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教頭先生の戦利品


トレトレ高校――通称トレ高。


この学校は

文武両道を掲げる進学校だった。


アルバイトは禁止。

成績が基準を下回れば

部活動停止。


それがトレ高の誇りだった。


だから――


教頭は理解できなかった。


トレ高教員 晴谷蓮二(はれやれんじ)が作った新しい部活。

クレーンゲーム部。


「ゲームで景品を取る部活?」


冗談だと思った。


だが。


その部は、

高校生クレーンゲーム大会優勝。


新聞に載り

校内でもてはやされる。


教頭は面白くなかった。


(いずれボロが出る)


そう思っていた。



そして。


中間試験。


答案を見た教頭は

思わず笑った。


「……ほら見ろ」


赤点。


赤点。


赤点。


昏華(くれげ)すき。

針千突(はりせんとつ)

豚田武(ぶただたけし)


見事に赤点だった。


教頭は静かに言う。


「追試に落ちた場合」


一拍。


「クレーンゲーム部は廃部も検討する」



放課後。


クレーンゲーム部。


だが今日は

ゲームをしていない。


机の上には

教科書。


追試勉強だった。


「ここはこう」


雨瑠凛(あまるりん)が教えている。


「……わかんない」


針千が唸る。


「普通、授業聞いてれば赤点なんて取らないけど」


銀泉舞子(ぎんせんまいこ)が言う。


「それ言わないで」


豚田が泣きそうになる。


「私教えるの下手なんだよね」


天秤沙希(てんびんさき)が苦笑する。


六人は

夜まで居残った。


部活は朝練。

授業後は勉強。


かなりハードだった。


教頭は廊下から

その様子を見ていた。


(……)


(遊びの部活じゃないのか)



追試。


結果。


三人とも合格。


「やったー!!」


「助かった!!」


「危なかった!!」


六人が

輪になって喜んでいる。


教頭は

何も言わずにその場を去った。



ある日の帰り道。


教頭は

ゲームセンターの前を通った。


ふと足を止める。


ショーケース。


そこには

フィギュア。


娘が好きなアニメのキャラだった。


数日前。


「こんなアニメ見てないで勉強しろ」


娘は言った。


「うざ」


それ以来

会話はない。


教頭は少し考えた。


「……少しだけ」


100円。


動かない。


200円。


300円。


(……難しい)


帰ろうとした時。


「教頭先生!」


振り向くと

針千と豚田。


「こんにちは!」


「あ、あぁ……」


教頭は少し焦る。


「それ人気なんですよ」


針千が言う。


「どこも売り切れみたいで」


教頭は景品を見る。


(今しかないかもしれない)


二人が言う。


「そこ押す感じ!」


「いや回した方が!」


しかし取れない。


針千が言った。


「援軍呼びます」


やがて。


雨瑠凛が来た。

トレ高クレーンゲーム部の頭脳。


「そこです」


「右を少し」


「今です」


凛の指示は

驚くほど正確だった。


気づけば。


教頭の周りには

クレーンゲーム部が

集まっていた。



2000円目。


アームが降りる。


箱が揺れる。

回る。


そして――


ゴトン。


景品が落ちた。


教頭は驚いた。


だが。


周りの生徒達が

もっと驚いていた。


「やった!!」


「先生すごい!!」


「取れた!!」


まるで

自分のことのように

喜んでいる。


教頭は

少しだけ照れた。


「……ありがとう」


少し離れた場所で

晴谷がその様子を見ている。


そして小さく言う。


「……いい授業だ」



家。


娘がアニメを見ていた。


教頭が帰ると

娘はテレビを消した。


部屋へ戻ろうとする。


教頭は言った。


「これ」


フィギュアを差し出す。


娘は固まった。


「え!?これ!」

ゲームセンター限定のやつ!」

全然手に入らないやつ!」

買ってくれたの!?」


教頭は少し照れた。


「……いや」


「クレーンゲームで取った」


娘は目を丸くする。


「お父さんクレーンゲームやるの!?」


久しぶりに

娘が笑った。


教頭も

少し笑った。


「実はな、 父さんの学校に

クレーンゲーム部がある」


大会のこと。


頑張っている部員のこと。


久しぶりに

娘と話した。


娘は言った。


「その部活、ちょっと面白そう」


教頭と娘で


テレビを見る。


そこには

アニメ。


新人教師が

問題児たちと一緒に成長していく物語。


教頭は

少しだけ笑った。


そして思った。


努力の形は


大人が決めるものじゃない。

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