第一話 ダンジョンアタック
間章という扱いではありますが、新章連載、スタートです!
颱風竜の襲撃から、今日で一週間が経った。
まだまだ私達の王国は復旧中。だけど、簡易宿泊所とかが各地に出来て、もう路上で生活しなきゃいけない人とかはいなくなった。段々とお店も開店し始めて、経済も回り始めてるみたい。
本当に良かった。
まぁ実は、復旧作業に関する依頼がいっぱい出てたおかげで、〈銀の称号者〉に上がるための昇格試験を受けられるようになったから、私はちょっと得しちゃったんだけどね~。
憲兵さんが優秀で、ダンジョン以外でモンスターが出るような場所もないから、ミラストリア王国じゃ依頼があんまりない。だから、魔石を売って生活することは出来ても、昇格するのはちょっと難しいんだよね。モンスターを倒し続ければ昇格出来なくはないけど、こういう依頼の方が実は評価が高かったりする。冒険者ギルド本部所属の私が言うんだから、嘘じゃないよ?
だからまぁ、私にはちょっとありがたかった。被害を受けて良かったー!なんて思ってるわけじゃ全然ないけどね。でもまぁ、得しちゃったのは本当だから。
せめてちゃんと、〈銀の称号者〉になろうっと!
さて、今日は久しぶりに、冒険者ギルド本部の方でお仕事だ!溜めてた冒険休暇フル活用でここ一週間ずっと復旧作業依頼を受けてたから、なんだかちょっと変な気分。
…まぁ、何処の机も書類の山だからね…。復旧作業依頼の受諾だの掲示だの完了報告だの……あー、想像するだけで大変。担当が受付とダンジョン管理で良かった、私。
事務担当の皆さん、頑張って!
「あぁ、カンナ。丁度良かった」
「どうしました、ミラ先輩?」
今日の担当を確認しようと思ってボードにいったら、ミラ先輩に声を掛けられた。何かあったっけ?
「いや、特に急な話があるわけじゃないのよ。ただ、カンナ、昨日いなかったじゃない? だから、昨日された話をしておこうと思ってね」
「あぁ、ありがとうございます!」
「ううん、気にしないで。えっと、昨日ギルマスから話があったんだけど、どうやら颱風竜の影響で、今年は魔石入荷数が、例年より少ないんだって」
「えっ!大変じゃないですか!」
それ、結構大変だ!ミラストリア王国は、輸出額の八割以上を魔石が占める、魔石輸出国家なんだから!魔石が少なくなっちゃったら、輸出系の仕事が大打撃を受けちゃう!
「それで昨日から、冒険者ギルドがわざわざ魔石入手依頼を出してるのよ。それに、一時的にパーティでのダンジョンへの入場規制が若干緩んでるの。詳細はそこの紙に書いてあるわ」
なるほど確かに、パーティ制限がどこもちょっと下がってるね。いつもなら入れないダンジョンにも入れるから、魔石を入手できる場所が増えると。ふむふむ……
「だけど、その情報のせいで、逆に入場が混乱してるんだって。だから、担当迷宮に行く前に、ちゃんと目を通して覚えておいた方が良いわよ、っていう話」
「なるほど!分かりました!ありがとうございます!」
「どういたしまして。それじゃお互い、今日もお仕事頑張ろうね」
「はい!」
さて、じゃあ私も、頑張ろうっと!今日の担当はえーっと、〈銅蠍迷宮〉かぁ。パーティ制限無し、ソロ制限〈鉄の称号者〉以上の、初級者向けダンジョンだね。
……あっ。ってことは。
「はい、〈銅蠍迷宮〉に入場する冒険者の皆さんは、ここに沿うようにして整列して下さーい!ギルドカードを入場時に確認するので、スムーズな提示をお願いします!現在の入場待ち時間、一時間半です!」
案の定、下位冒険者で大混雑でした。
…これ逆に、超過供給になったりしないよね?そしたら最悪、私たちは赤字だよ?お給料減っちゃうよ?
……大丈夫だよね、冒険者ギルド本部?ギルマスさん?
*
「……魔石入手依頼、下げるか」
*
「はぁ、ただいまー!」
「カンナおかえり!夕飯食べるかい?」
「ううん、先にお風呂入ってくる!」
久しぶりのお仕事だったから、ちょっと疲れちゃった。丸一日ダンジョンに潜ったりするのと疲れ方が違うから、勘が戻るまでに時間掛かっちゃったよ~。
鎧とか手甲とかの防具は脱いで、机の横に置いておく。そのまま銭湯セット一式に着替えを詰め込んで、すぐに家を飛び出した。
勿論、ギルドカードも右腰の短剣も持ってるよ!これだけは冒険者である以上、絶対に忘れられないからね。
ここの銭湯と〈燕の羽休め〉亭は、宿泊客が無料で使えるようにっていう契約をしてる。なんでも、お父さんの親友の後輩が、この銭湯の経営者なんだって。だから、私達のお客さんは銭湯を無料で使っていい代わりに、私達はこの銭湯の宣伝をしたり、人手が欲しい時に助けに行ったりする。私も何度か、お手伝いに行ったな。
なんてことを思いだしてたら、もうすぐに銭湯の目の前だ。だけど私は、そこである人影を見つけて、思わず声を上げた。
「クリムさん?」
「カンナ?」
まさかの、クリムさんとジィさんだった。
いや、今も私たちのところに泊まってくれてるんだけどね!いっつも私が起きるより早く出て行って、私が寝た後に帰ってきてるらしいから、あの日の夜以降、全然会えてなかった。
どうやら、クリムさんもジィさんも風呂上りみたいだ。ジィさんは外見にそんなに差はないけど、クリムさんの髪が濡れてツンツンしてる。
「お久しぶりです!こんなところで、どうしたんですか?」
「久しぶりだな、カンナ。いや、依頼の合間に風呂に入りに来ただけだ。無料なんだったら、使わない手はないからな」
なるほど、依頼の合間だったのか! 合間ってことは、これからまた別の依頼を受けるのか。凄いなぁ、クリムさん。
というか、依頼って、
「復旧作業依頼?」
「あぁ。丁度この国にいるんだ。少しぐらい役に立ちたいしな。それに数をこなしたおかげで、〈鉄の称号者〉に上がることも出来た」
そもそも依頼が少ないミラストリアでこれだけ依頼を受けてるってことは……って思ったけど、やっぱり!
それに、
「もう〈鉄の称号者〉なんだ!凄い!いや、クリムさんなら当たり前か!」
クリムさん、実力だけで言えば本当は〈黒の称号者〉ぐらいあるんだろうしね!ミーナ姉さんから聞いた話、ほんとに凄かった!
……ん?
クリムさん、今もう〈鉄の称号者〉なの?
待って、だったら……
「もしかして、ジィさんも〈鉄の称号者〉だったりしますか?」
「えぇ、私も〈鉄の称号者〉に上がることが出来ました」
やっぱり!だとしたら……うん、今だったら、あそこにリベンジ出来る!
「クリムさん、ジィさん。もし良かったら、私と一緒にダンジョンに行ってくれませんか?ちょっと、リベンジしたい奴らがいて!」
「俺らでいいなら、全然良いぞ」
「微力を尽くします、カンナ様」
「即答!?」
まさかの二つ返事で承諾してくれました。
その後銭湯の前で、日程を調整した。クリムさん達はもう明日の依頼を取っちゃってるって言ってたから、明後日の朝、宿の食堂でってことになった。
よし、明後日こそ、復讐を果たすぞ!
*
ということで、銭湯の前でクリムさんとばったり会った日から二日。伝えてあった通りに食堂で合流した私達は、そのまま馬車に乗り込んだ。
今日こそ、雪辱を晴らす日だ!
「おーっ!」
「おー…っていや、カンナ。せめて、今日どこに行くかぐらいは教えてくれ」
「あっ、ごめん」
「いや、謝らなくても良いが」
少々ハイになりすぎてたみたいです。いっかい落ち着こう。深呼吸、深呼吸。
「えっと、じゃあ、今回私達が挑戦するダンジョンについて話すね」
まず場所は、王国南西部。ここから馬車で三時間弱かかっちゃうから、日帰りでやるなら挑戦できるのは一回までだね。
名前は、〈骨狼迷宮〉。ボスはスケルトンジェネラルなのになんで骨狼かっていうと、まぁ、後で話すね。
入場制限は、パーティ制限が〈鉄の称号者〉以上二人、〈銀の称号者〉以上一人。ソロ制限が〈金の称号者〉以上。
だけど今、パーティ制限が少し緩くなってて、〈銀の称号者〉以上一人じゃなくて、〈銅の称号者〉以上一人で良いの。クリムさん達が〈鉄の称号者〉になってくれたおかげで、ぎりぎりパーティで入れるようになったんだよ!
ダンジョンは、階層タイプ。階層タイプっていうのは、階層ごとにフィールドで敵と対戦して、勝つと次の階層に行けるってやつだよ!〈回廊迷宮〉みたいに最初から最後まで誰にも会えないのは珍しいけど、イメージは、あれが何階か続く感じかな?
階層は、全部で五階層あるよ。一階層目が、十体ぐらいの骸骨。二階層目が、同じぐらいのスケルトンに、骸骨騎士が二体出るかな。三階層目が、スケルトンナイト五体と、骸骨狼三体。四階層目はスケルトンウルフが五体に増えて、スケルトンナイトを背中に乗せてるの。
ここまでなら、単騎は無理でも、三人ぐらいパーティを組めばどうにかなるよ!実際、前に来た時も、四階層まではちゃんと突破出来たからね。
「だけど……」
「問題はボスか。さっき言ってた、骨狼?」
「…うん」
〈骨狼迷宮〉のボスは、骸骨将軍。上位モンスターだけど、デカくて馬鹿力なだけだから、完璧なコンディションでなら、多分頑張れば私一人でもどうにか倒せるよ!
だけど問題は、それを乗せてる方。
〈上位骸骨戦狼〉。こいつが、ホントに厄介!
「上位骸骨……なんだって?」
「あれ、クリムさん、知らないの?」
「あぁ。そこまで魔獣には詳しく無くてな」
クリムさんほど強くて、なのに魔獣に詳しくない?じゃあ、一体何と戦って強くなったんだろう?あ、敵が何だろうと関係なく叩き潰してたとか?いや、クリムさんだって弱い頃はあったはずだよね…。
まぁ、分からないものは仕方がないか。
「じゃあ、簡単に説明するね」
えっとまず、狼が魔獣化したのが〈魔狼〉。普通の狼と比べて何かが少し優れてるのと、同格の魔獣としては魔術耐性が高いよ。クリムさんが入国した日に倒した銀色の魔狼は、これの最上位種だね!
魔狼が進化すると、今度は〈戦狼〉になるよ!力も強くなるし、種族や個体によっては簡単な魔法を使えるようになったりもする。
そして、戦狼の上位種が、名前の通り〈上位戦狼〉。そしてさらにこれが骸骨化したのが、今回戦う〈上位骸骨戦狼〉だよ!
スケルトン化した魔獣は、分類としては魔族になるね。スケルトン化すると、まず軽くなった分、早くなるよ!さらに、骨なせいですり抜けちゃうから、遠距離攻撃が当たりにくいかな。面で殴るような攻撃とかなら別だけどね!
後は、炎、水、光、闇、風、みたいな、質量が小さい攻撃魔術が一気に通りにくくなるよ!毒に至っては、勿論だけど全くの効果無しだからね。雷魔術も、痺れないせいで殆ど効果が無いし。
逆に、物理攻撃は勿論、土、氷、みたいな質量が大きい攻撃魔術は、ガンガンダメージが入るよ!それに、例えば《瀧槍》みたいな削るような魔術とか、《穿光》みたいな貫く魔術とかならダメージも入るね。
つまり、簡単に言えば、動きが早くなって、魔術に強くなって、物理に弱くなった感じかな?
「なるほどな。だがそれだったら、むしろカンナに向いてるんじゃないか?魔術より剣技が得意な物理攻撃系で、盾役なわけでもないし」
「んー……そうなはずだったんだけどね」
やっぱりそいつ、上位骸骨戦狼としても、結構強いんだって!
噂話を聞いただけだから、本当かは分からないけど、どうやら、元々〈上位魔狼〉の〈蒼色の魔狼〉だったのが、〈雷の戦狼〉の上位種の〈雷鳴の戦狼〉に進化して、それがスケルトン化したんじゃないかって言われてるんだよ!
蒼色の魔狼は元々すっごい速い上位魔狼なのに、それが雷鳴の戦狼になった上にスケルトン化しちゃったせいで、めちゃくちゃ速くて雷を使える上位骸骨戦狼が出来あがっちゃってるの!
「なるほど。機動力が高く、雷魔術を使える、骸骨で出来た狼、か」
「そういうこと!ちゃんと下調べはしたんだけど、まさかあれほどだとは思わなくて。それで前回はやられちゃったの」
「やられた?死んだのか?」
「ううん、脱出したよ!階層タイプの宮殿には、フィールドの中に転移用魔石があるの。それを使って全員脱出してきたんだ~。まぁ、殆ど全員麻痺状態だったし、部位欠損が無かったってだけで、重傷者はでちゃったけど」
ちゃんと治癒魔術とポーションを使って回復はしたから、後遺症が残ってる人はいないけどね。でも、あの戦いがトラウマで、冒険者を辞めちゃった人だっていた。
だから、あのメンバーでリベンジすることは、もうできない。
「そうか、それぐらいか」
「まぁ、それでも銀色の魔狼より速度は遅いし、クリムさんからしたら余裕だとは思うけどね。とにかく、私達が今回戦うのは、こんな感じの敵だよ!」
そして、私にとっては、リベンジをするべき相手!クリムさんもジィさんもいるし、絶対に勝ちたい!
勝ちたい?いや、違うかな。
勝つ!今度こそ!
「そうか。…分かった。俺らはどこまで手伝えばいい?」
どこまで手伝えば、か~…。確かに、クリムさん達がちょっとでも本気出したら、上位骸骨戦狼なんて瞬殺だよね。ちょっと考えてなかった。
うーん……
「じゃあ、私の補助とか、牽制攻撃とかをお願いします!身を守るときは勿論別だけど、直接攻撃は私がちゃんと入れる!」
「あぁ、分かった。それでいくぜ。直接攻撃は護身以外無し。魔術は補助魔術と、牽制で雷とかでも打つか」
そう言ってクリムさんは、左の口角だけ引き上げて笑って見せる。ジィさんは、いつもの微笑よりちょっとだけ深く笑っていた。
「だから、安心して戦いな。カンナ」
あったかい何かが、胸の内にすっと染み込んだ。
すっごい安心出来る声だった。
なるほど。
背中を預けられる人って、こういう人のことを言うんだね!
「うん!」
よし!
みんなの復讐、私が果たす!
今回の剣技・魔術・その他です。
穿光
《閃光》の上位魔術。細く貫通力に優れる光を放ち、経路上のものを貫く。
お読み下さり、ありがとうございます!
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