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ボクに出来ること ~笑ってご主人様~

作者: 白夜いくと

 ボクのご主人様はとても優しい。カラスに意地悪されていたボクを拾ってくれた。ご主人様はボクに『ポチ』って名前をくれた。あれからボクは少し大きくなった。


「ポチ」


 この世界でとっても大好きな音。この音を聴くと、とてもほかほかになる。あたたかになる。


「行ってきます」


 ご主人様は昨日と同じ格好で言う。ビシッとした服は三日でよれよれに。


(もっと撫でて、構って!)


 ボクが鼻をご主人様の足にくっ付けると、優しく撫で返してくれる。ご主人様の「ふふ」って鼻音が漏れる。その音も大好き。


(必ず帰ってきてね。待ってる)


 そんな毎日を送っていた。


 ボクのご主人様はとても優しい。優しい人は、時にとてつもなく明日を怖がるような顔をして帰ってくることもある。今のご主人様がそうだ。膝をついてボクの瞳を見つめて泣いている。


「ポチ」


 この世界でとっても大好きな音なはずなのに、震えてる。感じる。このままではいけないと。でも、ボクは言葉を話せない。でも知ってる。

 ご主人様の心は、ボクが御守りできること。


 チロチロとご主人様の涙を舐める。しょっぱくて生ぬるい。勢いあまってか一緒に転がってしまう。頭を強く打ったのか、痛がるご主人様。ボクが「ワン!」と吠えると、


「あ、あははは!」


 と笑いだした。


(やった、笑ってくれた!)


 嬉しくなって、さらに覆いかぶさった。よれよれの真っ黒な服にボクの毛が絡みつく。ご主人様の顔は『もうどうにでもなれ』って感じだった。そうだ。ご主人様が明日を怖がっていたって知るもんか。


 ボクは、ボクの大事なご主人様を御守りするんだ!


 笑って。ずっと、ずっと。いつだって、笑わせてあげる。それがボクの出来ること。『ポチ』の出来ること。

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