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46 俺は全力で逃げてやる

「メイッ!」


 緑の鬼を真っ二つにした俺は急いでメイの元へと駆け寄る。


「メイっ! メイっ!! しっかりしろ!!」


 倒れ伏すのは凄惨たる姿のメイ。


 手も足もあらぬ方向に折れ曲がり、絹の様に綺麗だった白肌も赤黒く腫れ上がり所々で血が溢れ出している。


 開いたままの目は虚ろに陰り光をともしていない。


 クソ……


 俺がもっと早く駆け出していれば……


 初動の遅れ、その結果がメイをここまで痛ましい姿に変えてしまった。


「ごめんな……メイ……」


『何ぼさっとしてんのよ! まだ死んでないんだからやる事やって反省しなさい!!』


 まるで子供をしかりつけるように声を荒げたエクレール。

 言うが早いか俺の体を使い、全力でメイの体を回復していく。


『ったく、今は一人で感傷に浸ってる暇なんてないのよ』


 呆れ半分怒り半分、珍しく真っ当なエクレールの説教に反論の余地も無い。


 そして瞬く間に体は完治したメイだったが、気絶から目を覚ます様子は……っ!


「いきなりかよっ!」


 俺はメイを抱きかかえると、真上から迫る剛腕をバックステップで回避する。


 既に右手の再生を終えた青鬼の強襲。

 大木の様に太い腕から繰り出される拳は、その風圧だけで俺の体をいとも簡単に揺らす程だ。


「気持ちの悪い顔しやがって」


 空振りしたにも関わらず、歪な笑みを浮かべる青鬼。

 そして俺を値踏みす様な気持ちの悪い視線を向けてくる。


『あっちの緑も動き出したわよ』


 くそ……アイシャの容態も気になるってのに……。

 脳天から真っ二つにしたのに簡単に再生してんじゃねぇよ!


 一旦引くか?

 メイだけでも安全な所に避難できれば……。

 抱えたままでの戦闘は流石に制限が多すぎる。


 問題はどうやってこの二体から逃げきるか。

 俺が必死に思考を加速させたその時、


「見ない顔だな。お前、名は何と言う?」


 ……え?


 喋った?


 突如として流暢に喋り出した青鬼。


『何呆けてんのよ! あれはもう魔人なんだから自我ぐらい確立してるわよ』


 それならそうと教えてくれよ……。

 魔物と魔人の違いは簡単で、本能の赴くままに行動するのが魔物、人語を操り知恵を持つのが魔人なのだが、当然と上位種たる魔人は自我を含め魔物より遥かに強い。


 けどまぁ、話が出来るならやりようはある。

 暴れるだけの単細胞より幾分マシだ。


「レイドだ。アンタは?」


「俺が斬鬼(ザンキ)、こっちの緑が暴鬼(ボウキ)だ」


 メイが言っていた通り青鬼が斬鬼、そして緑は暴鬼と言うようだ。


「自己紹介どうも。で、わざわざ俺の名前を聞いて何がしたいんだ?」


「何、この街の強者も粗方殺し退屈していたところだ。お前との死合いは存外に楽しめそうだと思ってな」


 さっきの値踏みするような視線、あれはやはり俺の実力を測る為か。


「戦闘狂かよ……」


「如何にも。魔人となった俺の力を試したい。それだけだ」


 それだけの為にアイシャとメイの故郷を……。

 怒り以上の激情が胸の内から湧いてくる。


 だがしかし、ここで感情に流されるわけにはいかない。


「いいぜ、殺し合いでも何でも受けてやる。だが今は無理だ、日を改めろ」


 今はアイシャとメイが最優先、危険な橋は以ての外だ。

 それに今だ広がり続ける火の手を鎮火させなければ、いよいよ街としての機能も失う可能性もある。


 相手が戦いを望んでいる以上、次回に持ち越せればそれで良い。


「俺がその条件を飲む理由は無いが?」


「なら勝手にしろ、俺は全力で逃げてやる」


「クッハハハハハッ! 俺を倒すと意気込みはせんのだな」


 盛大に笑った斬鬼は少しだけ考える素振りを見せ始める。


 もう一歩。


 後は絶対に戦うと認識させれば引く理由にはなるはずだ。


「本当はすぐにでもぶっ飛ばしたいさ。でも今はそれより優先すべきことがある。だから次会った時は覚悟しとけよ」


「……よかろう。今回はここで引いてやる」


 そう言うと、鬼たちはあっさりと撤退していく。

 やや拍子抜けしてしまうがどうやら上手く言ったようだ。


『良い判断よ。斬鬼ってやつはともかく、暴鬼って方はずっとメイを狙ってたし。あのままやっても素直に一対一(タイマン)って事にはならなかったでしょうね』


 マジかよ……全然気づかなかった。


 まあ、とりあえずは一安心……している暇は無いな。

 ミーアとアイシャを探さなければ。

 それにこの火事もどうにかしないと、負傷者も沢山いるはずだ。


『エクレール』


『まかせんしゃいっ!』


 俺の意図を察してくれたエクレールが声高に返事を返す。


「バブルミストッ!」


 俺の口から放たれた言葉は俺の知らない魔法だった。


 しかし、流石は大賢者。

 大量の泡と霧が俺の手から放出されると、たちまち上空で雲の形を成し、空から大量の雨が降り注ぎ始める。


「やっぱお前はすごいよ……」


 瞬く間に鎮火していく炎。

 その光景を見て俺は思わず感嘆の息を漏らす。


『あったりまえじゃない! 大賢者様かかればこんなのお茶の子さいさいよっ! もっと褒めて良いのよ? 何なら特別に頭を撫でさせてあげるわ!』


 頭を差し出すエクレールは可愛いが、ミーア達の無事を確かるまではそんな余裕は無い。


『ほらほら、遠慮しなくていいわよっ』


 そんな事を言いながらエクレールが調子に乗りだした所で、


「レイドさん!」


「レイド!」


 聞きなれた二つの声が耳を打つ。


「ミーア! アイシャ! 良かった、二人とも無事だったんだな?」


 駆け寄ってきたのはミーアとアイシャ。

 二人とも多少服は汚れているが怪我らしい怪我は無いようで、俺はそっと胸を撫でおろす。


「不覚にも拙者が少々気を失っていたようでな……ミーアには迷惑を掛けてしまった」


 俯くアイシャと「もう、さっき散々お礼は聞きましたよ」と諌めるミーア。


 二人の話をまとめると、鬼の一撃で気を失ったアイシャを守るためミーアは小鬼の集団と一人で戦っていたらしい。


 それが途端に鬼たちが引いて行く事に驚きながらも、目を覚ましたアイシャと戻ってくれば俺が消火作業を行っており更に驚いた、と言うのが二人の話だ。


「鬼は一旦引かせたし、当分は大丈夫だ。今はそれよりも怪我人の手当てを優先しよう」


「到着早々にすまん。恩に着る」


 こうして、俺達は街を駆けずり救助と手当てを繰り返す。



 そして気づけば黄昏時。


 ひとしきりの救助を終えた俺達は、アイシャによって城へと案内されるのであった。



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お読みいただきありがとうございます!

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