8、ドーナツを作ります
橘 信司は思いついた。
「そうだ、新メニューを作ろう!」
「ドーナツがいいな・・・・・・」
信司はドーナツが好きだった。
材料もパンケーキとほとんど同じだし、油があればすぐ出来るからだ。
味も好きだ。
信司は早速ドーナツの生地を作ると、猫の顔の形に整えた。
「よし、にゃんにゃんが出来たぞ」
そう言って、信司は出来た生地をそっと熱くなった油の中に落とした。
じゅうといい音がして、甘い良い匂いが漂う。
「いいぞ、これならお客さんにだせる」
信司はそう言ってから、メニューにドーナツを加えた。
店の看板をCloseからOpenに裏返す。
しばらくすると、アリサがやって来た。
「今日は新メニューがありますよ、アリサさん」
信司が珍しく笑顔で話しかけてきたのでアリサはドギマギした。
「それじゃ、紅茶と新メニューお願いします」
「はい、紅茶と猫様ドーナツですね」
信司がそう言うと、アリサは首をかしげた。
「ドーナツ?」
「はい、甘いあげたパン状のものです」
アリサはドーナツができあがるのを、いつもの台所のそばの席について待った。
首には入店時間が書かれた紙がぶら下がっている。
「お待たせしました」
「可愛い!!」
ドーナツにはにゃーの似顔絵が書いてあった。
いつも通りのヘタウマな絵で。
アリサはドーナツを一口食べて驚いた。
「美味しい!!!」
「ありがとうございます」
信司は礼を言った。
猫たちは相変わらずアリサにまとわりついている。
その後も、お客が続いた。
ドーナツも評判が良かった。
信司はホッとした。
信司は猫たちに、いつもの信司スペシャル猫ご飯を与えた。
猫たちは元気だった。
お客が10人を超えたところで信司は店を閉め、猫たちをブラッシングした。
女将さんが信司に声をかけた。
「お客さん、増やしても良いんじゃないかい?」
「いえ、猫様の負担が増えてはいけませんから」
「商売っ気にかけるねえ」
信司は笑ってごまかした。
「やっぱり無駄に美形だわ」
女将さんは自分の飲み屋に戻った。
信司は猫たちが店を出たのを見送って、トレーニングを始めた。
「猫様達のためにも体を鍛えて強くならなくては」
毎日のトレーニングのおかげで信司には少し筋肉がついてきていた。