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火炎(2)
燃えている。燃えている――
新鮮な炎に包まれて、わたしの母は、わたしの父は、どう思うのだろうか。朽ち果てた命がまた取り戻される――そんな幻想を見るのだろうか――
いや、違う。幻想を見ているのは、ほかでもない。このわたしだ。
わたしは炎に夢を見ている。炎によって、すべてが無となり、それによって、すべてが無でなくなることを夢見ているのである。
ああ、燃えている。燃えている――
火はすべてを作り変える。
火は異界からの使者であり、現実の歪みを糺してくれる。
だとすれば――
――だとすれば、わたしだって燃えてしまいたい。
ああ、ああ、燃えている。燃えている――
わたしの両親は、完全に火に喰らわれた。
喰らわれた瞬間、両親はどう思っただろうか――
両親の断末魔の叫びが、わたしには聞こえた気がする。
両親はこう叫んだのだ――
――なぜお前は生きているのか、と。
ああ、ああ、ああ――