生還、そして……
その後二人は森の騒ぎを聞きつけた騎士団に救助され、何とか一命を取り留めた。
騎士団に助けられた後二人はクリアの父親にこっぴどく怒られたが、二人はあまり反省していなかった。
そして、森から帰ってきて変化したことが二つある。
一つはクリアが魔法を使える様になった事である。
本来ならば魔法は魔法使いの血統か、教会で特殊な加護を受けた者しか使うことができないものである。
当然クリアは、魔法使いの血統ではなく教会での加護も受けていない。
その為、周りの人間はなぜクリアが魔法を扱うことができるのかが不思議でならなかった。
しかし、クリア本人とカインは薄々使える理由に気が付いていた。
それはおそらくクリアが転生者であるからであり、魔法は転生した際に与えられたものであると二人は考えていた。
そして魔法が使えるようになったクリアには、魔法使いの家庭教師がつき毎日のように魔法の勉強をさせられていた。
もう一つの変化は二人の仲である。
以前までは毎日屋敷を抜け出して遊びに行ったり、二人で剣の修行をするなど何をするにも一緒にいた二人だが森から帰ってきてからはその光景はあまり見られなくなった。
決して二人の仲は悪くない。
だがクリアに魔法の家庭教師が付いた事で必然的に二人が会える時間が減ってしまい、その結果それぞれが別々に行動することが多くなった。
二人で通っていた街の道場も辞めてしまったため、二人が会う時間は以前の一割程度にまで減っていた。
それは単純に会う機会が減っただけでなく、カインがクリアだけが魔法を使えることに対して苛立ちを感じる様になってしまった事も大きかった。
その為、クリアの予定が空いている時でも二人で何かをすることはほとんどなかった。
カインは森にいって魔族達を倒して修行をし、クリアは魔法の勉強と剣術の自主練とそれぞれが別々に行動するようになってしまったのだった。