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第34話 「10時間25分後」

20170806公開


「一応、森から野生の種族が忍び寄って来ないかは自分が警戒しておきます」


 『大人たちの話し合い』は俺が口火を切った。


 俺の言葉を聞いて、今気付いたという風に全員が森の方を見た。

 多分、多少は夜目が利くポメラニアンもどきの、室井静香さん、金井和美さん、吉田水咲さん、山本邦夫氏、笹本晴美さん、村田郁子さんの6人は森が在るという事が分かるくらいには見えるだろう。

 だが、鷹もどきの佐藤珠代先生と黒田和也氏は碌に見えないと思う。

 せいぜいがシルエットが見える程度だろう。


 12人の子供たちを守る大人たちは俺を入れて9人居る。

 だが、確実に戦力として計算出来るかとなると、一気に心許なくなる。

 はっきりと言って、楓と水木の方が戦力としては上だ。

 沙倶羅ちゃんが更にその上を行く。


「ついでに言うと、この場所の近くにトリケラハムスターの気配は有りません。油断は出来ませんが、縄張りから外れていると思います」


 森から目を離して、俺を見た全員がほっとした雰囲気を醸し出した。

 今後の事を考えて、主導権を握る為に俺は言葉を続けた。


「最初にみなさんの了解を得たいのですが、自分が話し合いの司会と言うか、進行をして構いませんか?」


 ほんのしばらくみんなが視線を交わしたが、真っ先に賛成してくれたのは黒田氏だった。


「宮井さん、俺は構わない。むしろ、宮井さんに司会をして貰った方が話がスムーズに進むと思う」

「そうですね。これまでの事を考えると、宮井さんにお願いした方が良い結果になると思います」


 黒田氏に続いて山本氏も賛成してくれた。


「うちも宮井さんにお願いしたいで」


 何故か右手を挙げて金井さんが発言した。

 発音も知らない間にスムーズになっている。

 きっと、俺が居ない間に色々と精力的に動いてくれたのだろう。

 その証拠にトラのイラストが少々バテている気がする。


「そうですね、考えたら、楓ちゃんと水木ちゃんのお父さんが居なかったら、ここに居る全員が無事では済まなかったと思います。改めてお礼を言わせて下さい。子供たちや私たちを助けて頂き、本当にありがとうございました」


 佐藤先生が律儀に頭を下げた。

 鷹頭だが、その感謝の気持ちは伝わって来た。

 みんなも頭を下げた。

 ここまで感謝されるとは思っていなかったので、思わず手を振りながら慌てて言った。


「いえ、偶々、強い種族に転生出来ただけです。みなさんと同じ種族だったとすれば、何も出来なかったと思いますよ。ですから、頭を上げて下さい」


 全員が頭を上げてくれた段階で話を続けた。


「今後の予定を考えたのですが、明日は行方不明の子供と親御さんを探そうと思います。最初に平原をもう一度探して、居なければ森に入ろうと思います」


 その言葉に反応したのは、森からの視線に恐怖を感じた先生、村田さん、笹本さん、吉田さんだった。


「それは危険じゃないですか?」

「そうですよ。あの森は危険だと思います。今思い出しても鳥肌が立って来ました」


 先生と村田さんが心配そうに発言した。

 笹本さんと吉田さんも言葉には出さないが、同じ気持ちなのが分かった。


「ならば、尚更です。早く助けないと、生き残れる人も生き残れないでしょう」


 山本氏が遠慮がちに発言した。


「僕が知っている限り、森の中はかなり危険だと言われていた筈です。ヒョウみたいな奴には、先に『召喚』された人がかなり殺されたというのは有名な話ですよね?」

「ええ、その通りです。その他にも狼もどきが数と統率が利いているので危険な存在ですし、クマもどきは森に潜んでいる野生の種族では正真正銘の最強種族でしょう」


 俺の言葉を聞いて、黒田氏が首を傾げながら発言した。

 一瞬、傾げ方が本物の鷹の様だと思ったが、それは内緒だ。


「それを知った上で森に入るのは2次災害の恐れが高いと言わざるを得ない。それでも行くのか?」


 一瞬、『それでも逝くのか?』と謎の変換をしてしまった。

 『無茶しやがって』という言葉も脳内に流れたが、何故なんだろう?


「簡単だ。この猫もどきは強い種族だからだ。夜になって本能が本格的に目覚めたおかげで、大体の能力が分かった。最初はクマもどきには勝てないと思っていたが、戦い様によっては十分に勝ち目も有る。まあ、実際に戦えば、命懸けなのは変わらないがな。だから、俺が助けに行くしか選択肢は無い」

 

 正直な気持ちだった。

 

 


お読み頂きありがとうございます。

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