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落第中年 invisible game  作者: アボリジナル・ バタースコッチ
6/22

激突

大男は左手に持った書類鞄の留具(バックル)を外し、もう片方の手を差し入れる。


鞄のかぶせが開き...そして中から白刃一閃。

「シュッ‼︎」


<投擲ッ⁉︎>


松野は男の手から3本ほど得物が放たれたのを感じ取った。

小男の身体が俊敏な動きを見せる。

左斜めに身を躱し、投射物の接触を防いだのだ。


外壁が合板(ベニヤ)となっていた為か、向かいの建物へ刃が深々と突き刺さる。

両刃(ダガー)状で細い、長さ25(センチ)程の剣。

まともに受けていれば致命傷は免れないだろう。


投擲※<1>は、相手の動きを止める、あるいは急所に深手を負わせることが出来ればなお良し、といった目的で成されたものだった。

目の前にいる中年男性が思わぬ動きをした事で、大男は刹那、呆気にとられた様子を見せた。

しかし、直ぐさま鞄から次なる凶器が取り出される。


<山刀(ブッシュナイフ)か...>


刃渡りは40(センチ)程度、鞄の容量ギリギリであろう全長と重量1.5(キロ)を有するそれを、暴漢は全力で振るってきた。


抜きざま、大男から見て左から右の横薙ぎ、そして再度振りかぶって袈裟斬り。

そこから幾太刀か小男へ攻勢を向ける。

先端の速度、振り抜きにかかる膂力、共に申し分ない。


しかし松野はその全てを凌ぎきった。

上半身を軽く仰け反らせ、体勢を正常(フラット)に戻しながら後退する。

齢45の小男は、左右の瞳孔を玩具を追うイエイヌのように絶えず動かし続ける。

「ハッ、フゥハッ..ハッ」

呼吸が乱れぬよう、息を整える。


何度か危うげな場面がありながらも、刃の先端を避け切った後、突如正面へと前進。

素早く大男の右小指と親指を、それぞれ己の左手親指と中指を沿わせて外側から掴むと手首を極め、山刀を()ぎ取る。

次の瞬間には山刀は松野の右手に持ち変えられ、下から上へ男の手首を斬った。


さらに斬りあげたそれを伸びきった肘窩(ちゅうか)※<2>に向けて振り下ろす。

大男が痛みを感じ顔を歪ませて、思わず凍えたように身体を丸める。


男の頭が下がったところに左頸動脈への横薙ぎが入った。

鮮やかな赤が吹き出し、周囲を染め上げていく。


佇む小男と屍体が一体。


<死なずに済んだか...>


松野は生の実感を噛み締めた。

そう彼は闘争に打ち勝ったのだ。



※<1>...至近距離、直打法による投擲である

※<2>...肘の内側の窪み。

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