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第八話 迷宮宮殿入口にて

ここから無双回続きの予定です! まずはダンジョンから。…というより、ダンジョンパレスの入口から?(笑)

 復活したカンナと共に、俺らは宮殿の入口へ向かった。

 入口には、剣を提げた二人の冒険者らしき人がいる。腕につけた腕章にある通り、ギルド本部の人間だ。ここに一般人が入り込んだりしないように、入り口で入場者を確認する、所謂門番役。


「こんにちは、ミラ先輩!」


 カンナはそのうちの、入り口右手の方で待機している女性に声をかけた。


「そんなに畏まらなくていいのに。久しぶりね、カンナ。今日はパーティ組んでるのね」


 ミラと呼ばれたその女性は、背の高い、赤毛の女性だった。…この感じからすると、カンナはいつもはこのダンジョンに一人で来るのか。


「はい!あの、実はこの方達、銀色の魔狼(シルバー・ハイウルフ)を倒したあの二人組なんです」

「あぁ、貴方方が噂の……。じゃあ、ここには入れるわね」

「いえ、あの、それが……」

「どうしたの?」


 カンナが言い淀んでしまったので、俺が代わりに話すことにする。


「実は、俺らは今朝冒険者になったばかりなんだ。つまり、称号が足りない」

「なったばかり!? って、あぁ、なるほどね……」


 ミラ先輩と呼ばれたその女性は、どうやら察しの良い人のようだった。


 俺らはカンナに聞いて初めて知ったのだが、ミラストリア王国では、ダンジョンに入場規制を設けている。出現するモンスターの数やレベルに応じて、入れる称号(カラー)に制限があるのだ。

 実力とかけ離れたダンジョンに入って冒険者が死んでしまえば、得する人間は私怨があった人間ぐらいだろう。誰でもそういう事態は防止したい。よく考えれば当たり前の制度だ。

 そしてこのダンジョンの制限は、〈銅の称号(ブロンズカラー)〉以上。つまり、俺もジィも入れない。

 近くに称号(カラー)制限のないダンジョンもあるのだが、今日のここの門番役の先輩と面識があるからこっちを試してみたい、というカンナの言葉を聞いて、俺らは先にこっちに来ていたのだ。


「カンナ。貴女、これギルド本部の規則違反なだけじゃなくて、立派な法律違反だからね?それを分かってて来てる?」

「悪いことなのは分かっています。でもミラ先輩、せっかくこの国に来たのに、ちまちま称号(カラー)を上げないとダンジョンに入れないなんて、つまんないじゃないですか!」

「それが法律よ、カンナ。死者が出てもいいの?」

「でも、実力はあるんですよ!?間違っても、運で銀色の魔狼(シルバー・ハイウルフ)の群れを瞬殺させられる人なんていません!」


 いや、あの時は五頭逃がした上に、倒すのに()()()かかった。瞬殺なんて程遠い。どうやら、俺の知らないところで話がどんどん盛られてるようだ。


「それは、そうだけどねぇ……」


 ミラ殿は、本気で悩んでいるようだ。規則と法律を取るか、人情と可愛い後輩の願いを取るか。俺はこの類の悩みに遭遇したことはないが、悩ましい選択であるのはなんとなく想像がつく。


「この場で決闘を開くわけにもいかないし…」


 決闘か。そう言えば、結構の国家で合法なんだったな。ミラストリアもその一つだったか。

 だが俺は、ミラ殿の決闘と言う言葉を聞いて閃いた。要は、ミラ殿を納得させればいいわけだ。だったら……多少、荒業で行っても構うまい。


「ミラ殿。失礼だが、称号(カラー)を伺っても良いか」

「…えぇ、〈金の称号者(ゴールドカラー)〉だけど」

「そうか。なら、〈石の称号者(ストーンカラー)〉のこの攻撃――避けてくれ」

「え?」


 その瞬間、ミラ殿の周囲に俺が(おこ)した魔力が殺到する。それを感知したミラ殿も、咄嗟に対魔力攻撃用防護魔術を(おこ)して――


「十三、だ」

「…う、そっ…」


 十三個の魔術を、防御し損ねた。


 俺は称号(カラー)についてちゃんと知らなかったが、ついさっきカンナから聞いた。

 そして、〈金の称号者(ゴールドカラー)〉は称号(カラー)の中で上から三番目。〈黒の称号者(ブラックカラー)〉は殆ど伝説だと考えると、実質上から二番目だ。

 それぐらいの実力があれば、俺が今、自分の周りに幾つもの術式を展開していることが、肌で感じられるはず。勿論魔力を込める気はないが、魔力それ自体は既に(おこ)してある。後は俺が術式に魔力を込めるだけで、十三もの魔術がミラ殿に襲い掛かるというわけだ。


 入口に突如生まれた無数の魔力反応に、それに気付けるほどの実力者が幾人か振り返った。……術式を構成する魔力量自体は絞ったつもりだったが、歴戦の冒険者の目は欺けないか。


「…でも、貴方は先に術式を織れたでしょう」

「もし俺が話しながら魔力を(おこ)していたら、ミラ殿は気付いたはずだ。それともまさか、《魔力隠蔽(パワーハイディング)》も使っていない人間が目の前で魔力を(おこ)したのに気付けないほど、ミラ殿は自分が未熟だと思っているのか?」


 その言葉を聞いて、ミラ殿は顔をしかめた。ミラ殿自身も、そんなはずがないと分かっている。そうだったら、自分が〈金の称号者(ゴールドカラー)〉であるはずがないのだ。

 そしてミラ殿は、もう既に気付いている。


 どちらにしろ、魔術を防ぎきれなかった時点で、自分の方が弱いということを。

 本当だったら、自分は死んでいたと。


「…なら、奥の紳士の方は」

「お呼びでしょうか、ミラ殿?」

「…な、っ……」


 ……おいジィ、驚かすようなことすんなよ。《最上位気配隠蔽サインハイディング・ハイエスト》発動して最短距離で裏に回って短剣を首筋に当てるって。ジィの魔力を感知してなかったら、俺でも見逃しかねない速度だったぞ。


「……貴方達、一体何者……?」

「ただの〈石の称号者(ストーンカラー)〉だ」


 こっちが先手を取ってるんだから、称号(カラー)の差を考えても()()()()()は当然だしな。しかも、ずっとその場に突っ立ってたせいで、ミラ殿は実力を出せていないはずだ。正面から当たっていたら、結果は違ったかもしれない。

 まぁ、どちらにしろ、


「……いいわ、見逃してあげる」

 通れるんだったら、いいだろう。


 *


「大丈夫ですか、ミラ先輩。どうしました?」

「ううん、気にしないで。大丈夫よ」


 一緒に門番をやっていた〈銅の称号者(ブロンズカラー)〉の後輩に返事をして、私は再び前を向く。しかし丁度皆昼食をとる時間なせいで、入ってくる人は殆どいない。そのせいで、私の思考はまた、さっきのことに向いてしまう。


(何だったの、あの速度、数、正確性、隠密性……。あんなの、〈白金の称号者(プラチナカラー)〉の先輩でも無理なレベル……)


 さっきの男が見せつけた、圧倒的な複合魔術。

 私は十三を防ぎ損ねたが、それは背中側に防護魔術を展開するより先に彼の魔術が展開されていたからだ。身体の前面や側面に展開された魔術はちゃんと防いでいたと思うし、実際あの男もカウントしていなかった。そして、一つ一つは《火焔(ファイア)》とか《鎌鼬(リップ)》とかのような下級魔術だった。それでも、それらのうち一つでも発動したら、私は死ぬということは容易に分かった。下手したら、防護魔術を破られかねないとも思った。


 あの男は、同時に三十六もの魔術を展開していたのだ。



 そして、あの老紳士が見せた、瞬く間の暗殺術。

 彼もまた、私を殺すことが出来た。それも、派手な魔術を発動することも、高度な技術を見せることもなく。やったことは、気配を消して、私の背後に回っただけ。それでも、《上位気配隠蔽サインハイディング・ハイ》を発動したことを気付かせず、魔力が動いたことを気付かせなかった。そして私に、防護魔術の展開を許さなかった。逃げようとすら思えなくされた。


 あの男は、私に危険だとすら感じさせなかったのだ。



 私を、三十六の手で殺そうとし、実際に十三の手で殺せた男。

 私を、たった一手で殺そうとし、実際に間違いなく殺せた男。

 あんな人間を、私は見たことが無い。



 〈早盾のミラ(スピードシールド)〉の異名を持つ私の、防護魔術を許さない男達なんて。


 *


 ミラ殿に見せたギルドカードを懐にしまい、俺達は迷宮宮殿(ダンジョンパレス)の中に入った。


「これが、〈迷宮(ダンジョン)〉なのか」

「話には聞いていましたが、目にするとやはり不思議なものですね」


 そして、分かっていたつもりだったが、やはり中にある()()に驚いてしまう。


「不思議だよね~!未だに私も信じられなくなるよ。こんな()()()()()()()()()()()()()()()()、さ!」


 そこにあったのは、透き通った紫色の四角錐――巨大な、魔石だった。



 〈迷宮(ダンジョン)〉といわれるものは普通、実世界に存在しない。

 実世界にあるのは、ただの超巨大な魔石。大抵、縦横2メル、高さ4メルぐらい。

「ダンジョンは〈別次元〉にある」と言うことが多いが…具体的な仕組みは、未だ専門家にすら殆ど分かっていないんだと聞く。

 分かっていることは、この超巨大な魔石に手を触れて魔力を込めると、実世界とは別の、全く別の世界に移動するということ。そして大抵、そこには大量のモンスターがいること。


 魔力を加えると魔術が発動するという点に於いては、ダンジョンの魔石は刻印魔術や魔術道具と全く同じだ。だが、刻印魔術なら物体に彫られた刻印、魔術道具なら内蔵された魔石に刻まれた立体刻印、に魔力を加えることで刻印が魔力回路兼(キー)となって決まった魔術を発動するのに対し、ダンジョンの魔石にはそれらしきものが一切ない。それでいて、現存している最も複雑な刻印よりも、複雑な魔術が展開されるのだ。その時の魔力の流れはあまりにも複雑すぎて、専用の観測用魔術道具が負荷過剰刻印破損(オーバーロード)したらしい。

 それでも専門家達が諦めずに続けた長年に渡る解析の賜物が、数百年前に開発された転移用魔術道具だったりするのだが……とにかく、ダンジョンについては未だに謎が多いのだ。



 ダンジョンパレスには部屋も階もなく、本当にこれはただの覆いなんだなと実感した。一応吹き抜けらしき形にはなっているが、二階部分には構造的に人が乗れない。二階部分の下と魔石の近くはフェンスで区切られていて、


「…あれが、帰ってきた奴らか」


 二階部分の下の一か所に突然光が生まれたと思ったら、光は人間に変わった。


「そうだよ!どうやら結構稼げたみたいだね~」


 そう言いながらカンナは、次々光の粒子となって消えていく人々の後に並んで、巨大な魔石のそばに近づいていく。俺とジィも、カンナに倣って魔石のそばに並んだ。


「入った瞬間に襲われることはないから、取り敢えずダンジョンに入ろう!はい、手を重ねて!」


 カンナの言う通りに、魔石に触れたカンナの手に俺が、その上にジィが手を重ねる。


「それじゃあ、いっくよー!掛かる魔力に抗わないでね!」


 そう言った瞬間、カンナの手から俺とジィに魔力が加わる。俺はその魔力をそのまま受け入れて……


 そして途轍もない規模の魔力に包まれて、抗おうと思う間もなく、視界が白に染まった。

今回の剣技・魔術・その他です。


魔力隠蔽(パワーハイディング)

下位魔術。下位看破魔術を使われない限り、少量の魔力を隠蔽し、感じられなくする。


最上位気配隠蔽サインハイディング・ハイエスト

気配隠蔽(サインハイディング)》の最上位魔術。最上位看破魔術を使われない限り、殆ど誰にも気配を読めなくなる。


火焔(ファイア)

下位魔術。炎の弾を生み出し、相手にぶつける。


鎌鼬(リップ)

下位魔術。円盤状に風を旋回させて、触れたものを切り裂く。



お読み下さり、ありがとうございます!

もしよろしければ、評価やブックマークをしていただけると、筆者の執筆の心の支えになります。

これからもどうぞ、よろしくお願いします!

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