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火炎(1)
燃えている。燃えている――
赤い赫い紅い緋い火が、この世に生を享けたばかりの命のように、メラメラと燃えているのである。
活気良く、そして、楽しげに――
わたしは、めくるめく火の踊りを、微動だにしないまま、茫然と、ただただ見つめている。
それは蠱惑的で、魅力的で、魔術的だ。
その熱は、わたしの心まで溶かそうとしているのである。わたしの心も、きっとそれを望んでいる。
ああ、燃えている。燃えている――
火は美しい。
その代わり、とても強欲だ。
火は、目の前のものを喰らい尽くすまで、燃え続ける。
やはり火は生命そのものだ。同じ生命を持った人間だって、同じくらい強欲なのだから。
わたしだって、そうだ。
わたしだって、あらゆるものを呑み込んで、燃え続けたい――
ああ、ああ、燃えている。燃えている――
どんどんどんどん喰らっていく。
喰らうたび、喰らうたび、火はどんどん大きくなり、燃え上がる。
次に火が喰らうのは――
――わたしの生みの親。
血塗れとなり、魂の抜けた、わたしの両親である。
ああ、ああ、ああ――