第3話 「15分後」
20170705公開
20170816セリフ表記変更
俺たちが今居る場所は、足首まである草で覆われた草原の端だった。
すぐ傍には、深く暗い森が広がっている。
政府発行の小冊子に書かれていた様に、意外と地球の植生に近い。
さあて、周辺の危険性と、『召喚』に巻き込まれた日本人が居ないかを確認しないといけないが、その前にしなければならない事が有る。
≪かえで、みずき、いたいところはないか?≫
≪うん、かえではだいじょうぶ! それより、おとうちゃんのほうがいたそうだったよ?≫
≪わたしもだいじょうぶ。おとーちゃん、ほうんとうにだいじょうぶ?≫
外見は猫娘に変っているし、発声もおかしいが、相変わらず優しいな、俺の愛娘たちは!
≪おとうちゃんは、もうだいじょうぶだよ。でも、ふくをどうしようかな?≫
取敢えず、自分の顔や頭、身体を手で触ってたりして調べた限り、俺も猫もどきに転生している事は分かった。
多分、娘たちと同じくらいの年齢だろう。
異世界は危険な場所だと言う事は、小冊子を熟読したり、独自に調べたりで十二分に分かっている。
未だ実感する様な経験をしていないだけで、日本と違ってここは一歩間違えれば命をあっさりと手放させられる場所だ。
だが、それでも、文明人の日本人としては、裸でウロウロしたくない。
娘たちの情操教育上も喜ばしくない。
救いと言えば、娘たちが元の姿や身長と大して変わらない転生をした為に、今着ている服がそのまま着られる事くらいか?
改めて娘たちが転生した姿をよく見ると、2人とも面影が残っていた。
双子だから他人が見ると違いが分からないと言われるが、俺には分かる。
楓はどちらかと言えば強気で元気で素直だ。それはコロコロ変わる表情にも表れている。子猫の様な印象の顔に転生したが、うん、それでもやはり可愛い。
水木はやや拘り性だが引っ込み思案だ。楓の半歩後ろを歩くが、他人には優しい性格だ。楓と同じ顔に転生したが、それでも俺を心配しているのがよく分かる。うん、やはり可愛い。
第一、俺は猫が大好きなんだ。周りには犬派が多かったが、何と言っても猫の方が良い!
結局、俺は、下はブリーフを履き、上は膝まで覆う白い丸首シャツ、足元は中に草を詰めた革靴、背中には畳んだスーツとズボンとカッターシャツをベルトとネクタイで括りつけると言う締まらない姿で動く事にした。
手には頑丈そうに見える60㌢くらいの木の棒だ。
初代ドラク●の主人公よりマシとは言え、かなり貧弱な初期装備としか言えないな。
お読み頂きありがとうございます。
冒険開始です(^^)