第3話 金の目
3年ぶりの夕焼けか。こんなに綺麗だったんだな。
だが、全く感動はできなかった。
下ではシェイド、ミネア、アレス全員が丸型のテーブルを囲う様にして座る。
「アレックス、ここに座ってくれ」
指された椅子に座る。
「その、君はもう気づいているかもしれない。実はあの日、君を助ける時にとある事故があったんだ。」
「事故って……」
「とりあえず、鏡を見てくれ」
アレスが鏡を手渡してくれる。
自分の顔が写った時、俺は信じられなかった。
顔よ半分が白く、左目は長らく見てきたあの、吸血鬼の目の様に金色に輝いていた。
「え……」
「すまない。俺達が悪いんだ。君はあの時、神聖な物を一つも着けていない状態で、吸血鬼の返り血を浴びた。そして、吸血鬼に眷属の儀式を受けた。」
「吸血鬼の眷属の儀式には、自身の血液を使うの。神聖な物を身に付けると、その様な邪悪な儀式から身を守れるんだけど、そもそも吸血鬼に捕まっていた君が持ってるわけなかったよね」
「これらの責任は俺達にある。本当にすまなかった」
アレス達全員が頭を下げる。
でも、どうしろというのだ。
半身がヴァンパイアになるなんて、考えたこともない。
「俺が……それも、左半身が……」
「前代未聞だ。それに君にははこれからの生活もある」
「ヴァンパイアってことは、太陽の光を浴びれば俺は灼けるし、人の生き血をすするようになるってことなのか……」
「治すこともできず、本当にすまない。君はこれから、普通の人として生きることができなくなってしまった。」
「そんな……」
「それで、君に一つ聞きたいことがある。君はこれから何をして生きていきたい?」
これからなんて想像できない。これから俺が何をしたいかなんて。
そもそも、俺を雇ってくれる所などあるはずが無い……
「ごめんなさい。わからないです」
「そうか……いきなりこれからどうしたいかなんて聞かれてもわからないよな。ミネア、シェイド、とりあえずこの子達は俺達が預かる方向で検討しないか?」
「アレスが言うならそうするが……」
「でもアレス、急にメンバーが増えた事を協会にどう報告するの?」
「アレックスを見習いとして報告する。アレックス、今はとりあえず、俺達と一緒に来ないか?」
アレス達の所で見習いか……
俺に行き場なんて他には無い。
断ることはどちらにしろできないな。
「はい。そうさせてください」
「わかった決まりだな。アレックス、これからよろしくな」
「はい」