表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/17

第2話 白の肌

 アレス達一行は、吸血鬼を倒した後、気絶した少年を連れ、城から脱出した。

 その後、一晩開け、アレス達はとある街の宿の一室にいた。


「えっと、とりあえず皆、今回はよく頑張ってくれた」


「依頼の方は、とりあえず成功して、報酬もらってきたからね」


「サンキュー。ミネア」


「とりあえず、数日間は金に困らないね」


「あぁ。だが、一つ、話し合う必要がことがある」


「あの少年のことでしょ」


「その通りだ。俺達のミスにより、彼は半身が吸血鬼になってしまった」


「ミネア、どうにかできないのか?」


「ダメだった。あの時、儀式によって吸血鬼化するのは止まったけど、何度やっても左半身は戻らないの」


「そうか……」


 彼の半身は、永遠にヴァンパイアか。

 まだ、アレックスという少年は起きて来ない。

 これから少年が背負う苦しみは計り知れない。

 まだ幼い彼に何と謝ればよいのだろう。


「アレス、自分を責めても仕方ないよ。せめて、彼の今後について考えよう」


「そうだな。ミネアの言う通りだ。とりあえず、彼をどうしよう?」


「親の元に帰すのはどうだ?」


「身寄りがあるならそうするべきだ。だが、見た感じ連れさられてかなり経っている」


「親に帰すにしても、彼の半身はヴァンパイアなんだよ?もしも騒ぎになったら、あの子はどうなるの?」


「……ミネア、じゃあどうするんだよ」


「……」


「シェイド」


「すまん」


「アレス、あの子の様子見てくるね」



 気付いたら、ベッドの中にいた。

 ヴァンパイアの血が掛かったところまでは覚えているが、そこからは完全に記憶が無い。

 だが、俺はあの城から救出されたのは確かだ。


「あ、やっと目が覚めたね」


「おはようございます……」


「敬語じゃなくていいよ。お腹空いてない?」


 すぐに「大丈夫です」と言おうとしたが、腹がなってしまった。


「ふふ。それじゃあ今から簡単に作れるもの持ってくるね」


笑顔だけど、それは申し訳なさそうな笑顔だった。

 そういえば、手がやたらと白い。真っ白だ。

 随分長く太陽の光を浴びていなかったからなのか。


 そんなことを考えていたら、魔法使いっぽいお姉さんがご飯を持って部屋に入ってきた。


「ごめんね。こんなのしかなくて。仲間が下で待ってるから、食べたら来てくれる?」


「うん」


 持ってきてくれたのはパンとスープだった。

 これ結構旨い。だが、肝心な事はそこではない。

 お姉さんが部屋からいなくなった後にそれに気付いた。

 パンを掴む右手は見慣れた小麦色の手だ。

 何故左手が白くなっている。

 ヴァンパイアの血って美白効果でもあるのか。

 そうだったとしてもやり過ぎだな。

 美味しいが、量が量なので、あっという間に食べ終わった。


「食べ終わったんだね」


 いつの間にかお姉さんがいた。

 一緒に下へと降りる。

 下の階には、青年が2人。片方は筋肉質でいかにも騎士みたいな顔、もう片方は、全体的に細い好青年である。


「おはよう。少年、よく眠れたか?」


「はい」


「敬語じゃなくてもいいんだよ」


「でも、恩人ですので」


「別に俺達は当たり前の事をしただけだし、それに……」


 筋肉質な方が何か言い掛けた。何かあったのだろうか?


 するとお姉さんが少し焦った表情をして自己紹介を始めた。


「私はミネア。魔法使いで、治療も担当してるんだ。何か困ったことがあったら私に言ってね」


「で、この細い方がシェイド。弓使いで、気配を消して先に魔物の数を減らしたり、戦いの時は後ろから援護してくれるんだ」


 珍しく誉めるなよ。と、シェイドと言う青年が少し恥ずかしそうにしている。


「こっちのゴリラみたいなのがアレス。ここのリーダーで、大きな両手剣を使って、魔物と正面から戦ってくれて頼りになるんだ。作戦もよく考えてくるんだけど、だいたいは脳筋だから却下するんだよね」


「ちょ、おい!」


「それで、君のこと教えてくれる?」


お姉さんが優しく声を掛けてくれる。


「えっと、名前はアレックス。歳は、連れさられた時が9歳だったので、3年位経ってるから12かな。出身はピーテっていう山間部の村です」


「教えてくれてありがとう。アレックス。よろしくな」


「よろしく、お願いします」


「とりあえず、今まで寝ていたとはいえ、今日はじっくり休んでくれ。あんな環境でずっと過ごしてきてつらかっただろ?」


「でも、怪我したわけじゃないし」


「今のところ、金はあるから、俺達もしばらくはここで休みを取るし、君を一人で歩かせるわけにはいかないからな」


 どういうことだろう。


「君の部屋らしき所にあったものは全部持って来たから、必要なものを整頓していてくれ。それと、夜になったら、その……君の今後について話がある」


 いやな感じがする。

 不安なのが彼らに伝わったようだが、今は言えないのだろう。

 それならば聞かないでおこう。荷物の整頓にも時間がかかるだろうし。

 今は考えないようにしよう。


「とりあえず、部屋に戻りますね」


「そうか。夜になったら呼ぶからな」


「うん。わかった」


 部屋に戻って、無造作に置かれた多くの荷物から、自分の服などをより分ける。


 中にはなんでこんなものを……って思うような物まであったが、それは仕方ないとして、日が落ちるまでに必要なものと明らかなゴミを仕分けた。


 夕焼けが地平線に沈んだころ、俺を呼ぶ声が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ