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第51話 「2日目15時15分」

20170913公開


 政府発行の小冊子に載っていたクマもどきは、体長は約4㍍と書かれていた。

 だが、30㍍先で立ち上がって俺を見詰めているクマもどきはどう見ても5㍍を超えている。

 俺の何人分になるのだろう?

 ワザと身体強化を掛けずにやや左側斜めにダッシュしながらブレスの準備と簡単な計算をする。


 同一サイズ時の体重差を3倍に仮定して身長差を4倍に仮定すると3掛ける4の三乗だから192倍か。

 普通に考えて、勝てる訳が無い。

 人間だった頃の俺の身長が180㌢だったが、その1/4と言えば45㌢だ。しかも1/3の体格と言う事は骨と皮だけになる。

 そんな相手に負ける訳がない。


 距離が20㍍になった段階で、静観していたクマもどきがやっと俺に向き合う様に身体の向きを変えた。

 あと少ししても無視されたらブレスを使ってでも俺に意識を向けさせる予定だったが、これで一安心だ。

 ここで駄目押しの肉体強化を発動する。

 いきなり俺のスピードが上がった事で俺の脅威度が跳ね上がり、クマもどきは自分の判断が正しかったと考えるだろう。

 当然、遠ざかって行く山口さんたち3人の事は頭から抜ける。少なくとも俺を無視して追い掛ける事は避けるだろう。


 完全に俺に意識を集中した事を確認した瞬間に強めにブレスを2発連続に放つ。これ以上の連発はさすがに威力が落ちる。

 森の中に生息する種族にはブレスを使える種族は居ない。

 多分、初見だろう。先制攻撃でクマもどきにダメージを負わせる事が出来れば、戦いを有利に持って行けるが、ヤツの身体強化はさすがに強い。

 クマもどきが避ける間もなくブレスが右手の上腕部に連続で命中するが、やはりあまり効いていない。

 命中した箇所の剛毛が円形に焦げただけだ。

 そして、なんらかの攻撃を受けたと判断したクマもどきが更に身体強化を発動した。

 うん、凄いわ。

 俺のよりも濃い生体エネルギーが体毛1本1本にまで行き渡って、まるで追加装甲だ。

 意味も無く、昔観たガ●ダムに出て来るアーマード何とかを思い出した。

 まともにやり合っても勝てる気がしない。

 という訳で、長丁場ながちょうばになる覚悟を固めた。

 それに、攻略の取っ掛かりは作ったので、腰を据えて臨めば何とかなるだろう。


 10㍍を切った辺りでヤツが俺目掛けてダッシュを掛けた。

 それを躱す為に進路を右2時の方向に変えたが、危うく左手の薙ぎ払いが当たりそうだった。

 交叉した直後に後ろを振り返ってブレスを放った。速射の為に威力は乗っていない。

 後頭部に命中したが、最初の2発と違って剛毛を吹き飛ばす事も出来ずに散らされてしまった。

 まあ、効果を得る為でなく、俺に意識を向けさせ続ける為なので効果が無くても構わない。


 ここまでで2秒も掛かってない。

 タフで濃い戦いになる予感しかしない・・・


 再び対峙したが、位置関係は俺が森を背にしている。

 後頭部への捨てブレスが決め手になったのか、クマもどきの意識は完全に俺に向いている。

 山口さんたちは未だ30㍍先を小走りで逃げている最中だ。

 このままクマもどきが意識を彼女らに向けない様に攻め続けるしかないので、ジャブの代わりにいきなりレーザーもどきを顔に浴びせた。

 効果は思ったよりも無かった。

 何回か目に当たった筈だが、視力を奪った形跡がない。

 うーん、身体強化の効果で、眼球の表面で散らされているのだろうか?

 レーザーもどきが効かない事が判明したので、今度はブレスを3連発で顔に放つ。

 今度は多少の効果が有った様だ。

 軽くノックバックしただけだが・・・

 まあ、時間稼ぎに使えるだけマシか。


 クマもどきが動こうとする度にブレスを放って、動きを止めさせる作業を続けた。

 高校時代にボクシングをしていて良かった。

 少なくとも、相手の機先を制しているのは経験が有ったからだ。

 とっくに山口さんたちの気配は感じられなくなっていた。

 


 そして、クマもどきが遂に切れた。


 前哨戦が終わった・・・

 

  


お読み頂きありがとうございます。

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