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モブ吉のおみくじ

高校生大会が終わった翌年。


人生モブ吉は、大学生になっていた。


大学のキャンパスを歩いていると、派手なブランド服に身を包んだ男が目に入った。


腕時計。

靴。

バッグ。


どれも明らかに高そうだ。


(……自分とは違う世界の人間だ)


モブ吉は自然と目を逸らした。


すると――


その男が、まっすぐこちらへ歩いてきた。


「こんにちは!」


爽やかな笑顔。


成宮金だった。


「どうも……」


モブ吉は、少し身構える。


「モブ吉くん……だよね?」


「え?」


モブ吉は目を丸くした。


「去年の高校生クレーンゲーム大会に出てたよね?」


「ああ……うん、出てたよ」


モブ吉は思い出す。


三年生の大会。

自分の高校は二回戦で敗退した。


相手は――そのまま優勝した学校だった。


そして大将戦。


銀泉舞子。

大会MVP。


自分が負けた相手が優勝した。


それはモブ吉にとって、少しだけ誇らしい記憶だった。


「俺さ、昏華すき達と地元大会で同じチームだったんだ」


「ああ、なるほど」


モブ吉は納得した。


それから二人は、自然と話すようになった。


モブ吉は経済学部。

成宮も同じだった。


モブ吉は最近、妹が反抗期で困っていることを話した。


「兄妹いるんだ」


成宮は少し羨ましそうに言う。


「俺、兄しかいないからさ」


ちなみにテストの点数は、成宮の方が悪かった。



一月一日。


二人は神社に来ていた。


「おみくじ引こうよ」


と、成宮。


モブ吉は苦笑する。


「俺さ、今まで吉か末吉しか出たことないんだよ。意味ないって」


「まあまあ、記念だよ!」


結果。


成宮。


――大凶。


「はははは!!」


成宮が爆笑する。


モブ吉は呆れた。


「なんで笑ってんの」


そしてモブ吉。


おみくじを開く。


そこには、


大大吉


「……え?」


モブ吉は固まった。


「すげぇ!」


成宮が嬉しそうに言う。


「ほら、いいことあるよ!お祝いしなきゃ!」


二人は街へ向かった。


モブ吉は、少し浮かれていた。


(大大吉……)


すれ違う女性が、みんな自分を見ている気がする。


そんなときだった。


「ねぇねぇ」


「お兄さん達イケメンだね」


綺麗な女性が声をかけてきた。


モブ吉は固まる。


(やっぱり大大吉だ……)


成宮が笑う。


「実は今日お祝いなんです。いい店知ってます?」


女性は食い気味に言った。


「知ってる知ってる!」


そのまま二人は、裏路地のバーに入った。



乾杯。


モブ吉はオレンジジュース。

成宮はコーラ。


「お祝いだしね!」


と女性。


モブ吉は少し照れる。


そこでポケットから、おみくじを出した。


「実はさ、今日これ引いたんだよ」


女性が覗き込む。


「えー!すごい!大大吉じゃん!」


モブ吉は照れながら言う。


「まあ……今日は運いいみたいで」


成宮が笑う。


「さっきからずっと見せびらかしてるよ」


女性が笑う。


「じゃあ今日は奢りだね♡」


モブ吉は慌てる。


「いやそれは……」


でも少し調子に乗っていた。


「でもまあ……今日は大大吉だし」


成宮がニヤッとする。


「言ったね」


その後。


フルーツ盛り合わせ。

スナック菓子。

店の釜で焼いたという冷凍ピザ。


女性達は酒を何杯も飲む。


会は盛り上がった。


モブ吉は大会の話をした。


人生で数少ない誇れる話だった。


気づくと――


女性二人はいなくなっていた。


代わりに店主が立っていた。


「お会計いいですか?」


伝票を見る。


モブ吉は固まった。


「……18万円?」


「え?」


「僕達ジュースしか飲んでないですよ?」


店主は淡々と言う。


「オレンジジュース五千円、コーラ五千円、フルーツ三万円、お菓子五千円。女性達の酒も合わせて、全部で十八万円です」


モブ吉の血の気が引いた。


隣を見る。


成宮は伝票を見て言った。


「18万か。安かったね」


「……は?」


店主が低い声で言う。


「払えますよね?」


モブ吉は震えた。


成宮はポケットからカードを出す。


ブラックカード。


「カードで」


店主が固まった。


「あ……ありがとうございます」



帰り道。


モブ吉は頭を下げた。


「ごめん。俺が調子乗った」


「金はバイトして返す」


成宮は笑う。


「別にいいよ。今日楽しかったし」


モブ吉は少し驚いた。


成宮は少し考えてから言った。


「それよりさ、一緒に事業やらない?」


「……え?」


「ゲームセンター」


モブ吉は目を丸くする。


成宮は笑った。


「俺、思うんだよ。もっと楽しい店作れるって」


モブ吉は少し考えた。


それから言った。


「……やる」



それから二年後。


大学三年。


一店舗のゲームセンターがオープンした。


店内は明るく、雰囲気もいい。

店員の接客は丁寧で、クレーンゲームの難易度も好評だった。


両替の手間を減らすため、店舗限定のICカード決済も導入された。

来店ポイントも貯まる。


少しずつ、常連が増えていった。


店の看板を見上げながら、モブ吉は思う。


二年前の、一月一日。


大大吉の日。


人生で一番、金を使った日。


そして――


人生で一番、

面白い友達ができた日だった。

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