第2話「街に入れない!ダサT、入城拒否される」
丘の上から見える街の光。
レンは涙ぐんでいた。
「やっと……人の住む場所だ……!ダサTシャツで過ごすの、限界だった……!」
だがその瞬間、胸元のTシャツが“ポワンッ”と光った。
《新デザインを検出しました。自動更新します♡》
嫌な予感しかしない。
レンはおそるおそる胸元を見下ろした。
『イケメン代表(自称)』
「やめろォォォォォ!!!」
金糸でドヤ顔の似顔絵入り。
しかも下に小さく『※周囲の理解を得られていません』と書かれている。
「余計な説明書くなああああ!!!」
《スキル:自己主張(強)》が発動!
・周囲の人が強制的にTシャツを見てしまう。
街の門前に着く。
衛兵Aが眉をひそめた。
「おい……お前の服、なんて書いてあるんだ?」
「読まないでください!!」
「“イケメン代表(自称)”……? うわ、字がキラキラしてる……!」
衛兵Bが目をそらした。
「やばい……目に入るだけで気まずい……!」
「視界が羞恥で曇る……!」
《状態異常:共感性羞恥(重)》発動!
通行人の老婆が胸を押さえてうずくまる。
「いたたた……なんなのあのTシャツ……見てるだけで胃がキリキリするのよ……!」
少年が叫ぶ。
「おかーさーん! あの人の服、ココロが痛いー!」
「勇者です!!!」
レンが泣きながら自己申告。
「その服で!?」
「神装備ですッ!!(泣)」
通行許可を出すか迷う衛兵に、仲間のリナが慌てて走ってきた。
「勇者様っ! また服が変わったんですね!?」
リナは真顔で衛兵に言った。
「これは“恥を克服する聖衣”です。勇者の試練なのです」
衛兵「……そんな試練ある?」
リナ「神曰く、“センスを捨てし者に幸運あれ”だそうです」
「神、センスねぇな!!」とレンが全力でツッコむ。
門番は苦悩した末、レンを通した。
「……もう通ってくれ。見てるだけで心が死ぬ……」
街中でも人々がざわめく。
「あれが噂の“自称イケメン”の勇者か……」
「見た瞬間、食欲なくなった……」
「でもなんか目が離せない……」
レンは小声で呟いた。
「俺、存在そのものが街の治安悪化してる……」
夜。
宿屋に入ろうとした時、Tシャツがまた光る。
『寝顔もイケてる☆』
「寝る気なくすわ!!!」
宿の女将「ごめんなさい……お客様、その……客が三人逃げました」
「女神!!普通に生活が出来ない!!!」




