その5:静かなる追及、王都への布石
フォレスト・ハウンドの討伐から数日。ギルド長の執務室での重苦しい報告を終え、エルタは静かにギルドを出た。領主への報告は済んだが、エルタの真の冒険はここからが本番だ。王都の冒険者学校の入学試験は、15歳にならないと受験資格が得られない。今の12歳の彼にとって、これからの3年間は、王都で結果を残すための、かけがえのない準備期間だった。
エルタはギルドの掲示板を見上げた。ここには、まだ自分にとって有益な依頼がたくさん残されている。
「あと3年……。この村で実績を積み、資金を稼ぎ、必要となる装備を揃える。何より、魔法について理解を深めてスキル合成をさらに突き詰める必要があるな」
エルタが想定しているのは、最近の新聞や噂で騒がれている「魔力変異事件」の影だ。王都近郊や各領地で多発する魔力汚染の報告は、彼にとって決して他人事ではない。もし自分が王都へ向かうまでに、この実験を行っている勢力が勢力を拡大すれば、入学後の学校生活すら脅かされることになる。新聞の記事には、現場から特殊な術式を施された魔石が発見されたという記述が散見される。それらは、組織的な関与を強く示唆していた。
(――今は、深追いは避ける。僕の力では、この一連の騒動の黒幕を暴くことはできない。……力と知識を蓄え、王都という学術と防衛の中枢へ行く。それが、この理不尽な状況に対抗する唯一の道だ)
彼は宿屋に戻ると、今後の行動指針を再構築した。
村での日々の依頼をこなし、着実に冒険者としての評価を固める。同時に、冒険者としての基礎知識も学び、それを応用し、魔石や薬草を効率的に調合することで、王都へ渡った際に即座にトップレベルの環境へ適応できるだけの備えを行う。
この3年間、彼は単なる魔物退治に留まらず、自身の魔力を極限まで制御し、高めるための過酷な訓練を自らに課し続けた。
朝は森での魔力感知訓練、昼はギルドでの依頼遂行と素材収集、夜は自室で術式の解析と合成の研究。休む暇などないはずだが、エルタの瞳には常に未来を見据える冷徹な輝きがあった。 自室に戻り、彼は机の上に自作のメモ帳を広げた。
「……魔石の術式構造をより詳細にトレースできれば、僕自身の魔法もより強固になるはずだ。あれを模倣し、自分だけの術式に組み込めれば……」
エルタの指先から淡い光が漏れる。それはハウンドを構成していた魔力循環術式を、エルタなりの解釈で分解・再構築した新しい術式だ。
(――防御にも応用できる。自身の魔力循環を外部からの干渉を受け付けない閉鎖系に変える……)
彼は無意識のうちに、未知の組織の技術を自身の血肉に変えようとしていた。ある種の危険な賭けだが、それこそが彼が持つ「魔術的適性」の真骨頂でもあった。
夜が深まる。エルタは窓を開け、夜風に当たった。
「3年後、僕は王都へ行く。そこへ行けば、もっと多くの理に出会える。彼らが何者で、何を目的としているのか……それを暴く鍵も、新聞が連日報じる現場の先にあるはずだ。放っておく訳にはいかないな。」
前世からのお人よしの性格は今でも変わっていなかったようだ。
彼はこの3年間で、ただの村の少年から、誰にも侮れない実力者へと変貌を遂げた。彼が討伐する魔物は、その痕跡ひとつ残さない完璧な処置がなされるようになった。周囲の村人たちも、最初は「器用な子供」と見ていた彼を、今では「将来有望な冒険者」として認め、尊敬の眼差しを向けるようになった。
しかし、エルタ自身は慢心することなく、ただひたすらに己の目標である王都入学、そしてその先にある組織の正体解明のために、一歩ずつ着実に前進し続けた。
そして、ついに3年の月日が流れた。15歳になったエルタの旅立ちの朝が訪れる。
村の空気はいつもと変わらないが、エルタの心は高鳴っていた。玄関先で、両親が待っていた。
父は無骨な手でエルタの肩を叩き、「お前ならどこへ行ってもやっていける。だが、無茶だけはするなよ」と短い言葉を贈った。
母は目に涙を浮かべながら、エルタの身だしなみを整え「王都は広い場所よ。でも、困ったときはいつでもここに帰りなさい。私たちがついているから」と優しく抱きしめた。
エルタは胸の奥が熱くなるのを感じながら、冒険者として必要な資金の一部を丁寧に小袋へ移し、両親の手にそっと預けた。
「父さん、母さん。これは僕の貯金の一部だ。何かあったときのために使ってほしい。僕は必ず、一人前の冒険者になってみせるよ」と力強く誓った。
村の門まで見送りに来たミアもまた、晴れやかな笑顔で送り出してくれた。
「あなたの活躍、ずっと応援しているわ。王都に行っても、あなたらしく頑張ってね」
エルタは感謝を告げ、力強く街道へと足を踏み出した。その背中には、冒険者として夢と希望を胸に秘めている。彼が求めた王都への道が、今、確かなものとして開かれた。
大陸の歴史をも変えていく一人の少年の伝説が、ここから幕を開ける。
この先の王都には、彼が求めていた「理」の真実、そして彼を待ち受ける未知の試練が眠っているのだ。エルタは振り返らず、ただ前を見据えて歩み続けた。
3年間の開拓村での研鑽を経て、王都への旅立ちを迎えた時点でのエルタの能力は以下の通りです。
参考までにご覧ください。
これまでの地道な努力が、今の彼の礎となっています。
この3年間でスキル合成で作り出したオリジナル魔法やスキルをさらに合成できることまで確認しており、エルタ自身自分の可能性に胸を躍らせているところです。
この着実な積み重ねを武器に、エルタの次なる冒険が王都で幕を開ける。
※転生時獲得していたパッシブスキルの【経験値・熟練度獲得量ブースト(10倍)】は15歳までの限定効果のためここから先はなくなることになります。
名前: エルタ
年齢:15歳
レベル: 15
HP 5248
MP 16000
攻撃力 55
魔力 120
防御力 55
敏捷 80
器用さ 350
賢さ:300
固有能力ユニークスキル
【スキル合成】
自身が習得しているスキル・魔法を掛け合わせ、新たな術式や技を創造する能力。
常時発動パッシブボーナス
【幼年期の経験値・熟練度獲得量ブースト(10倍)】 (※前世の因果による隠しボーナス。15歳の成人まで有効)
【初級の極み】
習得スキル・魔法
【初級武技・身体スキル】:全ての初級技(計42種)
【初級魔法・生活魔法】:世界に存在する全ての初級術式(計38種)
【自己のステータス閲覧権限ステータスウィンドウ】
合成済み術式
【パーフェクト・ウォッシュ】、【土壌分析】、【土壌活性】、【ホログラム】、【高圧水弾】、【強化版感知】(レーダー)、【ディープマッド】、【アイスニードル】、【グラビティ・スワンプ】、【サンダー・アース・スパイク】、【ピアシング・ソニック】、【魔力感知】、【属性付与】、【魔力視】、etc
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