第4話 見習い
「アレックス、朝だぞ」
アレスが下の階から呼んでいる。
目を擦りながら降りてくると、朝食が置いてあった。
「頂きます」
「アレックス、昨日は眠れたか?」
「うん」
見え見えの嘘をついた。
昨日、あんなことを知ってよく眠れる訳など無い。
「あの、ここにいつまで滞在するんですか?」
「そうだなぁ、あと3日位かな。なかなかの大仕事だったから大金が手に入った」
「その、僕は見習いってことなんですが、仕事って何をすればいいんですか?」
「君には最初は荷物運びを担当して欲しいと思っている。だけど、見習いという立場として申請するから、魔物との戦闘の練習とかもさせないといけないな」
「戦闘、ですか」
「別に怖がらなくてもいいんだよ、アレックスくん。やるのは練習だし、まずは自分なりの戦い方とかを考えないとね」
「自分なりの戦い方……」
「アレックス、俺みたいに弓使いになるのはどうだ? 敵に気づかれない所から正確に矢を放つ。それに今なら、俺特製の便利な技なんかも教えられるぞ」
「いいかもね。シェイドは、世間では消影のシェイドと呼ばれていて、結構腕いいんだよ」
「ただ、シェイドは教えるの下手だけどな」
「アレス、お前酷えな」
「あの、魔法ってどうやるんですか?」
「お、アレックスくん魔法に興味あるんだ、魔法ってのはね、この世界の知識の集大成。どんな戦い方でも、魔法を使うのはは避けられない。例えば、剣士が炎を剣に纏わせるのも魔法を使っているし、シェイドも矢の軌道を風の魔法で操ったりするんだよ」
「まぁ、遠距離を狙う時は欠かせないからな。アレスは脳筋過ぎて魔法使えないんだっけ?」
「なんだ? やんのかシェイド?」
「こらこら、喧嘩すんな。どっちも魔法じゃ私には勝てないんだから。魔法には、二種類あって、自分の身体に流れる魔力を現実の現象や物質などに変換するものと、特殊な魔方陣とかを用いて周りの魔力を使用するのもがあるの。2つ目の方法は儀式とも言われるんだけどね」
「自分の魔力を使用する場合は、人によって量や質が違うから個人差が出やすい。逆に儀式は誰がやってもさほど変わらないが、専門の知識や道具が必要。その代わり儀式で起こせるものは、人間一人では賄えないほどの大きな魔法や、ものの性質を変えてしまうものまである」
アレスとミネアが魔法について小一時間語ってくれた。
兎に角魔法の重要性についてはわかったので、時間がある時にミネアに教えてもらうことになった。
「まぁ、魔法は基本教養だからな。だけど、丸腰は不安だろ?アレックスは何か使ってみたい物はあるか?俺なら片手剣も両手剣も斧に矛だって教えれるぞ」
「はは、アレス、しっかりと教えられるのか? お前筋肉だけの男だろ?」
「ほう、俺のインテリジェンスな筋肉美学を見せてやろう」
「やっぱり筋肉じゃねぇか」
「おっと話が逸れてしまうな。アレックス、今言った物なら俺は教えられるぞ。弓がいいならシェイドだが、とりあえず何を教わりたい?」
「じゃあ、剣で……」
「そうか! そうか! そうか!!! じゃあ早速買いに行くか!!」
アレスを本当で喜ばせてしまったようだ。
上がりきったアレスのテンションについていけない。
「アレス、金使いすぎないでよ……」
「嬉しいのはわかるが、張り切り過ぎて高級品渡すのは止めておけよ」
「わかってるって! それじゃあ、いってくるぜ!」
そんなこんなで、俺は鍜治屋に引きずられるようにして訪れた。
「うぃーす!」
「お、アレスじゃん! 久しいな! どうしたんだ?」
「いやー実はうちに見習いが来ることになってさー! いい剣あるか?」
「何言ってんだ、いい剣しかねぇよ!」
「そうだったな、悪い悪い!」
「で、この子のやつかい?」
「そうそう、見てやってくれよ」
「はいよ、じゃあとりあえず身長とか測るからな」
身長やら体重やら、時には腕の長さまで測られ、いつの間にか一時間以上過ぎていた。
「よし、終わったぞ。君は片手剣と両手剣どちらがいいかい?」
「片手剣で」
「りょーかい。じゃあ、いいの持ってくるね」
店主が、奥から片刃で細身の剣を持ってきた。
「ちょっと振ってみな」
振ってみると、剣が腕の動きにしっかりとついてくる。
「どうだい?結構自信満々で選んだんだけど、馴染むか?」
「はい。とても使いやすいです」
「はは! そうか。アレックス、早速稽古すっか!」
「アレス、手加減してやれよ…」
剣を購入した後、とりあえずミネア達にどんなものを買ったのかの確認の為に見せた。結構怒っていたが(なかなかの値段だったようだ)兎に角剣があっても使えないのでは意味が無い。
早速アレスとの稽古が始まったのだが……
「アレックス! こうだ! こう振るんだ! 風の斬れる音が聞こえるだろ!」
なめてました。剣重いし、アレスが超人なので、メニューが無茶。
一時間のジョギングからの、
「アレックス、この岩を斬ってみろ!」
どっかから岩担いできてこれ斬れと。
いや、剣折れるよ? って言ったら、
「おらぁ!……よし、やってみろ」
本当に斬った。初っ端からこれ。
いや稽古って素振りとかのイメージだったんですけどねぇ。「俺にできることはお前にもできる!」ってどっから沸いてくるんだよその理論。
この先どうなるのだろうか。