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第三話 共闘

「おぉ、お前ら、もう来たのか!」

「ホント早いねー!実は私達より先輩だったりするの?」


 ジィさんが第二層を一瞬で突破してくれたおかげで、前の冒険者さん達に追いつけた!第三層の待機エリアで、前の冒険者さん達にまた声を掛けられちゃった。


「それはないと思いますよ~!私まだ、〈銅の称号者(ブロンズカラー)〉ですから!」

「あぁ、じゃあ俺らと一緒か! …俺はゴスってんだ。よろしくな!」


 そう名乗ってくれたのは、筋骨隆々の白い肌に短く刈り込んだ金髪というマッチョさん。私と同じで、胸と肩を守る鎧を身に着けてるね!武器は、背中に背負った槍斧(ハルバード)かな?でっかくて振り回せそうにないや!戦うことになったら、あれの一撃だけは貰いたくないね。


「私はギルド〈死人の慟哭〉のギルドメンバー、〈銅の称号者(ブロンズカラー)〉のセシルよ!」


 続けて名乗ったのが、ゴスさんの横にいる、黒髪を後ろで一つに束ねた、すらりと背の高い綺麗な女の人。一応腰に細剣(レイピア)をつってるけど、左手についてる腕輪を見るに、この人は魔術師かな?疲れた様子も汚れた様子もないから、ジィさんと同じで全部魔術でどうにかしてるのかも。やっぱり、私よりも全然凄い人だ!


「お二人とも、凄そうです!あ、私はカンナ。〈銅の称号者(ブロンズカラー)〉です!」

「俺は〈鉄の称号者(アイアンカラー)〉、クリムだ」

「私は同じく、ジィと申します」

「カンナ嬢ちゃんに、クリムの兄さんに、ジィさんだな!覚えたぜ!」


 ところで今、セシルさん、


「〈死人の慟哭〉、って言いました?」

「そうよ!私達はギルド〈死人の慟哭〉のギルドメンバー!」

「ってことは、そこの人はっ…!」


 そう言いながら私は、ゴスさんとセシルさんの後ろにいる、少し小柄な男性に目が釘付けになった。左手には円盾(バックラー)、右腿や右腰、腰の後ろとかには、片手剣とか短剣とかいろいろ持ってる。それだけなら、ちょっと不機嫌そうな、40手前の男性冒険者、ってだけなんだけど。


「おう、嬢ちゃん、知ってるんか!」

「勿論ですよ!」



 ギルド〈死人の慟哭〉。〈白金の称号(プラチナカラー)〉の冒険者ギルドにして、今現在最も〈黒の称号(ブラックカラー)〉冒険者ギルドに近いと言われる、世間に名を馳せるトップギルドの一つ。

 だけどその所属人数は少なくて、大体百人ぐらいしかいないって言われてる。トップギルドって言われる他のギルドが大体五百人は超えてるんだから、その小規模さがよく分かるね!

 だけどその分、ギルドメンバーは全員、熟練中の熟練!勿論最初は初心者だっているけど、時に「〈死人の慟哭〉のギルドメンバーの実力は称号一つ分上だと思え」って言われるぐらいに、全員が全員手練れなことで有名なの。ギルドメンバーが百人ぐらいしかいないのに、そのうち三十人ぐらいは〈白金の称号者(プラチナカラー)〉って言われるぐらいだよ?

 そして、そんな絵に描いたような少人数精鋭を可能にしてるのが、〈死人の慟哭〉のギルドマスター――



「〈不在のレプリカント(アイアムノット・ミー)〉、レプリカント・ドッペルゲンガーさんですよねっ!」



 レプリカント・ドッペルゲンガー。〈不在のレプリカント(アイアムノット・ミー)〉の二つ名を持つ、〈白金の称号者(プラチナカラー)〉の〈死人の慟哭〉ギルドマスター。

 レプリカントさん自身は、実はそこまで強くないんだって聞いたことがある。実力は精々〈金の称号者(ゴールドカラー)〉ぐらい。いや、私から見たら充分凄いけどね!でも、世界に名を馳せるには、ちょっと物足りない強さなんだって。

 だけど、それを補って余りあるのが、レプリカントさんが目覚めた、一代限りの魔法(きせき)


 《私は私たり得るか?サモンズ・ドッペルゲンガー》。

 それは、自分の複製(ドッペルゲンガー)を生み出して、行使する魔法(マジック)

 ()()()()()()()()()()()()

 それでありながら、()()()()()()()()()()

 それもそれを、同時に()()()()()()()()


 これを使ってレプリカントさんは、全ての冒険者を鍛え、同時に全ての冒険者の経験を得たんだって!ドッペルゲンガーだから、死んだって問題ないし、他の冒険者の数倍早く、色んな経験を積める。だから、〈黒の称号者(ブラックカラー)〉でもない限りは、レプリカントさんは誰にだって教えられることがある。そんな人が、ギルドメンバー全員の傍にいるんだよ?そりゃ、強くもなるよね!



 なんて、私に名前を叫ばれた当のレプリカントさんは、


「俺はレプリカントじゃない。この俺はただの〈金の称号者(ゴールドカラー)〉、レプリカだ」


 なんて、ちょっと顔をしかめて言った。うーん、嫌そうなわけじゃないんだよね。めんどくさいのかな?


「レプリカ?それに、〈白金の称号者(プラチナカラー)〉じゃないんですか?」


 なんて私が言っても、しかめっ面を変えてくれない。

 私、なんか悪いことしちゃったっけ…?

 って思ってたら、ゴスさんが苦笑しながら、


「うちらのギルマスは大体いつもこんな感じさ。不機嫌なわけじゃない、無愛想なだけなんだ」


 って言ってくれた。そっか、私が悪いわけじゃないのか!ちょっと安心したよ~。


「あー、それでな。ギルマスは、魔法(マジック)使ったドッペルゲンガー単体だと、〈金の称号者(ゴールドカラー)〉のレプリカっちゅう冒険者、って判定にされてんだ。ドッペルゲンガー全員でかかりゃあ〈白金の称号者(プラチナカラー)〉の中でもトップクラスに強ぇが、単体じゃあ〈白金の称号者(プラチナカラー)〉ほどは強くないらしくてな」

「それでも私達を軽くあしらっちゃうんだから、強いことはホントなんだけどね!」


 なるほど、そういうことか!じゃあ噂は正しかったんだね。というか、冒険者ギルド本部って、そんな処置もやってるんだ!本部の人間なのに、知らなかったよ!


「…なぁ」

「どうしました、ギルマス?」


 と、これまで碌に話さなかったレプリカントさん――じゃなかった、レプリカさんなんだっけ――が、急に目を細めながら一言呟いた。その視線が注がれてるのは私――じゃなくて、クリムさん。

 そして、その次の瞬間。


 キィンッッ!!!――……


 なんだか硬い、それでいて軽く尖った何かを叩き付けたような、奇妙な「音」が、待機エリアに響き渡る。

 ……と思ったんだけど、鼓膜はそんな「音」は聞いてないって、私の脳に訴えてる。

 ってことは、聞こえたのは、「音じゃない音」――魔力の振動。


 でも……なんで?



 *



「…ふん」


(全く。何故、目の前の人間だけに、そうも囚われる)


 俺は一人、ゴスにもセシルにも聞こえないほど小さく呟いた後で、心の中で漏らす。


 カンナ、といった冒険者は、さしたる凄みもないただの〈銅の称号者(ブロンズカラー)〉だ。ゴスやセシルと同様、才能は有りそうだが、その程度でしかない。()()が引き抜こうか考えるのはまだしも、戦場に於いては、さしたる興味も、さしたる警戒も向ける必要はないだろう。


 だが、その奥の男は。


 服装は全身真っ黒の軽装に、薄手の黒のロングコート。ロングコートの裾は邪魔だが、動きにくい服装とまでは言えない。

 得物は左腰に佩いた銀の片手半剣だろう。恐らく、魔術の心得もある。


 だが、それだけではない。


 この男とそれに付き添う爺は、確かに〈鉄の称号者(アイアンカラー)〉だと言った。だが、後ろの爺はともかく、この男は、明らかにそれ以上の力を持っている。

 気配、雰囲気、足の運び、姿勢、保有魔力量。

 何をとっても、〈鉄の称号者(アイアンカラー)〉のそれではない。

 むしろ、()()のような〈白金の称号者(プラチナカラー)〉とでも言われる方が、まだしっくりくる。


 それぐらいに、違和感のある人間だった。


(全く、彼我の戦力比較ぐらい、正確に出来るようになって欲しいもんだ)


 そんな愚痴も、ゴスやセシルに聞こえるわけではない。

 心の中で一つため息を吐いてから、


「…なぁ」

「どうしました、ギルマス?」


 一言、ゴスに声をかける。

 特に意味がある動作かと言われると、実はそこまでない。ただ、この場の全員が、俺に注目していたほうが都合がいい。


 そして、その男――クリム、と名乗ったな――を見据えて、俺はまず、少しだけのんびりと《穿光(ピアースライト)》の術式を組み上げる。のんびりと言ってもいつもより遅いと言うだけで、かかった時間は半秒に満たない。


 だが、予想通り、それだけで十分だった。


 俺が組み上げた術式のすぐ真横に、膨大な魔力の塊が生まれる。外にその一切を放出せず、ただただ一点に固まった魔力の槌。

 それが、俺の術式に叩き付けられる。


 ――寸前、俺は自分の術式を、硬く締まった魔力の塊に変えた。


 …――ッッ!!!――……


 もう俺には「音」としては聞こえない、だが確かに存在する魔力の振動を、俺の魔力回路が感じる。


(やっぱりか)


 〈鉄の称号者(アイアンカラー)〉ではまず使えない《魔力槌(コードインパクト)》を、当たり前のように術式の破壊に使ってきた。それだけで、この男が普通でないことは確定したと言っていい。

 しかし、程度については少し、俺も読み誤っていた。《魔力槌(コードインパクト)》を作り上げるのにかかる時間が、想像よりも相当短かった。術式を認識した後危険と判断して消した、というよりは、術式を見たら取り敢えず潰す、といったような速度。


(条件反射で術式を潰しに来る、か……。どんな人間だ?)


 一瞬〈竜眼(ドラゴンアイズ)〉のことが脳裏をよぎったが、〈竜の隻眼シングル・ドラゴンアイ〉以外にそれを持ってる人間は、現代にはいないはずだ。となれば、魔力の流れをかなり正確に把握して術式が生まれた場所を割り出し、そこに《魔力槌(コードインパクト)》をぶつけた? いや、それにしては余りにも正確すぎる一撃だった。それこそ見えているんじゃないかとでもいえるほど。もしかしたら、俺の知らない未知の手段かもしれん。


 それに、術式を反射的に潰すなど、どんな魔術師でもやらん。し、やれない。それが味方の術式の可能性だってあるし、そもそもとして術式は圧し固めた魔力で構成された立体図式だ。勿論目には見えない。だとしたら、この男は、一体どんな状況下で、魔術の訓練をして来たのか…。


 その男(クリム)を見れば、ほんの僅かにだが、その顔が驚きに固まっているのが分かる。どうやら、こっちの意図は読めたようだな。


 だったらその上で、少々意地の悪い提案をするとするか。実力はともかく、立場的に断れんからな。

 この男やカンナの実力を測るのに、ちょうどいいだろう。


「カンナ、と言ったな。良かったら、共闘しよう」



 *



(なっ…!?)


 なるほど、な……。


 急にレプリカント殿…じゃなくて、レプリカなんだっけか。彼が《穿光(ピアースライト)》の魔力を(おこ)した時、俺は反射的に《魔力槌(コードインパクト)》を叩き付けた。何かをやられるより、そうしたほうが数倍良いからな。勿論、反撃魔術(カウンタースキル)罠魔術(トラップスキル)には何重にも警戒していた。


 だが、まさか、()()()()()()()()()()()()とは、思ってもなかった。


 魔力の振動が待機エリア中に響き渡り、カンナやゴス殿、セシル殿が怪訝な顔をする。俺は何をやられたかと魔術回路の感覚全開で辺りを探ったが、何も起きていない。

 つまり、これは。ただ俺に、伝えたかっただけなのだ。


「貴様如きの動きなぞ、見抜いているぞ」、と。


(流石は〈白金の称号者(プラチナカラー)〉……いや、経験だけで言えば、〈黒の称号者(ブラックカラー)〉より上か)


 単純な戦闘力ならかの〈黒の称号者(ブラックカラー)〉、ハルツに大きく劣るだろう。だがその存在感と言うか、数多の戦場を潜り抜けた者独特の雰囲気は、ハルツのそれより明らかに大きかった。


(俺なんか、まだまだひよっこか)


 それを自覚出来るのは、悔しいというより、安堵の方が大きい。


 死ぬ前に、自分が未熟だと学べた。

 死ぬより先に、変えることが出来る。直すことが出来る。成長することが出来る。

 そして、死ぬかもしれなかった状況で、死なずに済む。


 それは、とてもありがたいことだ。


 そして、それだけではない。彼の方から、願ったり叶ったりの名提案をしてくれた。


「カンナ、と言ったな。良かったら、共闘しよう」


 *


 え、っと……?


 急にレプリカさんがクリムさんを睨んだと思ったら、魔力の振動が「聞こえ」て、それから急に、「共闘しよう」? 一体、どれがどうつながってるんだろ? 思わず目で訊ねてみるけど、ゴスさんもセシルさんも首をひねってばっかりで、よく分かってないみたいだなぁ。


 流石に、〈金の称号者(ゴールドカラー)〉の、いや本当は〈白金の称号者(プラチナカラー)〉の人の提案を、〈銅の称号者(ブロンズカラー)〉の私が無下に断るのは出来ないや。というかそもそも、私としてはこれ、大チャンスなんだけどね!だって、〈白金の称号者(プラチナカラー)〉、それもあの〈不在のレプリカント(アイアムノット・ミー)〉と共闘出来るんだよ!? なーんも指導してもらえなくたって、得られるものは大量だよ!

 だけど、今の私はソロじゃなくて、パーティの一人だ。だから、パーティメンバー(クリムさんとジィさん)の意見だって、ちゃんと聞かないとね!


「クリムさん、ジィさん、どうす――」

「俺は受けたい」

「同感です」

「即答!?」


 ……うーん、この会話(やりとり)、二日前にやった記憶あるよ?

 まぁでも、みんな意見は一致したね!


「うん、受けさせてください!」



 *


 ん?

 結局受けることになるとはいえ……「受けたい」ってのは、なんだ?


 俺はこの男に、「俺はお前の実力を見抜いたぞ」って伝えたつもりだったんだが?

 実力を隠してるなら普通、断りたがるだろう?


 下手に実力を知られるのは、不都合なはずだ。何故なら、まさにそうだからわざと隠してるんだろうからな。

 それなのに、「受けたい」っていうのは、どういうことだ…?


 ……いや、まさか。

 わざと俺と共闘して、自分の実力を騙しきれるだけの自信があると……?

 今感じたのは錯覚だと、そう俺に信じ込ませられるだけの演技力を以て、逆に自分の力を疑わせないようにする。そういう作戦なのか…?


 あぁ。久しぶりに、ここまで頭を回した気がするな。


 この共闘。

 思ったより、面白くなりそうだ。


「あぁ。よろしく頼む」



 *



「なんだか、大変なことになりそうですな」


 誰にも聞こえない声で私は、一人でぽつりと呟いた。


勘違い共闘の始まり始まり……w



今回の剣技・魔術・その他です。


私は私たり得るか?サモンズ・ドッペルゲンガー

本話参照



お読み下さり、ありがとうございます!

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これからもどうぞ、よろしくお願いします!

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