うわべだけの貴公子(予想)
「お断りします」
「・・・・へ?」
私は目の前にいる超高貴なご子息の頼みを断る。
私に断られた少年が呆けた声を上げる。
なぜこうなったかを説明するためには十数分前までさかのぼる必要がある。
☆
私は移動教室に必要なものを胸元に押し付け、上を見上げながら移動教室先に向かうため廊下を歩いていた。
例の変な魔物・・・いなかったなぁ。
結構遠いところまで行ったんだけど・・・無駄足だった。
「もし・・・・」
まぁ、でも、日課用の場所を見つけたから良しとしよう。
さて、日課のトレーニングの内容を決めないとなぁ
「もし、もし?」
少なくとも、アレをサンドバックにすることは確定として・・・あとは何が必要かな・・・
「もし、おい!」
後は筋力をつけるために・・・・??
私はどうやら誰かに呼ばれているらしい。
声の主の方へ視線を寄せるとそこにはなかなかないイケメンがいた。だが、私のタイプではない。
そのイケメンはなんだか少し怒っている気がする。なぜだろう?
「私のこと呼びましたか?」
「そうだよ!!」
どうやらカンカン・・・とまではいかないけど相当怒っているみたいだ。
はて?私が何かしただろうか?
見るからに初対面な気がする。
「ンッンン!!少し取り乱してしまった。こんな私を許していただけるだろうか?」
「別にいいけど」
ミスった。思わず素で喋ってしまった。
決定コイツ嫌い。
うわべだけの敬意はあんまり好きじゃない。マジメちゃんとか私が嫌いな部類だから・・・・
「貴女の名前をお聞かせ願えるだろうか?」
「・・・・テミス・ヴィナス」
「なるほどヴィナス家の長女であらされましたか。これはとんだ失礼を」
さっさと内容喋ってくれないかなぁ。
もともと小市民だったこともあってか、こういう上流貴族特有の長ったらしい社交辞令大っ嫌い。
「それで?何用ですか?」
「私と付き合っていただけないだろうか?」
「お断りします」
「・・・・へ?」
即答した私にこのイケメンは呆けた顔をしてしまった。
ということがあって今に至る。
十数分もなかったな。
「ソレはなぜでしょうか?」
必死にうわべを作ってきた。こういうところは本当に貴族らしい。
「私はあなたのことを知らないから・・・ですかね」
周囲の人たちが私のことを信じられないという目で見てくる。
何がそんなに信じられないのだろうか?
「・・・失礼。申し遅れました。私の名前はエドマンド・エルドラドと申します。以後お見知りおきを」
エドマンド・エルドラドね・・・・・エル・・・・ドラド・・・・エルドラド・・・・エルドラド王国
・・・・エルドラド!?つまりこのうわべだけイケメンは王子ってこと!?
そこら辺にいそうな貴族の息子だと思った。びっくり!!
「王子さまでしたか・・・これは失礼を申しました。私を許していただけないでしょうか?私は元孤児でして、あまり国の事情に聡くなく・・・」
真実3割、嘘7割。
国の事情は大体知っているが、王子の名前とかは覚えていなかった。
「いえいえ、何も謝ることはございません。ひとえに私の努力不足故にあなたが知らなかっただけでしょう。むしろ、私の現状をかえりみる良い機会となりました。感謝します」
なるほどなるほど?つまりこれは貸しにしてやるから俺と付き合えと?
めんどくさい。色恋なんて私の修行の邪魔にしかならないんだから付き合うだけ損よ損
「お話は以上でしょうか?私は移動教室がありますので・・・ここらで失礼いたします」
「待ってください。せめて友達からでも――」
「嫌です」
私はイケメン王子の誘いを断り、移動教室先へ向かうのだった。




