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第107話 「103日目16時25分」

20180704公開


 抜け駆けで先着したかえで水木みずき中井沙倶羅なかいさくらちゃんとの再会を喜んでいると、水木がニコヤカな顔をしたままたずねてきた。


「で、おーちゃん、そこに居る4人はかくしごなの?」


 一瞬、言葉の意味が理解出来なかったが、理解と共に窮地に陥っている事に気付いた。

 水木が言う4人とは、ノナロクラユキルたち4人の猫もどきの子供たちの事だろう。

 その4人は、俺の5㍍後ろで並んで立っている沢田來未さわだくみ君と小室風子こむろふうこ君の後ろに隠れる様にして立っている。

 4人はハッキリと言ってビビっている。

 そりゃあ、そうだ。

 楓たち3人は、森林猿人もりと・さるモドキ草原狼わらかみなどとの実戦経験が豊富な上に、俺同様に技能と能力の開発が進んでいる。

 正直なところ、こちらの世界でのチート級戦力となっている。

 走行能力だけ取っても、自分達では出せない様な速度で走って来たのを見た訳だ。自分たちの親を遥かに超える力を持った、初めて会う同族にビビるのは正常な反応と言える。

 沙倶羅ちゃんに至っては、自分達とは比較にならない大きさだしな。


 いや、そんな事より、この窮地を切り抜けなければ・・・


「い、いや、そんな事無いぞ」


 來未君、ナニ、タノシソウニ、ワラッテイルノカナ?


「どーよーしてる・・・ あやしい」

「いや、本当に隠し子とかじゃないから」

「水木、かくしごってなに?」


 楓が特大の疑問符を頭の上に浮かべながら水木に訊ねた。

 そりゃ、小学3年生なら普通は接する言葉では無い。

 第一、誰が水木に『隠し子』などという言葉を教えた? 我が家族を崩壊させる気か?


「そーぞくもんだいで、サスペンスげきじょうになって、だれかが殺されるおそろしいそんざいね?」


 おい、水木、テレビの見過ぎだ。第一、夜の11時まで起きていなかっただろ?

 最後は疑問形になっているし・・・


「サスペンス劇場にはならないぞ。第一、この子たちはあの山の向こうからやって来たんだからな」

「え、本当?」

「ああ、本当だ。紹介しよう。みんな、こっちに来て」


 そう言って、ユキルたちを呼んだ。

 4人はおずおずという感じで近寄って来た。

 それでもユキルが先頭に立っているのが4人らしい関係だ。

 何気に來未君がそっと背中を押している辺り、流石と言うしかない。

 こういう切り替えの早さは大人でも出来ない人間が多い。


「娘の楓と水木だ。そして、こちらは2人の友達の沙倶羅ちゃん。もしかしてドラゴンは初めて見るのかな?」

≪ナァ≫

「キャー、今、ニャアって言った! ニャアって! めちゃくちゃかわいい!」

≪ニャア。ナァていた。ナァはうんといしょ。ニャアはううんといしょ≫

「ニャアれんぱつ来たぁ! 本当にかわいい!」


 楓が壊れた・・・


「ちがうよ、かえで。ナァとニャアだよ。ね?」

≪ナァ≫

「私は宮井水木、ここのつです。お姉さんの名前はなんというんですか?」

≪ノナロクラユキル・・・ じゅうに≫


 水木の質問にユキルはそう答えると、幼い3人に声を掛けた。

 頷いた3人が拙いながらも順番に自己紹介を始めた。


≪ミラロクリカヌロ、ムッツ≫

≪ミラロクリカナロ、ムッツ≫

≪ミラロクラカミル、ムッツ≫


「えっと、ムッツさんちの子でいいのかな?」


 それまで黙ってやり取りを見ていた沙倶羅ちゃんが首を傾げながら呟いた。

 見慣れた積りだったが、大きなニホントカゲの頭と言う外見で人間臭い仕草をするのを見ると、不思議な気持ちというか、ホッコリとした気持ちになるな。


「違うよ、沙倶羅ちゃん。ムッツと言うのは6歳って事だよ。ユキルのお母さんが日本人なんだ」


 俺は口を挟んで、教えた。

 

「あ、そうなんですか」


 沙倶羅ちゃんはそう言って、頷いた。


「あ、わたし、宮井楓だよ。水木と一緒の9歳だよ」


 楓が復活した。

 でも、何故か右手を上げている。

 そう言えば、授業参観の時も佐藤先生が『分かる人?』と訊く度に全力で挙手をしていたな。

 水木が控えめな挙手だったのとは対照的で、娘たちの性格の違いが出ていてクスリと笑ったものだった。


≪キュウサイ?≫

「えーと、九つってことだよ」

≪ナァ、わかた≫

「最後は私だね。中井沙倶羅、9歳です。さくらと呼んでください。よろしくおねがいします」

≪ヨロシクオネガイシマス?≫

「えーと、仲よくなりたい、ということだけど、わかってくれますか?」

≪なかよし? なかま?≫

「そう、なかよし!」

≪わかた。サクラ、ユキル、なかよし≫


 やばい・・・

 楓では無いが、7人のやりとりが可愛過ぎて顔が緩みまくっている自覚が有る。

 こういうのを『萌え』と言うのだろうか?

 もっとも、俺だけでなく、この場に居る全員が同じ気持ちなのが分かる。

 中でも、來未君などは「たまらん・・・」と言いながら人一倍鼻息が荒くなっている。

 そんな、背景がお花畑の様な空気漂う中、第2次移住組のみんながやっと辿り着いた。


「あー、宮井さんちの娘さんが増えてるやんか! なに、なに、隠し子なん?」


 金井和美さんの声でお花畑は消えた。


「違いますよ、金井さん。事情が有って新和泉で保護する事になった子たちですよ」


 苦笑しながら俺が答えると、金井さんは残念そうな顔で言った。


「残念。リアルサスペンス劇場かと期待して損したで」



 いや、そういう期待はしなくていいからね・・・



 佐藤先生は久し振りに会う本田岳ほんだがく君と近藤太陽こんどうたいよう君の2人を抱き締めていた。

 抱き締められた2人は、照れた様な、嬉しい様な笑顔をしている。

 太陽君もこちらに来てから笑顔を見せる事が多くなっていた。


 彼の笑顔を見る度にやるせない気持ちになる。

 親許を離れた方が幸せというのは、ある意味、人生を歪める様な不幸なのだから・・・・・



お読み頂き、誠に有り難うございます。



 おかしい・・・

 予定では、もっと話が進む筈だったのに、何故か2㌢か3㌢しか進んでいない上に甘過ぎるケーキを食べた気分になってしまった・・・

 あ、タイトルがちょっちだけ変更されています。

 気分と反応次第ではまた変るかも知れません m(_ _)m


 『子猫建国記』なんか可愛くて良くないですか?

 『猫の親子の異世界建国記』もタイトル詐欺ぽくて良いかも(^^)

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