抱えたチャチャは、きびすをかえしてクルっとあちらの方をむいて、とろとろと走り去ってしまった。


「あれ?・・・・おれってばきらわれてる?」

言ってる事とは違ってカルミクは素敵な笑顔だ。

ルセは下の方から目線だけカルミクをみあげて


ちがうよ 

と思った。


そんなことずっと前から知っていた。

チャチャハカルミクガスキナンダ


「僕も好きだけどね」 声にだしてつぶやいてみた。


「おれもおまえが好きだぜルセ。ってゆーか、愛してる」

カルミクがルセにググーッとよっかかってきた。

ルセはとりあえず上唇をかんで、目をかっと開いて、肩に首をうずめて。それをささえてた。

カルミクには脈絡とか関係ないし、「好き」という言葉が自分にむけられたものだと言う事を、疑いもしない。

「そ、 そりゃどーも」




カルミクは本屋で立ち読みするのが大好きだ。

部屋には一冊の本さえおいてないと言うのに、カルミクは本屋でよく本を読む。

待っているのだろう。 ルセは、カルミクは待っているのだろうと思っていた。

でも、カルミクの横顔を見ていると、ただ、本を読むために本を読んでいるようにしか見えなかった。

読んでいる本のジャンルもメチャくちゃだ。


囲碁指南(神の一手への道)

アルジャーノンに花束を

AE標準エフェクト大全

How to Sex

ケルト妖精民話集



ただ、文字を追う事に喜びを感じているとしか、ルセには思えなかった。


カルミクはもうやめてしまったのだろうか。

彼を待つことを。


狂ってしまったとカルミクがルセに告げた、彼の父さんを待つ事を。



カルミクは迷子だった。


もっとずっと小さい頃、ルセは迷子だったカルミクを本屋の店先でひろって家に連れて帰ったのだ。


その頃ルセは毎週日曜日に教会へ行くことを欠かさずにしていたので、家から教会へいく途中にあるこの本屋に、通りかかるといつもいるキレイな男の子が気になっていた。

ある日ルセが教会の帰りに、やっぱり本屋にいてずっと立ち読みをしている男の子を気にして通り過ぎようとした時、男の子がフッと顔をあげた。

ルセはちょっとびっくりして顔を伏せて行こうとしたとき、男の子が駆けてきてルセの右手をつかんで乱暴に引き戻して言った。


「オレをひろってよ」


「え?」


そんな顔をして見せたルセに男の子は続けていった。


「おれ、お父さんに捨てられたらしい。キミ、オレの事好きなんだろ?」


ルセはその時のカルミクの笑った顔が今でも忘れられないでいる。




つれて来た直後こそルセの両親も戸惑って、警察や児童保護局に届け出てカルミクの身元の確証を得ようとしていたけど、

カルミクはまるでその場にその瞬間ポッと沸いて出たように何一つわかる事はなかった。

本人が言う「本屋で本を読んでいたらお父さんがいなくなった」という、それ以外は。



ルセの父親は町でホーロー鍋工場を経営していて少々裕福だった。

家もなかなか広かったしそれよりなにより父親は、ルセの内向的な性質を大変に心配していた。

そんな時一人息子が突然連れてきた、キレイに笑うこの子供を受け入れることは悪くない。

ルセのそんな性質に良い影響をあたえるだろうとも考えたようだった。


そんな訳ではカルミクはルセとはまるで兄弟のようにして暮らすようになった。





「チャチャってさ、おとなしいよね・・・・・」


いつものように二人は本屋の店先で立ち読みをしていた。

まっすぐ本に目線を落としているカルミクを横目にみながらルセが言い出したが、なんだか語尾が消えていってしまった。

聞いてないなと思ったのだ。


「知らないんだ?」


聞いてないそぶりだったカルミクがスッと顔を上げて、手にした本をパタと閉じたし、

なんのことだかルセには分からなかったので、声も出さずにまた

「え?」って顔をした。


「チャチャはエルフだろ?」


「知ってるよ?」


カルミクはクイっと顔を横にかたむけた。


「だからさ、エルフってその一族の特性で、年頃になると無口になるじゃん」


「そうなの?」


「知らないんだ」


カルミクは へぇー って顔をした。


ルセは知らなかった。エルフの事を。


なぜ、エルフが一族の数を減らし続けてきたのかを。そのせつない理由を。





エルフにとって言葉は魔法だった。


ヒトが当たり前に使っている言葉が、エルフにとっては魔法だった。

エルフは魔力を使って、初めて言葉を使えるのだと言う。

ヒトとコミュニケーションをとるため、常に魔法を使っているのだ。



そして恋も魔法だった。



ただそれは、エルフが自分の意思で魔力を消費して駆使する言葉と違って、突然心の中に発生して、

エルフの能動的意思とはまるで関係なく魔力を消費していくのだ。


恋心が強く深くなればなるほどエルフは魔力を消費し続け、そしてだんだんと言葉を使うための魔力も失っていく。

気持ちを伝えるための言葉を失っていくのだ。


そしてその恋心を伝える事のできなかったエルフは、いずれすべての言葉を失い、魔力を枯渇させる。


魔力を枯渇させたエルフは月が十三の齢を数える晩、森へ入る。

そして夜半を過ぎた頃、月の光を浴び恋しいヒトの事を想いながらエルフは樹木になる。


大地に根を下ろし、たくさんの葉をしたためた樹木へと変貌をとげる。


エルフはそこで、

ずっと、

永遠とも思える長い時を、

恋しいヒトの事を想いながら森の奥で樹木として生きていくのだ。



「え、なにそれ・・・ホント?」


「ん、ホント」


呆然としているルセにはおかまいなしに、カルミクはこともなげに言った。


「だからさ、チャチャは今だれかを好きなんだよ」







セオドアはいらだっていた。

先週末に鉄鉱石鉱山の坑道で落盤事故がおこって雇っていたドワーフの坑夫が3人怪我をしてしまった。

それに加え、坑道の復旧作業が遅々として遅れているため原材料を工場に入れられず、月曜の週明けからの工場の稼動ができない見通しなのだ。


このままだと製品の納期が大幅に遅れてしまいそうだ。

納品が遅れれば、代金の入金も遅れてしまうだろう。

そうなると設備投資のために銀行から借りた資金の返済期限が守れなくなって、工場が差し押さえられてしまうのだ。


セオドアはホーロー鍋の工場の経営者だった。

家族もあり、ここで工場を失う訳にはいかなかった。


一家三人と居候一人が路頭に迷うことになる。

そんなことは絶対に避けなければいけないと思っていた。


冷たい風の吹くなか、日曜日の朝からあちこちと金策に走っていた。

しかしどれだけ走っても、どれだけ頭を下げても、そんな大金を都合してくれる者もいなく、徒労に終わった。


少し疲れている事に気づいたセオドアは、大通りの脇にあるベンチに腰掛け、一息ついた。


通りの反対側、街路樹のむこう、

人々が往来しる隙間からふと見るとそこにはエルフの富くじ屋があった。

エルフの魔法を利用して国が運営している富くじ屋だ。

発行されるくじ自体は、ただの紙切れなのだが、エルフが魔法をかけることによって同じ番号のものは存在しないように発行できるし、偽造することもできなくなる。


セオドアはふらっとその富くじ屋の前に立った。


大人が両手を広げたくらいの小さな幅のテーブルにひさしがついただけの簡単な作りの店にはエルフの老婆がニコニコと微笑んで座っていた。


「いらっしゃい」


「当たるといくらもらえるんだい?」


「あんたがほしいだけもらえるよ」


エルフの老婆はセオドアの顔を下から上目遣いで見て言った。

エルフがいくら魔法を使えるからといって、ヒトの心の中までは分からないはずだとは思ったが、

セオドアはそれでもこの老婆には何か見透かされているような気分になった。


「ひとつ、もらおうか」


すると老婆は手のひら位の長方形のうすい紙と、見慣れない木でできたペンを懐からだしてセオドアに差し出した。


「これに1から99までの好きな数字を6個えらんで横書きに並べてかいておくれ」


セオドアは言われた通りにした。

すると老婆はその紙に手をあてて、すっと目を閉じた。

何かつぶやくように口元が小さく動いていた。


魔法をかけ終えると老婆はくじをセオドアに差し出した。


「あたりますように」


セオドアは代金を払ってそれを受け取った。





○本屋の主人の証言○


そう、あの頃ね、鉄道の駅が街にできた年だから、6年前かな、よく覚えていますよ。

顔のキレイな随分とノッポな男がふらっと店先に立っていてね。

まぁ、何かを探している風だったね。

ちょっと目を離したんだよ。

いや、ほんのちょっと。

で、ふと見たらさ、その男がいなくなっていてさ、その男に良く似た男の子が、双子かねー、二人立っててさ、こっちを見てるんだよ。

キレイな顔しているからまた尚更気味が悪くてねぇ。

いや、だからさ、ノッポの男と男の子がいたのでなくて、同じ背格好の同じ顔した男の子が二人いたんだよ。

なんだかまるでノッポの男が分裂して二人の男の子になったみたいに思えてさ。

そりゃぁもう、ゾッとしてしまってね。

で、その日は閉店までいてね、その二人。

あちこち本を立ち読みし放題さ、おれも気味悪いもんだから近づけなくてさ、もう、やりたい放題さね。

そしたらさ、その日から毎日なんだ。

毎日開店から閉店まで、毎日立ち読みしほうだいさ。

まぁ店も暇だから、お客が一人もいない店よりは客あたりいいかって、自分で納得してさ、ほっといたさ。

何日かそんな日が続いたんだけど、いつのまにか男の子が一人になってるんだ。

おれ其の時初めて思い切って声かけてみたんだ。

相手も一人になったので、あまり気味悪くなかったしね。

もう一人の子はどうしたんだい?ってね。

そしたらその子おれの問いかけなんか無視してこう言ったんだ。


「オレ迷子なんだよ。お父さんは頭おかしくなってどっか行っちゃったよ」





ルセは目玉焼きのタマゴの黄身がきらいだったけど残すとお父さんが怒るので、目玉焼きが朝食にでるとちょっと憂鬱だった。

ルセの家では毎朝家族4人で朝食を食べることになっている。

日曜日も同じ。例外はない。

朝の光がよく入ってくる南向きのリビングはルセもお気に入りだ。

そんな暖かい光の中、真ん丸い円卓を家族4人で囲む。


お母さんの料理は好きだったけど、

今日の朝食はお母さん特製のじゃが芋のポタージュと甘いジャムの乗ったトーストと焼いたパンチェッタと例のアレで、憂鬱になっていた。


カルミクは何でも食べた。でも何だか淡々と食べていて、美味しいんだか美味しくないんだかどう思っているのか全然わからない。

でも、どぉ?って聞くと「美味しいよ?」って言ってキレイに笑うのだ。


ルセはお父さんの顔色を伺いながら目玉焼きの黄身を口いっぱいにほおばって、ミルクで無理やり流し込んだ。

ルセは其の時お父さんの顔がすごく元気がない事に気がついた。


「お父さんどうしたの?元気がない」


そんな風に聞いてみればいいのに。とルセは思う。ルセはなんとなくそういう事を聞くことができないでいる。

するとカルミクがルセをひじでつついた。

ルセがカルミクを見るとカルミクはまたキレイな笑顔だ。

カルミクの笑顔はルセに「言え、言え」と言っていた。



「・・・・・・お父さんどうしたの?元気がない」


おとうさんはふいを突かれてちょっと固まったようだったけど、すぐにニッと笑った


「大丈夫、お母さんの料理で今日も元気いっぱい」


そう言っておとうさんはタマゴとパンチェッタをのせたパンをがぶりとかじる。


そして力こぶを作る


おかあさんはそんなおとうさんをとても幸せそうに見て、クスッと笑った。


ルセはこういったお父さんの演技がかった仕種や態度には随分前からいささかの違和感をもっていた。

正直ちょっとイヤだった。

でもお母さんの笑ってる顔をみると、なんだかこんな風なのもアリなのだと最近は思うようになった。


ふとカルミクを見るとまたあの綺麗な笑顔だ


どんな風に伝わってくるのか

どんな風に教えられているのか


それは分からなかったけど


カルミクがあんな風に笑うたびに、ルセは何かを学んでいるような気がした。

カルミクの笑顔にはそんな力があるのだ

と、ルセは感じている。




お昼休み

教室の窓際に机を二つくっつけて、ルセとカルミクは向かいあってお母さんが作って持たせてくれていたお弁当を食べた。

玉子はちゃんと玉子焼きになっていたので、ルセもおいしく食べることができた。

ルセは目玉焼きの黄身はキライだったけど、玉子焼きは大好きだった。

外はいくらか薄もやがかったハッキリしない天気だったけど、窓際でおもてを見ながら食事できるのはやっぱりいくらか気分がいい。


食べ終えた頃にまるでそのタイミングを待っていたかのように。ウサギの耳を頭につけた女の子が二人、カルミクに声をかけた。


ウサギの耳は最近女子の間ではやっているアクセサリーでカチューシャの上にそれぞれ好みの色や模様の入ったウサミミをつけた物だ。


「やぁ!イングリット!」

「やぁ!!オードリー!!」


カルミクはまたあの綺麗な笑顔だ。

大きく両腕を開いて立ち上がったカルミクに女子二人はうれしそうに駆け寄ってくる。


イングリットとオードリーは隣のクラスの双子の姉妹だ。

ただでさえ美しい女の子が双子でいつも一緒にいたので、学問所内でも知らない人がいないくらいによく目立っていた。


ルセはいまだにどっちがイングリットでどっちがオードリーなのか分からないでいたので、この二人のことは苦手に思っていた。

せめてウサミミくらい違った物をつければ良いのに

今日も二人はおんなじ形のおんなじ大きさのおんなじブルーの色でおんなじ大柄の水玉模様のウサミミをおんなじようにつけていた。


さらにやっかいな事に、カルミクはこうやって女の子がカルミクを慕ってやって来ると、人目もはばからず手をにぎったり肩を抱いたりと、

平気でやってくれるのだけど、でもそれは大きな問題ではなかった。



カルミクはその度にチラチラとルセの方を見て、反応を伺っているのだ。


これがもう、ルセにはいたたまれなかった。


いったいカルミクがどんなことを思ってルセを見ているかは全然分からなかったけど、居心地が悪いこと極まりない。


そんな時、ルセはふと、目線を上げた




心臓が凍りついたかと思った。




・・・・チャチャが



悲しそうな目だった。


こちらを見ていた。

カルミクが二人の女の子といるトコロを


机の幅で5個分くらい向こう

一人佇んでいた。

大きな丸い眼鏡越しに、あのキレイな瞳が悲しそうだった

胸の少し下前方に組まれた両手の指1本1本が悲しそうに揺れていた。


次の瞬間凍りついていたはずの心臓がまるでぶっ壊れて暴走を始めたようにドカンドカンと脈打ち出した


「何とかしなければいけない」


ルセはそう思った。

どうしようもなくそう思ってしまった。


「チャチャのあの悲しい目を、ボクが何とかしなければイケナイ」


「ボクが・・・」


カルミクでも他の誰でもない

ボクガナントカシナケレバイケナイ



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