約束
―― 二人が友達になって二ヶ月程たった、ある日の夜 ――
二人は屋敷の庭園にある木の下で話をしていた。
「カインはさ、屋敷に来るまではどんな生活してたの?」
仲良くなっていた二人だが、お互いのことについてはまだあまり知らなかった。
「屋敷に来る前? そうだなぁ父さんと母さんと一緒に畑を耕たり、村の子ども達で集まって遊んだりして……」
屋敷に来てから二ヶ月程しか経ってないのにカインは昔のことのように語る。
「いいなぁ、僕はなかなか家の外に出してもらえないから羨ましいよ」
思い出を嬉しそうに語っていたカインだったが徐々に声の調子が変わっていく。
「……でも全部あの日に無くなった。父さんも母さんも村の人たちも!全員あいつらに、いやあいつに殺された!」
さっきまでとは違い怒りのこもった声で話すカインにクリアは驚きながらも疑問をぶつける。
「あいつって?」
「魔王だよ、あいつに俺の村は滅ぼされた…だから俺は魔王を殺す、いつかこの手で!」
「……そうか、魔王か……」
クリアは魔王へ強い殺意を向けるカインに戸惑いながらも、何かを決心する。
「よし、なら僕も一緒に魔王を倒すよ!一人より二人の方が倒せる確率も上がるでしょ」
カインは、クリアの言葉に一瞬驚いたがすぐに微笑む。
「分かった。いつか二人で一緒に魔王を倒すぞ、約束だ!」
「うん、約束!」
輝く星空の下、二人は拳どうしを軽く合わせるのだった。
◇
二人で魔王を倒すことを誓ったカインとクリアは、カインの父親に頼み込んで街にある剣術の道場に一緒に通わせてもらうことになった。
道場で剣術を学んでいた二人だったが、二人の剣の才能は他の道場の生徒と比べて圧倒的だった。
「はぁ、今日もクリアとしか勝負してない。これじゃわざわざ道場に通ってる意味ないじゃん!」
特にカインの才能は凄まじく、一週間で道場の生徒の中で一番の腕になっていた。
「仕方ないよ僕たち以外の子は体力づくりや趣味で通ってるんだし。それに僕たちが強くなれたのは先生に教えてもらったからなんだし、先生に教えてもらうだけでも通う意味はあるよ」
クリアもカイン程ではないが他の生徒では相手にならず、いつも二人で打ち合いをしていた。
「確かに先生のおかげではあるけどよ、たまにはお前以外とも戦ってみたいんだよ」
いつも二人で戦っているので、カインはあまり成長を感じられずにいた。
「うーんそうだなぁ、確かに同じ相手とばっか戦ってもあまり経験にならないか……」
二人は道場以外で戦闘経験が積める所はないか考える。
「あっ、そういえば父さんが街外れの森には魔族がよく出るから行くなって言ってたな……」
「それじゃん! その森で魔族と戦えばいい修行になる」
魔族が出る森の話を聞き、カインは表情が明るくなる。
「確かに修行にはなるだろうけど危険すぎない?」
カインとは対照的にクリアは森にいくことに対しては乗り気ではなかったが、結局断りきれず街外れの森に二人で行くことになった。