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イセカイジン 〜異世界召喚された怪人415号の行き当たりバッタリ伝説〜  作者: くろイけ


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Episode.07 山を貰います

 オレは近くの町に招待され、宴が開かれた。


 といってもオレは酒が飲めん。

 人間時代はそこそこ飲めたが、怪人にはアルコール厳禁なのだ。

 万が一飲んでしまったが最後、ゲロ吐いて死ぬらしい。

 そんな死に方はイヤだ。


 そして食う方も、エネルギー自給自足のオレには食料摂取の必要がない。

 だが、草はうまいので食う。

 米もまずまずうまいし、稲は是非食ってみたいが、それ以外はちょっと……。


 そんなわけで宴と言われてもあまり気分が乗らない。


『御主人様(マスター)、ススキや猫じゃらしも食べるそうですよ』


「誰がだよ」


『御主人様(マスター)……ではなくバッタが』


「だろうな」


 残念ながら全然そそられねぇ。

 草の件もあるから、食ってみたら違うのかもしれないが。


「勇者様、お気に召しませんでしたか」


 不安そうな表情で聞いてきたのは、この町の代表とかいう初老の男だ。


「オレは勇者じゃねぇ」


 いつの間にか救世主から勇者になってた。

 この見た目で勇者とか絶対ありえねーだろ。

 太鼓持ちにも程がある。


「これは失礼をいたしました。では、どちらの英雄様で?」


 だからもういいってば。

 あ、でも勇者のほかに英雄なんてのもいるのか?


「オレはただの怪人だ」


「カイジン?……様、でございますか」


 ちょっとよくわからない表情を露骨に出しつつもへりくだる代表。


「魔神様じゃ! そのお姿は伝説の魔神様そのものじゃっ!」


 突然飛び出して来た老婆が騒ぎ出した。


「おババ、それは本当か?」


「本当もなにも、それ以外考えられん。あの魔人どもの上に立つお方、魔の神と書いて魔神様じゃ!」


「しかしさきほどカイジン様だと仰っておられたが」


「それはおそらく名前に違いない。魔神様はカイジン様なのじゃ」


 おいおい……(苦笑)。

 どんどんややこしくなっていきやがるw

 

「魔神様、そうなのでございますか」


 だから怪人だってさっき言ったばっかじゃねぇか。

 もう面倒くせぇからそれでいいよ。


「ああ、そうだ。でも怪人って呼べよ」


『御主人様(マスター)……』


 うるせぇ、別にいいだろ。


「畏まりましたカイジン様。それで食事のほうなんですが……」


 あ、そこへ戻るんだ?


「あ、いや、その、なんだ。人間の食い物は口に合わないんだ」


「そうでございましたか。ではカイジン様はどのようなものならお口に合いますか」


「稲はあるか。マイマイにしたものではなく、刈り取ったばかりの稲穂が実っているヤツだ」


「ございますっ!! 先日収穫したばかりのものがっ!!」


 我が意を得たりとばかりに満面の笑みですっくと立ち上がる代表。

 すぐに人を呼んで指示を出す。


『収穫したものがあってよかったですね、御主人様(マスター)』


「ああ、ラッキーだ」


 僅かに焼け残ったものを強奪しなくて済むからな。


 ほどなく運ばれてきたのは、見事なまでにたっぷりと実った稲の束だった。

 最高じゃねぇか。


「どうぞ御賞味ください、我が町自慢のイネでございます」


 ああ、稲はそのまんまなんだ、ふぅん。


 では早速いただこう。

 むんずとひと掴みにして口に持っていき、束ごと歯で噛んで横に思いっきり引く。


 ズァーーッ。


 あああああっ!!


 音だけで身悶えするほどの快感が奔った。

 堪らんっ!


 そして口の中に広がる稲の楽しい食感、豊かな風味。


 おおおおおおおおおおお!!!!


『御主人様(マスター)、落ち着いてください』


 おいお前コノヤロー、だからって絶対に鎮静剤とか今打つんじゃねーぞ!

 絶対だからな、フリじゃねーぞ。

 打ったら殺す!


 なんという瑞々しくも爽やかで濃厚な味か!

 そして甘いっ!

 上品な甘味が、波のように何度も押し寄せてくる。


 これはマイマイとか草なんざ完全に目じゃねぇぜ!

 ダントツに圧倒的なナンバーワン、オンリーワンの味だ!

 う・ま・す・ぎ・る!!!


 怪人と稲の組み合わせは正に、究極のマリアージュだった。


 おれはこのために異世界に来たのだ!!

 そうに違いない。

 それ以外であってたまるか!


「あの……カイジン様……いかがでございましょう?」


「最高だ。こんな美味いものは食ったことがない。素晴らしい稲だ」


「おおお、ありがとうございます。我が町の特産品をそのように仰っていただいて光栄至極にございます」


 本当に嬉しそうに言うと、今度は集まっている連中に向かって話し始めた。


「聞け、皆の者! 魔神様であらせられるカイジン様は我らのイネを最高だとお認めくださった。残念ながら帝国に焼かれてしまったが、また来年に向けて、いや来年は作付け面積を更に広げて頑張ろうではないか!」


「おおおおおおお!!」

「カイジン様、ばんざーい!」

「魔神様お墨付きのイネだ。これは売れるぞ!」

「わぁぁぁぁぁぁ!!」


 なにやら勝手にえらい盛り上がってるな。


 ふと気が付いたらもう稲がなくなっていた。

 夢中になって食ってしまっていたらしい。


 と思ったら絶妙なタイミングで次が運ばれてきた。


「おい、いいのか。お前たちの分の在庫なんだろ」


 なぜか人間のように気を使ってしまった。


「大丈夫でございます。蔵三つ分はあります。しかも残ったものは高値で売りますので。帝国には更に高く買い取ってもらうことにします」


 商魂たくましいのは結構なことだが、出来るのかそんなことが。


『彼らが言うなら可能なのでしょう』


 ふーん、結構人気なんだな稲。

 いや、マイマイが、か。


 しかしそれを全部燃やしてしまうとか帝国さんは何を考えてるんだ?


『それが経済的ダメージを最大化できると考えたのでしょう』


 経済的ダメージね。

 この辺りの様子じゃ、農産物しか売り物にならなさそうだしな。


「カイジン様、いかがでしょう。よろしければ暫く町に御滞在いただけませんか」


 代表は酔ってきたのか、上気した顔で大胆な提案をしてきた。


「なんでだ?」


「お恥ずかしい話なのですが、実を申しますと帝国がすぐに反撃に来ないか心配なのでございます」


 ぶっちゃけすぎだろオイ。

 そりゃまぁ、わかるけどよぉ。


「オレがいれば安全とは限らねぇぞ」


「はい、はい。それはもちろんでございますが、少なくとも町の者たちは安心します」


 ん?

 ああ、そうか。

 町の連中が不安に駆られてパニック起こしたり、逃げ出したりしたら困るのか。


 なんだよ、意外とちゃんと代表してるじゃねーか。


「食事や宿など、必要なものは全て我々で手配させていただきますので」


 ぐいぐい押してくるな。


「あー、悪いが人間の宿ってのはちょっと……」


 人間体になるのも面倒だし。


「ご希望があればもちろんお伺いいたします」


「人間がいなくて静かなところがいい」


 少し考えると代表はハッと思い出したような顔になり、手を打った。


「ではこういたしましょう。町で所有する山がこの先にございます。そこをカイジン様に献上させていただきます」


 は?

 献上って、山を?

 え?


「いかがでございましょう?」


 う、うーむ……。


『悪い提案ではないと思います』


 そうなのか?


『御主人様(マスター)が山で遊んでいる間に、私の方で色々情報収集ができます』


 なんだそれ、人を役立たずの遊び人みたいに言いやがって。


『訂正します。少し羽を伸ばしてゆっくりするのもいいでしょう』


 なんだてめーコロッと態度変えやがって。

 馬鹿にしてんのか。


「どうかされましたか?」


 代表が心配そうにこちらを見ている。

 うん、まさに心配されても仕方ないような状態だったよ。


「大丈夫だ、なんでもない」


「では山を受け取っていただけるのですね!?」


 あ、そうなるの?


「……わかった」


「おおおお、ありがたきお言葉。皆の者聞けぇい! カイジン様はヤクモ山にお住まいになられることとなった。よって本日以降の入山を禁ずる。よいな!」


「おお、カイジン様がヤクモ山に!」

「我らが山に魔神様が!」

「供え物の準備をしろ!」

「生娘じゃ! 生娘をひとり選ぶのじゃ!」


 おいコラ! 最後のはダメだ!

 しかもその言い方は絶対最初のババァだろ。

 やめろババァ!

 生贄とかマジでただ迷惑なだけだっつーの!


 ってか山はもらうと言ったが、そこに住むとは一言も言ってないんだが。


『別にいいでしょう。勘違いするのは向こうの勝手です』


 お前、そういう腹黒い考えはどういうプログラムから出てくるんだ?


『受け取り方は人それぞれ……失礼、虫それぞれです』


 言い換える必要あるか、今の?


「ではカイジン様、早速山の方に御案内いたします」


 宴会はまだまだ続きそうだったが、気を使ってくれたようだ。


「ああ、頼む」


 オレは神輿のようなものの上に座らされ、体格のいい男たちに担がれて山へ向かった。

 神輿の後ろからは稲俵を担いだ男たちが五人ほど続いた。


 道中聞いたところ、この小さな農業国はノーライスという名前だった。


 いや、あるだろ!

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