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3、トレーニングが必要です

橘信司は悩んでいた。


自分が強くならないと、猫様達を守れない。

この異世界では強い戦士が山ほどいる。

しかし、その戦士達がこの店に来て、ルールを守らなければどうする?


猫様達のために、つまみ出さなくてはいけない。

つまり、それだけの力をつけなくてはこの店<猫様が主役>をやる資格が無いと、信司は考えたのだ。


信司はとりあえず、腹筋やダンベルで力をつけることにした。

そして、猫様達の外出を見守った後、ランニングをすることにした。


そんな信司の姿を一人見守る女性がいた。

その名前はアリサと言った。

中級魔術師だった。


アリサはトレーニング中の信司に一目惚れしたのだった。

東洋の切れ長な目、筋の通った鼻、信司は整った顔をしていた。

しかし、問題が一つあった。

アリサは猫が嫌いだったのだ。


それでも、アリサは<猫様が主役>に、来店した。

「いらっしゃいませ」

「こんにちは」

信司の笑顔に、アリサはクラクラとした。

信司が近づいて入店時間を書いた紙をアリサの首に提げる。


アリサは台所の近くの席に座ると、紅茶とパンケーキのセットを頼んだ。

アリサが台所を覗くと、信司の大きな手が器用にパンケーキを焼いている。

そして、パンケーキの上にはやっぱりヘタウマな絵が添えられる。


「おまたせしました、にゃんにゃんの似顔絵付きです」

そう言って、信司は紅茶とパンケーキをアリサの机に置いた。

そのとき、にゃんにゃんがパンケーキに手を伸ばした。

「駄目!!」

アリサは素早くパンケーキの皿を取り上げると、にゃんにゃんを睨み付けた。


「素晴らしい! ありがとうございます」

信司はアリサを褒めた。アリサは訳が分からなかった。

「猫様の体を心配して叱って下さってありがとうございます」

「いいえ」

アリサは、パンケーキを机の上に置いて食べ始めた。


猫の視線を感じるたびに目をそらせる。

それなのに、猫たちはアリサに近づいて、膝に乗ったり背中に乗ったり、やりたい放題だった。

「さすが、猫様の気持ちが分かってらっしゃる」


信司の笑顔は嬉しかったが、嫌いな猫にまとわりつかれてアリサはウンザリしていた。

「はあ・・・・・・」

猫のおもちゃが手に当たった。毛玉で出来たボールの中に鈴が入っていた。

アリサがそれをなげると、猫たちはチリンチリンと鳴るボールを追いかけていった。


「猫は、猫嫌いの人が好きって本当なのね・・・・・・」

アリサがそう呟くと、一瞬信司の顔が固まった。

信じられないものを見つけた様な顔で、アリサのことを見ている。

「猫様の魅力が分からない人間なんているのですか?」


アリサはごまかすように笑って言った。

「いいえ、友人の話です」

信司の顔に微笑みが戻った。

「それは、ご友人は人生を損してらっしゃいますね」


「そうですか?」

「はい、猫様がいるだけで幸せな生活です。そんな素敵な世界が分からないなんて絶対悲しいです!」

信司の猫好きを目の当たりにして、アリサは少し心が冷めるのを感じた。


今日はアリサの他には9人のお客様がきた。

信司は猫達の疲れを案じて、また早めにお店を閉めた。


「ねえ、ずいぶん早くに店を閉めちまうけど経営は大丈夫かい?」

飲み屋の女将にそう言われたが、信司は力強く頷いた。

「私が贅沢をしなければ十分猫様達は暮らせます」

「そうかい?」

信司の言葉を女将は半信半疑で聞いていた。

「それに家賃もきちんと納められるくらいには稼いでおります」


三日間の営業記録を女将に見せると、女将は安心して笑った。

「あんまり猫に夢中になると、女が寄ってこないよ?」

「猫様達がいれば、私は幸せなんです」

信司は猫たちをお風呂に入れると、丁寧にドライヤーをかけた。


猫たちは嫌がらなかった。

「なんて賢い猫様達だろう」

信司は今日も幸せだった。


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[一言] 猫様史上主義の主人公w
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