ケーキは女性にとって誘惑ものらしい
よりにもよってレオンハルト様の側近たる一人に、わたくしの情けない姿を最初から見られていたなど腹ただしいものはなく、ワナワナと震えていれば
「おや、肩を震わせて···どうしたのかな。」
クスクスと楽しげにこちらの反応を伺い見ているマティアス様に、性格の悪さが垣間見え口の端が引きつく
「······わかってて言ってるなら嫌みですわよマティアス様。」
じと目で睨みつけると、何故かマティアス様は···いやはや、これはまた珍しいと興味深げに見られて
ズイッとわたくしに顔を近づけてくるものだから、咄嗟に後ろに引くも顎に手をあてて観察される。
「ほうーやはり、あの方達の計画は上手く言ったわけですか。」
「え?」
「ふっ、なんでもない···こちらのことだ。それよりもこれから暇ならちょっと付き合ってくれないか?」
「一人で納得されるのも、急な話題変換は癪ですが、貴方に付き合うのろくでもなさそうなのでお断りします。」」
「オヤオヤ即答かい、せっかくレオンハルト殿下の頼みを引き受けてくれたかんだろうから、俺の店でケーキの食べ放題で労ってあげようと思ったんだがな。」
チラッとわたくしを見て、あー残念だね、最近の新メニューの感想聞けると思ったのだがなー
と誘惑な言葉を並べられてくる。
ゴクリと喉が鳴ってしまう、マティアス様の家はレストランや喫茶店、飲食物などを系列チェーン店の経営をしていて、特にいま力を入れているのがデザートだったりするものだから
女性客に人気が高くケーキの新作などそうそうに食べられるには難しく、早朝から並ばないといけなかったりする。
だからたまーに生徒会のお疲れ会で、マティアス様がお店で食べさせてくれていたのだ。
まあ新作にケーキの感想を書くのが条件だったけどね。
でも今回は食べ放題とか絶対に罠よね、何か裏が···うっ、けど、ケーキの新作···ゴクリ
「さあーどうする、今回はパティシエの腕を奮ったチョコレートケーキで、中身のクリームはあっさりながらの甘味と苦みが緩和し、絶妙のハーモニーが口の中に広がっていき···」
などとケーキの特徴と味わいを説明し誘惑するせいで、口の中が甘味を欲して、つい想像してしまい
目の前に餌をぶらさげられた犬の如く、気がついたときには
「連れってくださいませ。」
と返事をして、マティアス様の手にお手をしてハッと我に返ったときには、目の前にはマティアス様の不敵な笑みだけがありました。
「では···いきましょうかヒルメリア嬢。」
「うっ、はい。」
こうしてわたくしは、マティアス様のケーキ誘惑攻撃に負けたのでした。




