大学生と帰り道
「電話受けだけでも疲れたねー」
編集部からの帰り道、俺と未来は最寄駅から歩いて帰っていた。 赤く染まった夕日を背にのんびりと散歩気分で歩いていると未来が伸びをしながらそう言ってきた。
「まあ神経は使ったな。 未来もお疲れ様」
「つっくんこそお疲れ様だよ。 でもどこで電話受けなんて習ったの?」
未来は不思議そうに言う。 どこでって言われてもな、ただの真似なんだよなあ。
「前にテレビでやっていたのを真似しただけだよ」
「それでもあんなにすらすら言葉が出てくるなんて凄いよ!」
急に褒められたので照れてしまう。 単純に嬉しいが未来も電話の対応の仕方が並外れて上手かったので俺も不思議に思うんだがな。
まあ未来の場合は蕎麦屋で出前の電話とかを受けたりしているんだろうから対応がしっかりしていてもおかしくはないか。
「それでご飯はどうする?」
編集部に行く前に軽めの昼飯を食べたといえさすがにお腹が減った。 時間も時間だし早めの夕飯にしてもいいなと思っているのだが。
「うーん、私もお腹空いたからなー。 メナージュにでも行く?」
「そうするか」
家からも近く、安いし美味しい。 困ったらいつもメナージュに行ってしまう。
それに久々にナポリタンでも食べたいと思っていたしちょうどいいか。 ゴリラは…… いいとして舞先輩とも話をしたいしな。
そう思い、俺と未来はメナージュに向かうことにした。 幸いまだメナージュが帰り道の途中だったために引き返すことなく店にたどり着いた。
「いらっしゃーい」
メナージュのドアを開けると毎回明るい声で舞先輩が迎えてくれる。 これのために来る人がいるんじゃないかと思うほど元気をくれる出迎えなんだよな。
「おや、紗月君に未来ちゃんじゃないか! ゆっくりして行ってねー!」
店の中は夕方ということもあってか部活帰りであろう学生や早めの夕飯を食べに来た家族連れなどで賑っている。
俺たちはいつもの奥の席に座り、舞先輩の手が空くのを待つことにした。 未来はメニューを眺めてあれがいいこれがいいと独り言をつぶやいている。
「別に新しくメニューが増えているわけでもないのに何でいつも眺めてるんだ?」
疑問に思ったので未来に聞いてみた。
「つっくんは分かってないなー。 メニューを覚えているからこそもう一度見て考えるのが楽しいんだよ」
「うん、わからん」
俺は来るたびにクリームソーダとナポリタンしか頼まないからな。 メナージュはデザートも豊富でパフェだけでも何種類もある。
未来や他の女子からしたら迷うのも無理はないのか……? やっぱり男の俺には理解しがたいものだな。
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