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怪談

降霊術

 昔、廃アパートで降霊術をしたことがあるんだ。


 その土地は以前火災で3棟全焼して、数名が亡くなったらしい。数年後に新しくアパートが建てられたんだけど、ご多分に漏れずその焼跡には幽霊が出るという噂。


 住人も居着かず、大家さんも亡くなってしまい取り壊される事もなく放置されていたんだ。


 怖いもの知らずだった僕はそこで降霊術をやってみようと思ったんだ。特に理由は無かった。強いて言えば、とにかく日常に飽きていたんだよね。中学生の頃なんてそんなものだと思う。


 深夜に忍び込んで胡散臭い古本屋で手に入れた、これまた胡散臭いオカルト本に従って準備をする僕。


 あ、悪いけど手順とかは省かせて貰うよ。そもそも成功しちゃったからこんな話をしてるんだし。


 降霊術の儀式を済ませると直ぐに異変は起こった。

 部屋の中を歩き回る複数の足音。ズズッ、ズズッとすり足で歩くその音が僕の周りをまわる。

 微かに乱れた呼吸音も聞こえてくる。


 僕は動けない。


 次第に足音と呼吸音が僕に近付いてくる。


 見つかる前に、捕まる前に逃げなきゃと足音の隙間を縫って玄関に辿り着く。足音は僕に気が付かなかったのか同じ場所をぐるぐるとまわっているみたいだった。

 ゆっくりと部屋のドアを開け外に出る。


 ドアをゆっくりと閉め、深い息を吐くと少しだけ日常が戻ってきたような気がしたんだ。


 とりあえずアパートから離れようと共用廊下を歩き出そうとしたら後ろから声をかけられたんだ。

「ここ空き部屋だけど何してたの?」って。


 びっくりしたよ。その部屋って二階の角部屋で、階段もない行き止まりに人が居るなんて思わなかったし。


 声も出せない驚きとともに振り返ると、同い年ぐらいの女の子が立ってたんだ。少し距離のある街灯と月明かりに照らされた顔は凄く不審そうな顔をしてた。


「ここ、うちのアパートなんだけど」そう言って僕を見つめる。

 謝りながら聞くと、どうやら亡くなった大家さんの親族らしかった。


 そのまま親族の家まで連れて行かれ怒られたんだ。おまけに家族と学校にも連絡されたんだよね。


 で、なんとか警察沙汰は回避できたんだけど、担任には頭叩かれたし、家に帰ったら親からもすっごく怒られた。こんな時に限って、いつも庇ってくれる姉は友達の家に泊まりに行ってたんだ。


 そのまま朝方まで怒られて、短い睡眠時間で登校したんだ。


 朝のホームルームが終わると同時に、担任のところに行って昨日の事を謝ったんだよ。

 そしたら、担任「そんな事知らない」って。詳しく説明しても不審そうな顔をするばかり。

 二人で職員室に行って、他の先生に聞いてもそんなことは知らないって言うんだよね。

 そのうち、教頭先生にまで話が伝わったんだけど、「そもそもあそこのアパートって大家の親族が大分遠い所に住んでるから放置されてるはず」って言い出したんだ。


 あまりに話が噛み合わないから担任と教頭が昨日連れて行かれた家を見に行ったんだよね。そしたら廃屋だったらしい。


 訳がわからないまま授業を終えた僕はすぐに帰宅して、兄に昨日の事を聞いたら、「お前夜遅くに部屋の中でなんかやっててうるさいから注意しに行ったけど、それだけだぞ」なんて言われたんだよね。


 詳しく聞こうとして何時頃かと尋ねたら、降霊術をやった時間とだいたい同じ。深夜番組を見ようとしてたから時間も確実らしい。


 狐に摘まれたような気持ちで部屋に戻ると、そこに昨日の女の子が居たんだ。


 その女の子が笑いながら「降霊術してくれてありがとう。返す儀式をしないのも」って言いながら消えていったんだよね。


 今、その地区全体で幽霊目撃談多いんだよね


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― 新着の感想 ―
[良い点] 文章が読みやすく頭に入ってきやすい。 構成に破綻がない。 [気になる点] 特になし。 強いて言えば「返しなよw」 [一言] 面白く読ませていただきました。
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