第26話 「7時間25分後」
20170725公開
「このお肉、おいしい!」
「ほんとだ! おなかぺっこぺっこだったから、良かったぁ」
「でも、なんの肉だろ?」
「うーん、おいしいから、きっとこーべぎゅーってお肉だよ」
「あ、それ、知ってる! たかいんだよね。ママがいつか食べたいって言ってた」
「これがこーべぎゅーかぁ。おれ、はじめて食べた」
スマン、それ、神戸牛どころか、巨大ハムスターみたいな奴のお肉だ。
まあ、美味しいお肉ということは間違い無い。生もそこそこ行けるしな。
少なくとも、焼いた肉は俺が有名な専門店で食べたA5のステーキよりも美味しかったし。
そういえば、空腹具合がそろそろヤバいな・・・
トリケラハムスターや黒ポメ人に備えて、警戒してくれている娘たちや沙倶羅ちゃんもそろそろお腹がすいて来ているだろな。
晩ご飯は優先的に回してもらおう。3人はそれだけの働きはしている。
それ位の優遇を勝ち取る事は、連れ回している俺の責務だろう。
合流出来た3人の名前は、高橋歩君、笹本小春ちゃん、藤田あかりちゃんだった。
今、その子供たち3人は俺たちが持って来たお肉を食べている。
歩きながら食べさせても良いのだが、どうしても注意力が落ちるし、いざという時に反応が遅れる。
せっかく、ここまで無事だったのだ。僅かとはいえ危険性を減らす為にもここで食べさせている。
ちなみに3人とも茶色いポメラニアンもどきだ。
合流した時にはもう普通に話していた理由は、いまのやりとりを見る限り、転生後から結構話し合っていたという気がする。先生が来た途端に泣きだした位だ。心細さを話す事で紛らわしていたのだろう。
親が授業参観に来ていたのが小春ちゃんとあかりちゃんの女の子2人だった。
これで、子供たちは14人の生死が判明した。生き残っているのが13人で、孝志君だけが死亡していた。行方が分からない子供は15人だ。
親の方は、生存5人、死亡1人、行方不明13人だ。子供と合わせて28人がまだ発見されていない。
平原に出現してくれていれば、生き残っている可能性は上がるが、もし森の中だとするとマズイ。周りの環境が厳し過ぎる。
クマもどきは確実に居るだろう。
だが、ヒョウもどきまで居ると本当にマズイ。コイツはヒョウに似た顔をした森の待ち伏せ番長だ。
体長が2㍍くらいと、クマもどきに比べればサイズは小さいが、瞬発力が高いらしい。
それに何がヤバいかと言えば、自衛隊の迷彩服に似た毛皮を身に纏っている事だ。濃淡が有る2色の緑色と茶色の毛が作る迷彩柄のおかげで、森の中では驚くほど姿をくらませるらしい。
しかも、狩りも上手いと来ている。
トリケラハムスターには、先の2回の『被災者』がかなりの数の負傷者を出したが、コイツに狙われた場合、かなりの確率で捕食されたそうだ。
5分ほどで子供たちはお肉を食べ終わった。
まだまだ食べたいだろうが、それは拠点に行ってからのお楽しみだ。
帰路ではトリケラハムスターを3頭狩る予定だったが、4頭くらい狩っておこう。
3頭でも足りるだろうが、こうもお腹がすくと、多目に狩っておいた方がいいだろう。
「食べ終わったから、そろそろ出発するよ。忘れ物は無いね?」
「はーい」
助けが来た事と、お肉を食べた事で元気になったのだろう。
3人が元気に返事をした。
帰りは、ほんの少しだけ危惧していた黒ポメ人との再遭遇も無く割と平穏だった。
狩りの成果も大小合わせて5頭のトリケラハムスターだった。
これで、今夜の食事は十分に賄えるだろう。
問題は、先生が帰って来ていない事だった。
お読み頂きありがとうございます。




