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落第中年 invisible game  作者: アボリジナル・ バタースコッチ
18/22

第17話 サムハラ⑤

「兄ちゃんもコレやるんだろう?」


別所は不気味な笑みを浮かべる松野に対して、猟銃の包みを指して言った。




「いえ・・・昔の話ではありますが、”射的”はかなりハマったものです。好きこそもののなんとやら、とはいきませんでしたが・・・」


松野はそう返したものの、己の内に秘める闘争本能を抑えるのに必死であった。




「沫衝弾はどこで購入しているんです?銃砲店では取り扱いがないはずですが・・・・もっとも、最近は民間にも卸されているかもしれませんが」




「”裏”に知り合いがいれば、調達はかなり簡単よ。それこそ、小銃弾くらいは軍属に知り合いがいれば融通してくれるもんよ」


別所は得意げにそういったものの、カウンター越しに立向居が自制を促すような目線をやっていることに気付き、少しきまり悪そうに右頬を掻いた。




「ちわ~す、今日空いてます?」


常連らしき男が一声かけてきている。




「あら、櫻田さくらださん、いらっしゃい。お久しぶりじゃないですか?」


丸太のように鍛え上げられた肢体、端正かつ精悍さを併せ持った顔つき。


この店”サムハラ”にはこうした「剛の者」が多く訪れる。




松野の防衛本能は、この男に対しても危険信号を発していた。


しかし、同時に松野は新たな緊張スリルに愉しみを見出していた。




(これだから、人生は面白い・・・)


日々の”出会い”に感謝する松野であった。




◇◆◇ー----◇◆◇




同時刻ー--欧州アルビオ連邦領スタンリー総督府(南皿に位置する)にて。




スタンリー総督:ジェイコブ・S・コールマンは乳香(庶民には到底手を出せない嗜好品)を焚きながら、優雅にクーバ産の葉巻を燻らせていた。




「ん~♪やっぱりコレ、たまりませんねぇ~」


一人呟きながら、書斎で孤独の時間を満喫する。




コンコンコン・・・・扉を叩く音ー。


こんな時間になんであろうか、どうせ侍従が余計な気を利かせて遅めの午後の紅茶ナイトキャップティーでも運んできたのだろう。そう考えて声を挙げる。


「何か用かね、ロイ(侍従の一人)?メアリー(侍女)?」




戸を叩いたものは無言を貫いている。


ギィ・・・扉がゆっくりと開いたかと思うと、そこにはおどろおどろしい防毒面ガスマスクを付け、手には火炎放射器か噴霧器のようなものを持った男が佇んでいた。




「ひっ!」


思わず提督は小さく悲鳴をあげる。




「天誅!(Guilty)」


侵入者はそう叫ぶと、椅子にもたれかかったままの貴人の顔に向け白い液体を噴射した。


即座に泥のような物質は硬質化し始め、ジェイコブ氏の呼吸を阻害した。


「ンフーッ!ンッンーッ!」


吸息ままならぬまま、四肢が痙攣を始める。




30秒も経過すると提督の命の灯はゆっくりと消えていくのだった。




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