赤青
私は、一人では手に負えない研究をしていた。
助手が必要だ。
ただ、誰が手伝ってくれようか。
まともな人間は相手にしてくれない。私は、人型のロボットを助手として研究をしていた。
助手のロボットは赤いロボットと青いロボットの二台ある。一台が稼働中、もう一台が充電をして、交代交代で助手をしてもらっていた。例えるなら日勤夜勤の交代制みたいな感じ。
そんなある日、ロボットがいきなり「アノ、ロボットハ、動クノデスカ?」ともう一台のロボットに興味を持ちはじめた。交代するまでずっと充電してるからロボットはお互いが動く姿を見たことがないのだ。
「動くよ。君がエネルギーを使い果たして眠った時に起きるんだよ」
「ソウナンデスネ、会ッテミタイナァ」
起動チップは一つしかない。それを差し込む事によってロボットは動く。二台同時に動かすことは無理だ。
「話シテミタイナァ・・・」
次の日、研究の休憩中に私はロボットにサプライズをした。
「これ見てごらん」
「タブレットデスカ」
タブレットの動画を再生してあげた。
「コンニチハ〜っモウ一台ノロボットサン〜」
「アノ、ロボットガ動イテマス!」
私は二台のロボットをビデオレターで繋がらせてあげた。
正直、ロボットが他のロボットに興味を持つとは驚いた。
「ワタシモ、オ返事返シタイデス」
「撮ってあげるね」
こうして二台のロボットの動画でのやり取りが始まった。
永遠に続く物なんかこの世には存在するのかどうか。
時は過ぎ、赤いロボットの動きが非常に悪くなっていた。
バッテリーの持ちも悪い。
もうそろそろ。
二台のロボットの動画でのやりとりもだんだんと回数が減っていった。
そんな赤いロボットの不調に青いロボットは気付いていた。
そして青いロボットは一つ、私に頼みごとをしてきた。
数日が過ぎ、赤いロボットが充電し終えて目覚めると、いつもと体が違う。
スムーズに動く。そして気付く。不調部が修理されていた。その修理に使った材料は、青いロボットだった。
二台のロボットは一つになっていたのだ。
そして青いロボットが最期に動画を残していた。
「僕ハ君トイッパイオ話出来テ、トテモ嬉シカッタ。
君ガ不調ト言ウ事ハ動画ヲ見テテ気付イテイタ。
コレカラハ僕ガ君ノ一部トシテ支エルネ。
今マデ有難ウ。サヨウナラ。」
いつも頻繁に動画でやりとりをして、今では体の一部になって支えてくれる物凄く近い存在なのに、一度も面と向かって会話したことのない、これからは動画のやり取りさえもできない、世界で一番遠い存在に感じました。