微笑 作者: 木村乃村 掲載日:2026/05/09 夜中に目が覚めた。 起きたくはない。 針の進む音だけが耳につく。 枕元のスマホを開く。 ─通知はない。 枕元に放り投げる。 サイドテーブルの水がとても冷たい。 飲み干してから、暗い廊下へ出る。 フローリングが足に張り付く。 リビングで不意に視線が止まる。 棚の上の写真立て。 写真立てを伏せようとして、指先が止まった。 触れたガラスは、ひどく冷たかった。 写真の中の彼女と、目が合う。 彼女が笑っている。 ─いや。 そんな気がした。