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第40話 「2日目4時30分」-6月14日 水曜日-

20170816公開


 半分寝て、半分起きた状態で身体を休めていたが、そろそろいい時間だろう。

 日の出は確か日本時間の5時くらいだった筈だから、あと20分かそこらくらいで明るくなりだす筈だ。

 もっとも、昨日の落日の様子を考えれば、日の出まで明るくならないかも知れんが・・・

 目を開ければ、山本氏が立ち上がって森の方向を見ていた。

 夜空の星々に照らされて、森に向けている表情まで分かった。

 彼は視線を長い間動かさない様にしていた。

 周辺視野を使った監視の方が集中力が続いて精神的な負担も少ないと何かで読んだ気がする。

 山本氏も知っているのだろう。


「おはようございます」


 山本氏に声を掛けると、ちょっとビックリした後でこちらに視線を向けて挨拶を返された。


「おはようございます。でも起きるには早過ぎませんか?」

「朝食用のトリケラハムスター狩りは遠出しようと思ってね」

「そうですか。まあ、資源の枯渇は避けるべきでしょうね」


 いくら生息数が多いと言っても、トリケラハムスターも資源と考えれば、ゲームなんかと同じ様に考え無しに狩ればすぐに枯渇するのは当たり前だ。

 今後は狩るエリアをコントロールする必要が有る。

 その辺りの思惑を直ぐに理解するのだから、山本氏が一緒に『召喚』された事は不幸中の幸いと言って良いと思う。

 その思いが顔に出ていたのだろう。


「宮井さん、嬉しそうですね?」

「いや、不幸中の幸いと言う言葉を実感したんでね」


 山本氏がポメラニアン顔で首を捻った。

 ちょっとだけおしゃべりを続ける事にした。


「それはそうと、この身体はかなり高性能なので時速50㌔くらいは軽く出るんだ。10㌔先まで10分ちょいで行けちゃう。遠出も苦にならないのは助かるよ。まあ、本気を出せばもっと速く走れそうだけどね。でもあまり慣れ過ぎたら、元の身体に戻った時に落ち込みそうだ」 

「ははは・・・」


 山本の笑い声が少し乾いている気がするが、気のせいだろう。

 もっとも、ポメラニアンもどきも、能力が開花すれば時速50㌔くらいの速さは出せる筈だ。

 顔を洗うのは帰ってからにしよう。

 今、顔を洗っても汚れてしまうし、我が家の朝の歯磨きは朝食後にする習慣だ。


「さあて、そろそろ行く事にするよ」


 俺は靴を脱いで靴下をその中に突っ込んだ。


 現在24人が居るから、1人平均400㌘として4頭も狩れば10㌔の肉が取れるから十分だろう。

 だが、5頭狩る予定だ。1頭分の6人前は森で救出した『被災者』用だ。

 狩る事に不安は無い。むしろ運搬の方が問題だろう。

 背負子しょいこを作るべきかな? 

 どんどんとやるべき事、作る物が増えて行く。

 お金を出せば大概の物が簡単に手に入った日本がいかに便利だったかを実感する。

 取敢えず、小川に行って、2㍍くらいの長さの棒を拾って来る。

 ついでに、河原に転がっている岩に絡まっていた蔦つたに似ている植物を引き千切って強度を調べてみた。紐代わりに使えそうなので、棒に巻き付けておく。


 エアーズロックもどきを遥かに越えて、10㌔先まで来たが、平原にトリケラハムスターの姿は無かった。気配察知でも土の中だ。

 何となく予想していた通り、夜が明けるまではトリケラハムスターは巣穴の中で過ごす習性を持っている様だった。

 ヤツラが動き出したのは日の出から5分以上経ってからだった。

 待っている間に、平原に転がっていた60㌢以上の大きさの石を2㍍離して2つ並べて置く。

 その上に河原で拾って来た棒を渡して簡単な物干し竿にしてしまう。

 ブレスで仕留めれば簡単だが、胴体に当たれば食べられる部位まで吹き飛ぶので、地道に接近戦を仕掛けて首を刎ねて行く。血抜きもさっき作った物干し竿に吊ってしばらく放置すれば簡単だった。


 江戸時代の物売りの様に、棒に5頭のトリケラハムスターをぶら下げて帰途に就いたのは出発してから1時間後だった。

 縄張りを守る為に突進して来ようとするトリケラハムスターに対しては、出鼻を挫く様にブレスをお見舞いして牽制した。

 昨日と違って、体内のエネルギーが結構回復しているおかげで、気兼ねなく撃てる様になったのがありがたい。これなら森の中でもエネルギー切れを心配しなくても良さそうだ。

 とはいえ、森の中では近距離での戦いになるだろうから、さほどブレスを撃つ機会も無いだろうが・・・

 ん? 近距離・・・ 火力・・・

 何か有った様な気がする・・・

 ショットガン!

 そうだ、何かで読んだが、近距離での面制圧をするのにショットガンは最適だと書いていた。

 しかも素人が的に命中させるにもおススメとも書いていた。

 思わず立ち止まってしまった。

 どうせならと、試し撃ちもしてみる。

 顔の前の増幅層はそのままに、収束層の絞りを開けて撃ってみるとブレスが拡散した。

 何回か試射をして、扱い易い収束率を割り出した。

 結果としては、10㍍先までならトリケラハムスターを仕留める事が出来る威力の散弾銃もどきのブレスが完成した。



 でも、思わず拡散波●砲と言いたくなるのはどうしてだろう?


 



お読み頂きありがとうございます。

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