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3 覚醒

『驚いている様ね。ちなみにこれは一切混じりけ無しの真実であって冗談じゃないから! 君のスキルは覚醒の兆しを見せてるし、しっかりと呪われてるんでそこんとこヨロシク!』


 いや、よろしくと言われても……。

 情報過多過ぎてもう何がなんやら……。


『仕方ないなぁ。悩める君に大賢者様が一から説明してあげよう!』


 それはマジで助かる。

 覚醒やら呪いやら言われても今の俺にはこれっぽっちも分からないからな。


『まずはスキルの覚醒なんだけど、簡単に言えば新たな上位互換スキルが目覚めるとでも思ってくれればいいわ』


 新たなスキル?

 スキルが変わるなんて話聞いた事無いぞ?


『覚醒まで至る人間は限られているからねー。当時の私の調べでは数百万人に一人。だからこそ覚醒に関する情報はあまり世間には出回っていないのだよー』


 数百万人に一人?

 そんな奇跡みたいな確率を俺が……。


『ちなみに普通は覚醒する前にスキル進化が来るはずなんだけどね、君の場合はなぜか進化を飛ばして覚醒に至ったみたいだけど』


 進化もあるのか。

 それで俺のスキルはいつ覚醒するんだ!? 

 覚醒したスキルは【採取】より強くなるんだよな!?

 俺は勇者よりも強く……


『シャラップ! 五月蠅いガキは嫌いだよ』


 悪い、ちょっと嬉しくて取り乱した。


『君の境遇であればその気持ちも分からなくもないけど……、話を続けると【採取】が覚醒した場合新たなスキルは【運命の導き】となる』


 運命の導き……。

 名前だけは格好良さげだがそれは強いスキルなのか?


『強いか弱いかなんて使う人間次第だよ。本質的には【採取】の完全上位互換だと思ってくれればいい』


【採取】の上位互換……?


 だとすれば薬草を傷めずに採れるとか鉱石を傷つけずに採掘できるとかその程度のものなのか?……


『アハハハハッ! 君は【採取】を何だと思ってるんだい!? 君が今言ったのは小手先の技術の話であってスキルとは何の関係もないところだ、本質からは完全にズレているよ。どうやら君は【採取】が薬草や鉱石を得る為だけのスキルだと勘違いしている様だね』


 そんなに笑うことないだろ……

 まぁ、確かに【採取】のスキルは薬草や鉱石を他人より早く見つけて上手く採れるものだと思ってたけど……。


 なんだよ? 【採取】の本質って。


『求めるものを手に入れる力、それが【採取】であり【運命の導き】の本質さ。君の言う「早く見つけて」の部分は正解に近いとも言えるね』


 求めるものを手に入れる力……。

 話が壮大過ぎていまいちピンとこないな。


『そうだな、下位互換でしかない【採取】の影響だと、あとは釣りが得意だったり買い物上手だったりするけど身に覚えは?』


 確かに……川があれば釣りは俺の役目だったし、アイテムの買い出しも俺がしていた。

 まぁ、その理由の大半はリリア以外誰もしようとすらしないからなし崩し的に俺がするしかなかった、とも言えるんだけど。


『それでも君がその役目を嫌じゃなかったのはスキルの恩恵によるところもあるのさ。魚が来なければ飽きるし、店に行っても目的の物が無ければ無駄足になる、小さなことだが求めるものを引き付けていたんだよ。ま、君の場合は元々面倒見の良い性格が噛み合っていた節はあるけどね』


 知らない所でも俺はスキルの世話になってたんだな。


『補足しておくと【採取】が進化した場合は【探知】になる。これは広範囲を認識する力も備わるが、物や人を引き付け探す力がより強くなる効果もある。が、【運命の導き】に比べれば月とスッポンだがね』


 なるほど、何となくだが分かった気がする。


『理解してくれたようで何よりだ。【運命の導き】に関しては上位互換らしく、人、物、金、願えば全て叶う程都合が良いわけじゃないが、普通に暮らす分には何不自由なく暮らせるようになる。君が望むなら英雄になる事すら不可能じゃない』


 俺が……英雄に?……


『昔一人だけいたんだよね、【運命の導き】に従って英雄と呼ばれるまでに上り詰めたやつが』


 英雄の称号さえあればリリアを……!

 リリアを迎えに行ける!!


『聞いちゃいねーな……。盛り上がってるとこ悪いけど、あくまでスキルは使い方次第だからね? それにまだ覚醒すらして無い君が考えるのは時期尚早だから』


 そ、そうだな。

 肝心の覚醒時期なんだけど俺は近いうちに覚醒出来るのか?


『覚醒するタイミングは個人によってバラバラだよ、君なら早ければ二十年から三十年ってところじゃないかな?』


 二十年から三十年!?

 そんなに遅いのか?


 今の話だと覚醒の兆しは見えてるんだろ?

 それでもそんなにかかるのか?


『かかるね。あくまでも兆し、最悪は覚醒しないまま人生を終える事も十分ありえる。数百万人の壁を甘く見ちゃいけない』



 何だよそれ……期待させといてそんなオチかよ。

 結局何も変わらないじゃないか。



 こんなことなら知らない方がまだ良かった……。



『ま、それは()()()()()()()、の話だがね! 君の話している絶世の美女を誰だと思ってるんだい?』


 それはどう言う意味……


『どうもこうもない、私なら今すぐ君のスキルを覚醒させることが出来る! この救国の英雄、大賢者エクレール・アドルノートならね!』


 ほ、本当に!? そんな事ができるのか!?


『大賢者に不可能は無いのだよ!』


 頼む! 俺のスキルを覚醒してくれ!

 俺にはやらなくちゃ……迎えに行かなきゃならない人がいるんだ!


『皆まで言うな。私としても可愛いリリアの為、元よりそのつもりだよ』


 ……ならどうして死ぬまで覚醒しないかも、なんて脅したんだよ?


『フッ、愚問だな。一旦下げてから上げた方が盛り上がるからに決まっているだろ!!』


 この野郎……!


『あれぇぇぇー? そんな態度取ってもいいのかな? 覚醒したいんでしょ? リリアを迎えに行きたいんでしょ? それが人にものを頼む時の態度かな? んー、私の知ってる頼み方とは違うなぁー』


 ……ゴメンナサイ。クチが過ぎました。

 ぜひ覚醒をお願いイタシマス。エクレールサマ。


『おーけーおーけー。最初から素直にそう言っておけばいいんだよ。それじゃ、ちゃちゃっと始めようか』


 で、俺はどうすれば良いんだ?


『そのままで良いよ。強いて言うなら集中したいから話し掛けないで』


 分かった。頼む。


『我が名はエクレール・アドルノート 祖たる言葉を携えて 因果を穿ち 神の理を歪めし者 万象の彼方に我望む道在り 玉響の…………たまゆらの………………ぇーと……』


 ん? どうした?


『うるさいっ! 今集中してんの!』


 すいません……。


『えーっと…………あ゛ぁもぅ! なんだっけ? 忘れちゃったじゃない!』 


 えぇー……、

 俺のせいみたいに言ってるけど元々忘れてたよね?


『だまらっしゃい! こうなりゃヤケよ、力技で覚醒してやるわ!! ちちんぷいぷい~ちちんぷいのぷ~い! さっさと開かんかいオラァァァァ!!!!!』


 おい……

 それ本気か?

 本気でやってるのか?

 大賢者だと信じてしまった俺が馬鹿なのか?


『来た! キタキタキタ、来たぁぁぁぁぁぁぁ!!!』


 エクレールが絶叫を上げた瞬間、胸の奥から不思議なチカラが沸き上がるのを感じる。

 そしてそれは体中を駆け巡り、俺の全身へと溶け込んでいく。


 これが……覚醒。


『ふぅー、何とか成功ね。流石私! 数百年ぶりでも腕は衰えて無いわね』


 いや、成功してくれたみたいだからいいけどさ、途中絶対関係なさそうなおまじない唱えてたよね?


『ノリよノリ! 何事も勢いがありゃどうにかなるのよ!』


 そうですか……。


 その考えはアンタの嫌ってた脳筋達の考えだと思うんだが……気にしたら負けか。


 なんにせよ成功してくれたみたいで良かった。


 礼を言わせてくれ。




『良いって事よ! どうせ()()()()()()()()()()、残り短い人生楽しみなさい!』



【作者からのお願い】

お読みいただきありがとうございます!

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