第二十話 各地の反応
すみません、魔術などの名称を変更します。
旧)アトランダ皇国皇帝
↓
新)アトランダ皇国天皇
皇国の長は天皇でしたね(汗)
旧)上位魔術《永久夢中》
↓
新)最上位魔術《永久夢中》
使い勝手の良さとその強さに対して、上位魔術では少し難度が低すぎるかなと思ったので変更しました。
過去の話の方は既に変更いたしました。
宜しくお願いします。
P.S. クリム・ロンガルソの年齢を変更しました。
旧)二十六歳
↓
新)二十三歳
主人公の年齢ってこんな簡単に変えていいんだっけ…?((
過去の話の方は既に変更いたしました。
宜しくお願いします。
「全〈黒の称号者〉、及び全大陸同盟締結国に告ぐっ!こちら〈夜闇のハルツ〉、ハルツ・ミッドナイト!僕は自らの名に於いて、ここに第一種緊急事態を宣言するっ!!」
俺がこれを聞いたのは、カナタ人民解放戦線の暴動鎮圧を終え、天皇に謁見しているときだった。
「ハルツっ…!?」
「あぁ、ハルツ殿は其方の弟でありましたね」
御前に座る天皇が、ゆっくりとした、それでいて威厳と慈愛に満ちた声で言う。その後ろでは我が弟、ハルツが緊迫した声でその状況を伝えている。
「はっ。…いえ、申し訳ございません。職務中、それも天皇の御前の前で…」
「構いませんよ。…それより、お願いがあります」
「私に出来ることでしたら何なりと」
「其方ら第三師団は、すぐに動かせますか?」
耳に心地よい声が一転、軍を指揮執る男のそれに変わった。
「えぇ、可能で御座います」
アトランダ皇国、天皇直属軍第三師団。それが〈天皇直属軍七星師団〉のうちの〈第三星〉であり、俺が師団長として率いる師団だ。
そもそも天皇の御前には、ここ数年北西で活動が過激化しているカナタ戦線の鎮圧成功を報告するために来た。
カナタ戦線は過激とはいえ、国家転覆が狙えるような武装集団ではない。ただ人数が人数なだけに第三師団全ての戦闘用意を整えたのだが、案の定たった二個中隊だけで鎮圧が完了してしまったのだ。
つまり、動きたかったのに動けなかった奴らが、準備万端で待機している。
「ならば、クルツ・ミッドナイト。其方に、アトランダ皇国天皇の名に於いて、大陸同盟緊急事態宣言特別法に則り、其方率いる第三師団をガーツ共和国に向かうよう命じます。至急準備を整え、進軍してください。すぐに他の師団も向かわせましょう。〈七皇剣〉もすぐに動かします。装備の準備権限は委任します。早急に対処してください」
「かしこまりました」
そう言って恭しく一礼し、俺は素早く天皇の御前を退出する。
そして退出した瞬間、外で控えていた副師団長にすぐさま言いつけた。
「ガーツ共和国で第一種緊急事態が宣言された!第三師団が真っ先に向かうぞ。全大隊に連絡を下ろせ。準備出来次第すぐさま出発する。いいか、これは訓練じゃないぞ!」
「はっ!」
「今回は〈七皇剣〉も動く。俺らが先に状況を把握して、奴らの〈目〉になるぞ。第四大隊の斥候部隊が準備完了していたはずだな。すぐさま向かわせろ」
「かしこまりました。して、師団長は?」
「俺は飛ぶ。のんびり後方で行軍の指揮を執っている場合じゃあるまい。〈七皇剣〉ほどではないが、多少の戦力にはなるだろう。済まないが、行軍の指揮は頼む」
「師団長から、行軍の指揮権限を受諾しました。クルツ師団長。どうか、お気をつけて」
「あぁ」
そう言って俺は飛竜に飛び乗り、騎手の肩を叩いて、空へと舞い上がる。
*
「全〈黒の称号者〉、及び全大陸同盟締結国に告ぐっ!こちら〈夜闇のハルツ〉、ハルツ・ミッドナイト!僕は自らの名に於いて、ここに第一種緊急事態を宣言するっ!!」
「なんだと!?」
静かな執務室に突然響いたその緊迫した声に、皇帝が思わず叫ぶ。驚いて机から立ち上がった皇帝は、ひたと私を見つめて、厳しい声でこう問う。
「元帥。どの戦隊を送る?」
「敵の状況が分からない以上、何とも言えませんが……ひとまず、確認のためにも〈暴風戦隊〉から斥候として数小隊ほど向かわせます。それから〈劫火戦隊〉と〈精幽戦隊〉を中心として戦隊を組んで向かわせましょう」
〈暴風戦隊〉は、とにかく機動力に優れる者が集まった戦隊だ。もし仮に即座に悪魔と苛烈な戦闘になったとしても、どうにか凌いで逃げかえってこられるだろう。後は、特に相手に関する情報がない以上、大火力攻撃を主な手法とする〈劫火戦隊〉と、対魔物戦で高い効果をもたらす〈精幽戦隊〉で戦隊を組ませて、待機させておくのが良い。
「分かった。この際国防など後回しでいい。こんな時に攻めてきたら誰であろうと戦後は非難の的だ。それよりも、すぐさま用意を始めろ」
「かしこまりました」
私はその場で即座に通話用魔術道具を手に取り、各戦隊に連絡を下ろす。その間、皇帝は机の上にある、声がした漆黒の魔術道具を握って、向こうの相手に話しかけた。
「〈夜闇のハルツ〉、私はマトガイン帝国皇帝、アルノ・ジェ・トープだ。敵の状況を教えよ」
「皇帝殿、恐縮ですが、まだ目視の範囲に入れておりません。魔力反応のみ確認しております」
「…そうか」
「ですが、それでも敵の姿形はある程度分かります。身長50メルほどの人型、武器は片手斧のようです」
「元帥」
最後の皇帝の言葉は言うまでもなく私に向けられた言葉だが、
「申し訳ございません。外見の情報だけでは何とも…」
それだけではやはり、具体的にどの戦隊や個人を向けるかなどは判断出来ない。
「やはりそうか…。〈夜闇のハルツ〉、適宜情報を回せ、良いな」
「かしこまりました」
そこで皇帝は魔術道具を置いて、大きく一つ溜息をつく。
「もしこれを公表すれば、国は大混乱となるだろうな」
「ですが、避難は必要不可欠です。緊急訓練とでも称して実施致しましょう」
「あぁ、そうする」
皇帝が疲れた顔でそう言った、
だが、その直後。急に、皇帝が纏う空気が変わる。それは、国の行先を憂う気疲れした王、ではなく。
「だから、対処は任せたぞ、元帥。吾らが帝国の名にかけて、あの悪魔を撃破してこい」
帝国全土を代表する、力強く厳格な、一国を治める頂点。
「必ずや、ご期待にお答え致しましょう」
*
「全〈黒の称号者〉、及び全大陸同盟締結国に告ぐっ!こちら〈夜闇のハルツ〉、ハルツ・ミッドナイト!僕は自らの名に於いて、ここに第一種緊急事態を宣言するっ!!」
歴戦の英雄の武器や絵画、希少かつ美しい宝石などが惜しげもなく飾られた謁見の間。しかしそこに響いた緊張感に張り詰めた声は、それらの美しさすらかき消してしまう。
「なんと…。悪魔が…」
王室付きの侍女などが一気に混乱に陥る中、一人呆然と呟いたのは、この国が長、グランク・ミラストリア。
「静まれえぇっ!!」
しかし彼はすぐに気を持ち直し、雷のような怒号で謁見の間を静まらせる。グランクとて、何も伊達に一国の王などやっていない。
「良いか。吾々は颱風竜の被害で国土が散々な状況だ。とてもじゃないが、援軍など出せない。その代わり、もしこの戦闘が長引くようなら、同胞達の受け皿となり、そして人類最初の砦となろうぞ」
だから話す声はまるで、竜族に話させたかのように、重く、厳かで、揺るぎない。
「全国に緊急臨時避難体制を敷け。理由も言って構わん。軍は警戒態勢で配備せよ」
「は、はい!」
遅れて再起動を果たした部下達が慌てて動き出すのを尻目に、国王は謁見の間の隅に、それ自体も鑑賞品であるかのように飾られていた漆黒の魔術道具を手にして言う。
「吾はミラストリア王国国王、グランク・ミラストリアだ。申し訳ないが、吾が王国は戦闘支援を行えない」
「どういうことだ、ミラストリア!緊急事態宣言特別法を無視するというのか!」
言った瞬間、マトガイン帝国の皇帝が嚙みついてきた。だがそれに一歩も怯まず、変わらぬ口調で話を続ける。
「そもそも、必ず戦闘支援を行わなければならないわけではないぞ、アルノ殿。それに、支援をしないと言っているのではない。これを聞いている大陸同盟各国の部隊の兵に、吾々が責任を以て宿を与えよう」
「つまり、寄宿所になるということでございますか、ミラストリア殿?」
「その通りだ、天皇殿」
アトランダ皇国の天皇とミラストリア王国の国王が言葉を交わす、この場に口を挟める者は、この世界には殆どいない。三大軍事国家と同等、またはそれ以上の産業基盤を持つ国家自体はあれど、このような非常事態ではやはりこの三国の力が強いのだ。
「ですが、何故でしょう?いくら籠城戦が本領と言えど、其方らミラストリア王国は多大な戦力を保有しておいでです。それを悪魔撃退に幾ばくも貸すことが出来ないという、その理由をお伺いしても?」
「構わん。吾の国は颱風竜の襲撃を受けた」
途端に魔術道具の向こうに、息を呑んだような気配がする。恐らく魔術道具を作動させていないだけで、これを聞いている数十人の全員が全員、同じように息を呑んだだろう。
「…それは、無遠慮なことを聞いてしまいましたね。申し訳ございません、ミラストリア殿」
「気にしなくて構うまい。吾が国はそれを討伐した。損害は建築物だけだ」
「…なら、まだ良かったな」
そこでようやっと、皇帝が口を開いた。
「分かった、そういうことならミラストリアを存分に使わせてもらう。おい元帥、聞いていたな」
「皇国としても、ありがたく利用させて頂きたく存じます。寛大なご配慮に感謝します」
「むしろ戦闘支援が出来ないのが遺憾だ。どうかこの国を人類の防衛拠点として、自由に使ってくれ」
そこまで話したところで、国王の眼つきが鋭くなる。それを魔術道具越しにも感じたか、魔術道具の向こうはしんと静かになった。
「言うまでもなかろうが、悪魔は凶悪な魔物だ。この世界の総力を以てしても、どれだけの代償を払って撃退することになるか分からん。だからその時にはまず、吾らがミラストリアを最初の砦として使え。吾は、そして吾の国の民は、それを躊躇わん」
その静寂に流れる言葉は、皆等しく愛しき国の民を、自ら危険に晒すことを看過した言葉。
「吾らが国と引き換えにしても、吾らはこの世界を守ると誓おうぞ」
そして、愛しき国の民の力を信じ、敵前逃亡ではなく最前線を受け持つことを宣言した言葉だった。
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