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29 side勇者 ~リリアの憂鬱と崩壊計画 その6~

※リリア視点のお話になります

「此度の魔人討伐、その栄誉を称え勇者ギジルとギルドマスタージャフアに褒賞金の授与を行う」


 貫禄を纏い低く重たい声を響かせるのは、この地方一帯の領主であるヤヌバ・ハンスールその人。


 勇者パーティーとギルドの代表団が領主邸に到着間も無く開始された褒賞式。

 厳かな雰囲気の中執り行われる式典はつつがなく進行していきます。


 つつがなく、です……。


 まずいですね……。


 全ての真相をぶちまけてグチャグチャにしてやりたかったのですが……

 とても口を挿める空気ではありません。


 形式的に進む堅苦しさに飲まれ、わたしは少し委縮していました。


 自分の考えの甘さに下唇を噛みます。


 ここから先、一つでもタイミングを間違えればわたしは空気を読めない異物扱いとなるでしょう。


 例え主張が真実だとしても、この場にいるのはギルドからの報告を信じている領主とその取り巻き、言葉尻を遮る様な真似をすれば内容以前にわたしの心象が悪くなる。


 そうなれば詰みですね。


 きっとギジルもジャフアも全力で弁明に走るでしょう、心象の悪い女と仮にも勇者とギルマス、どちらを信じるかは予想に難くないと思います。


「良くやってくれた。これからも勇者として民衆の光となり平和へ導いて欲しい」


「はい。お任せください」


 激励を送る領主に対しい、恭しく頭を下げるギジル。


 なにが「お任せください」ですかっ!


 何もしてないクセに手柄だけ横取りなんて詐欺みたいなもんですよ?

 しかも自分は何も関与していないと分かっていながらの確信犯。


 期待はしていませんでしたが、やはりプライド以前に人としての常識も欠落しているようですね。

 どうにかギャフンと鳴かせてやりたいですが……、


「さて、堅苦しいのまここまでだ。皆も肩の力を抜いてくれ。ここからは談笑に花を咲かせるとしよう」


 ……っ!


 ナイスです!

 ギルドの報告を鵜呑みにする無能領主と思っていましたがギリギリ許してあげましょう!


 領主の宣言により厳かな空気は一変し、途端に緩んだ空気が流れ始めます。



 これならいける。



 ベストなタイミングは逃しましたが、まだチャンスはありそうです。


「君達もここからはくつろいでくれ。私としては魔人討伐の武勇伝を聞きたいのだが……娘も一緒に良いかな?」


 そう言ってわたし達と同世代であろう不機嫌そうな娘を連れて話しかけてきた領主。


 いいですね、いいですね!

 非常に良い流れが来てますよ!


 こうなれば話は簡単です。

 あとは()()()()()()()()()()を演じればいいのです。


 領主の娘は不機嫌さを隠しもせずに目を尖らせていますが今は放置でいいでしょう。

 下手に気を使って話が拗れても面倒ですし。


「素敵なご息女ですね。ギジル、わたしも魔人討伐について詳しく聞かせて欲しいわ。折角の一大決戦を見る事が出来なくて残念に思っていたところなの」


 領主への社交辞令も交えつつ、言外に『わたしは魔人討伐には関与してません』の予防線を張ります。


「あ、あぁ……。そうだな……あの時は必死で戦っていたし…………」


 言い淀む生ゴミ(ギジル)は目を泳がせて額に汗を浮かべます。


 あの時っていつなんでしょうね?

 ギルド職員から聞いた話ではレイド達が魔人と戦っていた時間帯、それはわたし達がダンジョンに潜っていた頃になります。


 いつのまに瞬間移動(テレポート)なんて覚えて、魔人を討伐したのでしょう?

 ぜひ詳しく聞かせて欲しい所です。


「そ、そ、そうだ! ジャフア、客観的に見てどうだった? 君の口から説明してくれないか?」


「なっ!? ……。あ、いや……それはそれは素晴らしい戦いぶりで惚れ惚れする勇ましさでしたよ」


 話の水を向けられあからさまに狼狽えるギルマス。


 こいつら……。


 せめてもう少し話を合わせとくとかその程度も出来ないんですかね?

 中身すっからかんじゃないですか。


 領主の胡乱気な目を見てください。

 これはわたしが何も言わずともいづれバレるのではないでしょうか?


 まあ、折角のチャンスを棒に振る様な事はしませんけどね。

 良いところでわたしに発言権も回って来ましたし。


「それにしても残念ですね……()()()()()()のレイドとミーアさんがこの場に居ないなんて……」


 わたしは酷く落ち込み同情を誘う様に肩を落とします。


「「っな!!??」」


 生ゴミとギルマスが顔を驚愕の色に染めて動揺を露わにしますが、


「ほう、それはどういう意味かな? 詳しく聞かせてくれないか?」


 二人が口を開くよりも僅かに早く、先に食いついて来たのは領主。




 ふふふっ、やっと釣れましたね。


 わたしは思わず歪みそうになる口角を必死で抑えます。



 これで舞台は整いました。



 あとは洗いざらいぶちまけるだけです!



【作者からのお願い】

お読みいただきありがとうございます!

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