十年後
―― 十年後 ――
十八歳になった二人は『聖剣』の選定を受ける為に聖都にある大聖堂へときていた。
『聖剣』
教会が十年以上の歳月をかけて創る剣の総称。
魔王を倒すことのできる唯一の武器であり、所有者は聖剣が選んだ一人のみである。
聖剣の所有者は『勇者』と言われ、教皇から魔王討伐の任が与えられる。
しかし今まで何人もの『勇者』が魔王討伐の任を与えられてきたが、その全てが魔王を打ち滅ぼすことができず勇者と勇者の持っていた聖剣は行方が分からなくなっていた。
その為新しい聖剣が完成すると十八歳になった少年・少女を世界中から招集し、毎年ここ聖都にある大聖堂で聖剣の所有者を探す選定が行われている。
十八歳となった二人も教会から招集がかかり大聖堂へと赴いていたのだった。
「……やっとこの日が来たな」
カインがボソッと呟く。
「そうだね、カイン」
二人で魔王を倒す、十年経っても二人の目標は変わっていなかった。
確かに出会った頃に比べて二人でいる時間も話をする機会も減ってしまったが、二人は約束のことを忘れておらずそれぞれが目標の為にこの十年間修行を重ねてきた。
そして聖剣の選定を受けられる今日は二人にとって目標を達成する為の第一歩であった。
「それにしても何だか僕たち、すごく見られてない?」
「そうか?」
世界中から少年・少女が集められているため大聖堂には、物凄い数の人が集まっている。
その人々の視線のほとんどが二人に向けられている。
それはここにいる大勢の人々の中でも二人の見た目が異質だったからであろう。
カインはこの十年間で成長して身長も同い年の男子と比べても高く、筋肉も適度についていた。
周りには戦闘経験などない一般家庭出身のものが多かったこともあり歴戦の戦士のような風格を感じられる。
髪などは短く切ってある程度身なりは整えてきたものの目付きの悪さと所々に見える傷跡、全身的に黒い装いがより一層威圧感を強めていた。
そんなカインとは真逆で、クリアは身長はあまり伸びず周りと同じか少し低いくらいだった。
筋肉も少しついてるがカイン程ではなく、パッと見弱々しく見える。
また白く綺麗な肌に青い大きな瞳、後ろで三つ編みに結った長い白髪と一見女性にも見える見た目をしている。
その上、領主の息子ということもあり周りよりも華美な衣服に身を包んでいた。
そんな対照的な二人が並んでいるため周りの人間は思わず二人を見てしまっていた。
「見られててもどうでもいいだろ、俺達は聖剣に選ばれる為に来ただけなんだから」
カインは周りの視線など微塵も気にしておらず、早く聖剣の所に行きたくてうずうずしている。
「それもそうだね、早く聖剣の所に行こう。カインは我慢の限界みたいだし」
「……うるせぇ」
クリアがからかう様に言うと、照れくさそうにカインは速足で選定会場へと向かって行った。
「あっ、待ってよカイン」
クリアも慌ててカインの後をついていくのだった。