第4話 「25分後」
20170705公開
20170716セリフ表記変更
≪でも、どうしておとうちゃんだとわかったんだ? ぜんぜんちがうかおやすがたなのに?≫
俺たちは1列に並んで、草原を歩いていた。2人の愛娘は俺の後に付いて来ている。時々、俺は後ろを振り返る。特に変化は無い。
方向は、森から離れる様に西に向いている。
異世界も地球と同じ様に東から太陽が出て、南天を通って西に沈む。この事から自転が逆で南半球という可能性は有るが、多分『召喚』先は北半球だと推測されている。
太陽の高さから大体の時間を推測は可能だし、棒を地面に差して動く方向も確認した。
今向かっているのは西で間違いない。
西に向かって歩いている最大の理由は、小冊子に載っていた危険生物は森の中に居る方が多いからだ。
万が一の為にも離れた方が良い。
≪だって、おおきなねごとで、ずっとかえでとみずきのなまえをよんでたもん≫
≪うん、ずっと。あと、おか・・・≫
≪そうか、おぼえてないけど、ずっとおまえたちのなまえをよんでたのか・・・≫
水木が言い掛けた言葉はきっと『お母ちゃん』だろう。
妻が召喚に巻き込まれた当時の事は、今でも鮮明に覚えている。
最初に警察から連絡が有った時に、『何言ってんだ、こいつ?』と思った事も鮮明に覚えている。
その後、妻がレジのパートで働いていたホームセンターの店長からも電話が入って、初めて妻が超常現象に巻き込まれたんだと実感した事も鮮明に覚えている。仕事で昔付き合いが有ったその店長は絶対にふざけた事を言わない人だと知っていたからだ。
娘たちが通っていた小学校に連絡を入れた時に、最初に対応した知らない先生がイタズラ電話だと思ったせいで、何度も同じ事を説明していた時に突然怒りが込み上げて来て、声を荒げて今すぐにテレビを付けろ、と言った事も鮮明に覚えている。
あちこちに連絡を入れて、小学校まで車を運転している最中、ラジオで流されていた緊急特番のアナウンサーが読み上げていた内容も鮮明に覚えている。
だが、校長室で俺の出迎えを待っていた楓と水木を見た瞬間の2人の顔は覚えていない。
気が付けば俺にしがみ付く2人を抱き締めて、同じ言葉を繰り返していた事は覚えている。
『お母ちゃんは大丈夫だ。きっと還って来る。きっとまた会える』
なんだ・・・
これはチャンスなんだ・・・
よく考えたら、還って来ないのなら迎えに行けばよかったんだ・・・
何故、『「召喚」されてしまった時に注意すべき10項目』を暗記する程熟読したのかは、きっとチャンスを無駄にしない様にと無意識に考えていたからだ・・・
俺は『召喚』された事に心から感謝を捧げた。
お読み頂きありがとうございます。
冒険はどこ行った?(^^;)
それはともかく、1000字くらいって書き易い長さですね。
帰宅後1時間15分くらいで書き終えました。
朝書いて、夜書いて、1日に2話更新したのは初めての経験かも知れません(^^)
問題はノリだけで書いているので、矛盾がどこかで出かねない恐怖に襲われている事だったりする今日この頃(^^;)