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第54話 「2日目15時35分」

20170926公開


 前のめりに倒れたクマもどきから急速に生体エネルギーが抜けて行く。

 俺は距離を置いて、その様子を見詰めていた。


 念の為に、細く収束させたブレスを首筋に撃ち込む。

 万が一、死んだふりをしていても、生きている限りは反射的な反応が出る筈だ。

 本当なら胸の真ん中の奥側に有る心臓と同じ機能も持っている器官に撃ち込んだ方が確実だが、毛皮にした時に穴が目立つ位置に開いてしまうから避けた。

 まあ、誰が毛皮になめすかは未定だが。

 

 やっと、クマもどきが死んだ事に確信を得た途端に、すとんと腰が落ちた。


 見るからに堅そうだった剛毛も、生体エネルギーが抜けると、普通のゴワゴワとした毛にしか見えない。

 うん、とてもではないがモフれそうにない。

 第一、臭いんだ。

 戦っている間はずっと気にしない様にしていたが、かなり獣臭い。

 地球の野獣とは違う獣臭さだった。


 そう言えば、クマもどきに関しては本能がなんの反応もしていなかった。

 ひょっとすれば、滅多に遭遇しない相手なのかもしれないな。

 それにしても、クマもどきが野生の種族で良かった。

 俺は第1次、第2次の2度の『召喚災害』から生還した『被災者』が齎した情報を持っていた。

 それにより事前に戦いの組み立てを考える事が出来た。勝因の1つだ。

 それに対してクマもどきは初見で俺に対峙した訳だ。

 俺の種族の得手不得手も分からずに対峙したせいで、攻略の足掛かりを俺に与えてしまった。

 もし、俺にブレスという飛び技が有ると知っていれば、最初から生体エネルギーを全開にしていたかもしれない。

 そうすると、俺の奇襲にも似た剛毛剥がしは成功せずに五体満足のままのクマもどきを相手しないといけなかった。

 その状態で勝つ為には、無理をする必要性が出てくる。

 転生した後の最初の頃は命懸けで足止めがせいぜいだと考えていた。ブレスでさえ足止めにならないと考えていた程だ。

 言い換えれば勝算は薄いと考えていた訳だ。

 そう考えた理由の1つが、攻守で劣る俺がやり合うには無理をせざるを得ないと考えたからだ。

 無理をするという事は、当然の様に隙が出来る。

 ボクシングでは1発のパンチも受けずに勝つ事は有り得ない。

 相手を完封して完勝の様に見えてもパンチを受けている。

 ブロックも、パーリングも見方を変えればパンチを受けているからだ。

 たった1発の攻撃が掠るだけで致命的な破壊力を齎す相手に隙を与えればどうなるか?

 想像力がそれほど無くても、勝つ事は至難の業と判断出来る。


 俺がボクシングという格闘技を使えた事も勝因だろう。

 実際に対峙するまでは、接近戦では不可視の爪で攻撃する気だった。

 だが、実際に見て、とてもでは無いがクマもどきの装甲を突破出来そうに無い事が分かった。

 どう見ても爪が筋肉層まで届きそうに無かったからだ。

 剛毛が10㌢くらいの層になっていて、20㌢の長さの爪をもってしても皮膚を突破した後の脂肪層で止められる。

 いくら脂肪層を斬り裂いても動きを止める事は出来ない。筋肉層に届かせない限りは・・・

 距離を取った状態でも効く攻撃手段が無いのに、接近戦でも攻撃手段が無いという事態に陥るところだったが、ボクシングをしていたおかげで辛うじて攻撃手段が残された。

 まあ、不可視の爪を、クマもどきの生体エネルギーを対消滅させる位相に変換して拳に纏うなんて無茶をする羽目になったが・・・


 でも、これでクマもどき対策は格段の進歩を遂げた。

 不可視の爪でやった位相変換をブレスでやれば、簡単に剛毛の層を突破出来る。

 後はやり放題だ。

 



「お父ちゃん無事ー?」 

「おとーちゃん! 大丈夫なの!?」


 どれ程経ったのかも分からないが、今1番聞きたい声が背後から聞こえて来た。もちろん2番目に聞きたい声は小百合の声だ。


 愛娘まなむすめたちの声に気力を復活させた俺は腰を上げた。

 振り返ったら、楓と水木だけでなく、かなりの人数が2人の後ろに続いている姿が目に入った。

 右手を上げて、2人に応えた。

 娘たちが走るスピードを上げた。

 生体エネルギーを活用出来る様になったんだな・・・



「うわ、でか!! よくこんなのに勝てたね、お父ちゃん」

「これは想定外だよ・・・ もう、怪獣と言ってもいいかも?」


 恒例の抱き付き攻撃の後、2人はクマもどきの死体を見た途端に言った。

 2人とも純粋に驚いている。

 その頃にはみんなも追い付いて来たが、ほとんどの人間の表情には恐怖が混じっていた。 



 クマもどきに対する恐怖も有るが、半分以上は俺に対する恐怖の様に感じた・・・

 


 



お読み頂きありがとうございます。

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