第15話 温泉宿
「ここが、あなた方の目的である温泉宿です。と言っても宿としてはほとんど機能しておりませんでしたが、村の者に準備させていますので、しばらくお待ちください」
ここの村長の、白髪の老人にそう言われ、木製の椅子に座りしばらく待つ。
椅子に座りながらボーッとしていた俺達に、どこからか現れた、先ほど村まで案内してくれた黒髪の少女が現れた。
「こんな所までわざわざありがとうございます」
「いやいや、冒険者やってるからこのくらいはね。それより、君結構珍しい髪色しているけど、どこ出身なの?」
「東の国です。気付いたらこの村にいて、村長の家に居候しています」
「そうなんだ。不思議だね」
「私の国では『神隠し』と呼ばれる、人が突然消えてしまうことを意味する言葉もありますし、いつかは自分の国に帰ることができたらと思っています」
ミネアと黒髪の少女が雑談を始める。
少女は名前を花怜と言い、年齢は15歳くらいなのだそうだ。
ミネア達のおしゃべりを見ていて数分後、村長が戻って来る。
準備が終わったみたいだ。
「お待たせしてしまい、申し訳ございません。宿の準備の方が終わりましたので、早速ご案内させて頂きます」
◇
渡り廊下を抜けた先の部屋の一室。
ここで俺達はしばらく過ごすことになるようだ。
「それではごゆっくり」
村長が部屋から出る。
「それじゃあ、先に温泉行ってくるからよろしく」
ミネアは早速部屋を出ていく。
相変わらずの自己中を発揮していた。
せっかくなので、一息していこうと、俺達もそのまま温泉に入ることになった。
◇
中は宿の外見とは裏腹に、緑の温泉が綺麗な白色の石で敷き詰められた浴槽に流れる。
「ふぅー。やっとついたな」
「本当だな。アレックス、ここ入れ」
「うん。、熱!」
「どうした、冷ますか?」
そう言ってアレスは俺に冷水を掛ける。
「アレス、ちょ! アババババ」
流水に体が触れた途端、左半身が麻痺する。
そういえば吸血鬼の特性上、俺の半身は流水に弱いということを忘れていた。
前にも同じような失敗をしたばかりだったのだが……
「どうした? アレックス」
「アレス、吸血鬼だから流水に弱いんだぞ」
「あぁーなるほど、面白いな」
「アババアババアバァー!(感心してる場合じゃないって)」
◇
温泉では酷い目に逢った。二人とも面白がって水を掛けてくるので、まともにリラックスできず、さっきよりも疲れた状態で渡り廊下を歩く。
それにしても、水は痺れるがお湯は何も無いのはなぜなのだろうか? そんなことを考えていると、先ほどの少女、花怜とばったりと会ってしまった。
「こ、こんにちは」
なぜか声が震える。
「こんにちは、君もミネアさん達と一緒に来た子だよね」
「そうだけど」
すると、花怜は俺の身体の左側を指差しながら、
「そういえば君、何で左だけ包帯で隠してるの?」
「それは、ちょっと……」
「そのことは言えないんだね。答え難いこと聞いてごめん」
「全然。別に大丈夫だよ」
二人の間に気まずい空気が流れる。
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