表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/133

第17話 「3時間45分後」

20170716公開

 ドラゴンは、茶色い毛色のポメラニアンもどきと白い毛色のポメラニアンもどきの2人を、木を削って作った2㍍くらいの槍を持った黒い毛色の5人のポメラニアンもどきから守る様に威嚇している。両者は3㍍ほど離れている。


 で、どっちに味方すべきかはすぐに分かった。

 服装を見れば一目瞭然だ。

 2人組のポメラニアンもどきは現代的な服装をしている。

 1人はトラの顔が描かれたシャツを着ていた。パンツルックだが、よりにもよってヒョウ柄だ・・・

 最初見た時は目を疑ったものだ。授業参観に着て来る服装では無いと声を大にして言いたかったくらい印象的だったので、人間だった時の顔も思い出していた。

 まあ、なんだ、『大阪のおばちゃん』と聞いて、思い浮かべる顔で正解だ。

 でも、今はポメラニアン顔だ。運命の皮肉を感じる。

 もう1人は上流階級な御婦人が着る様な装いと言って思い浮かべる様な服装だ。確実にブランド品だろう。上品な気品が漂っている。本人も毛並みの良い白い毛で、優雅なラインを描くフリルが妙に似合っていた。

  

 対する5人組のポメラニアンもどきの服装の第一印象は縄文人か弥生人が着ていそう・・・だった。

 上は貫頭衣だ。腰の辺りをヒモで括っていて、下は柔道着の様な絞らないズボンという感じだ。

 繊維は麻の様に見える。染色技術が無いか未発達なのだろう。くすんだ茶色だ。

 だが、黒い毛の色と合わさって、ポメラニアンもどきらしからぬ精悍さも感じる。

 まあ、ポメラニアンも野生化すれば印象が変わるだろうから不思議では無い。 


 現時点での最大の問題は、追い払うだけでいいのか? だ。


 この身体は『彼ら』を殺す事に良心の呵責を何も感じていない。本能がただ単に美味しくない食糧としか認識していない。猫もどきは本来、殺す事に躊躇いを持たない種族なのだろう。

 実は、理性から導き出した答えもそれに近い。

 5人の内、1人でも逃がすと、俺たちが居るという情報が漏れる。

 それがどの様な反応を起こすかが全く読めない。危険を冒さないのなら口をふさぐ選択肢も有る。

 悩む時間が惜しかったので、5人を活かす理由をでっち上げた。

 ふう、と小さく息を吐いて、気付かれていない事を活かす為に先制攻撃を仕掛ける。

 威力が低い方のブレスを強めに発生させて、5人のポメラニアンもどきが持つ槍を断ち切る様に上下に薙ぐ。

 威力を上げた事で、木製の槍から瞬時に煙が出たが、さすがに一瞬で斬り落とす程の火力は無理だった。

 更に、威力が高い方のブレスを両者の間(と言っても5人組に近付けたが)に3発立て続けに放った。

 その段階でやっと俺に気付いたのか、5人組がこっちを見た。

 途端に、何かを叫んで、見事な引き際としか言いようが無い位に一斉に逃げ出した。

 残して来た7人とは違う方向(南西)に走って行ったし、今後の為に追撃はしない。


 しかし、どんだけ、猫もどきは恐れられているんだ?

 俺を見た瞬間に逃げを選んだのだから、天敵みたいなもんなのだろう。


 ついでに丘の上の見晴らしを利用して、他の『被災者』の手掛かりが無いかを見渡したが、東南東の方向に、少し離れているけど赤い何かを見付けた。

 佐藤先生に気付いてもらうまで両手を振って、気付いてくれた後で赤い何かの方向を指差した。

 上空からも確認出来たのか、先生は大きく頷いてから進路を変えた。

 そこまで見届けた後で、俺は逃げて行った5人のポメラニアンもどきの逃走方向を確認し続けた。

 ヤツラが向かった先を辿る様に視線を動かすと、遠くに原始的な建物らしきものが見えた。

 今はそれだけ分かれば上出来だ。


 知りたかった情報も手に入ったし、俺は丘の下に居る相手に脅威を与えない様に両手を上げながら丘を降りた。

 その間、俺の目はドラゴンを観察していた。

 小冊子に載っていない種族だけに、猫もどきと同様に希少種なのかも知れないな。

 遠目にはドラゴンそのものに見えたが、近付くにつれてマンガや映画で見たドラゴンと違う部分が目立って来た。

 まず、鱗が生えている訳では無かった。

 意外なほどフサフサとした黒い毛が生えている。ところどころに焦げ茶色のメッシュがトラ柄みたいに入っていた。

 腕は思ったよりも小さい。人間の腕よりは大きいのだが、胴体から尻尾までの造形はドラゴンのイメージのままなので、余計に華奢に見える。ただ、爪は立派だ。鋭くとがっているから武器としては強力な部類だろう。

 こっちを見ている顔は、ドラゴンというよりもニホントカゲだ。

 ドラゴンがバタ臭いソース顔としたら、鱗や毛が生えていない事も有ってさっぱりとしたしょうゆ顔だ。

 顔の後ろに当たる位置に、後ろ向きに5本の5㌢くらいの可愛らしい角が等間隔に生えている。

 何故かティアラの様に見えなくもない。

 黒目勝ちの目と相まって、顔全体の印象は意外と可愛い。いや、かなり可愛いと言って良いな。

 首には赤いスカートが巻かれていた。

 転生前は女の子だったという事だ・・・・・ 

  




お読み頂きありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ