007
諸事情により投稿が遅れた……申し訳ありませんでした。
「何をそんなに驚いた顔してんだ?」
「あー、いや、ステータスなんて聞き慣れない単語が出てきたから……」
記憶喪失という体でいくのでテキトーに誤魔化す。実際ステータスって単語はゲームとかでしか聞き慣れていないし、嘘は言っていない。
「記憶喪失ってぇのは難儀なもんだなぁ……ステータスってぇのはだ、そいつ自身の名前やレベル、能力なんかの情報の集まりだな。
そんで、そんな目には見えねぇステータスを、紙に写す魔道具が冒険者協会には置いてあんだ。どうだ? すげぇだろ!」
「なにそれすごい! すぐにみたい!」
魔道具とかステータスとか正直わくわくする。異世界っぽくてすごく良い! すごく良いよー!
「ガッハッハッ! ちょいと待ってろ、すぐ持ってきてやる」
そう言ってランドさんは立ち上がり、部屋から出ていき、数十秒ほどで戻ってきた。
そして、A4ぐらいのサイズで、かなり厚みのある真っ黒なブロックを、俺の近くの机の上にドンッと音を立てて置いた。
その重くて硬そうな直方体のブロックには短く細い筒がくっついており、その筒はブロックの上面中央から天に向かって5センチほど伸びている。
「これがステータスを写す魔道具だ」
「えっ……」
「なんだぁ? 不満そうだな」
「いや、なんかもっとカッコイイのを想像していたから……」
俺は苦笑いをする。魔道具のカッコイイイメージが崩れた瞬間だった。
「ガッハッハッ! まっ、見てくれはちょいと悪いかもしんねぇがな、これでもなかなか貴重な魔道具なんだぜ」
ランドさんはそう言いながら書き物をしていた机の方に向かい、その机の引き出しからA4サイズぐらいの紙を一枚取り出し戻ってきた。
そして、魔道具を持ち上げてから、紙を机の上に敷いて、その紙の上に魔道具を載せた。
「そんじゃぁ、この魔道具の筒んところに血をたらしてくれ」
俺はそのランドさんのとんでも発言に驚いた顔をする。
「えっ……マジで? 血とかすぐに出せませんが?」
「このナイフでちょっと切りゃぁすぐ出んだろ、ほらよ」
ランドさんはそう言いながら、腰のベルトに取り付けてあるナイフホルダーからナイフを取り出し、俺に手渡してきた。
ザ・異世界、血を簡単に流せと仰る。しかも、ナイフで。
注射とかですらうげぇっとなる俺からすれば、かなりの悪夢的所業だ。
俺は固唾をゴクリと飲み込む。そして、やる以外に選択肢はないという考えを元に覚悟を決める。
「うげ……ぐっ……ええい!」
苦虫を噛み潰したような顔で、ナイフを人差し指の先に押し当て、ナイフを手前に引いた。
切れた指先が熱を持ったかと思えばすぐに痛みに変わり、血がじわぁっと溢れ出てくる。
いったいっ……
俺はその血を筒の中に入れるように垂らした。
「もうそんぐれぇで大丈夫だ、そんなに血ぃ入れても結果かわんねぇよ。ってか躊躇ってたわりにぁがっつり斬ったなぁ。これで拭いとけ」
ランドさんが布を手渡してきたので、それを斬れている指に押し当て、血が流れるのを止める。
もう嫌だ、帰りたい……
「あとぁこの魔道具に魔力を流せばおしめぇだ。さっ、流してくれ」
魔力ってなんですか? ファンタジーですか? ファンタジーでしたね……
「何をポカンとしてんだ? もしかして魔力わかんねぇか? 自分の体に魔力があるのすらぁ感じれねぇか?」
「わからないです……何も……」
「これぁまいったなぁ……まさか魔力すらわかんねぇたぁ……」
「かなり不味い……?」
「まっ、かなり不味いがぁ、なんとかなるだろ、ガッハッハッ」
こいつ! 他人事だと思って! 俺はちょっとイラッとする。
「そんじゃぁ、俺が魔力流して動作させっから、ちょいと待ってな」
ランドさんはそう言って魔道具に手を当てる。
すると、すぐに煙のようなほぼ透明の青白い何かがランドさんの手から発され、それが魔道具に流れていっているのが見え始める。
真っ黒だった魔道具は所々青い光の線が走り、なんだかカッコイイ感じの魔道具へと変貌を遂げていた。
しばらくすると青い光の線は徐々に消えていき、真っ黒なだけの魔道具に戻っていく。
「よし、これでおしめぇだ」
ランドさんは魔道具を持ち上げ、敷いていた紙を手に取り、それを全く見ないまま俺に渡してきた。
俺はランドさんがまずステータスを確認するのではないかと思っていたので、なんで見ずに手渡してきたんだろうなと疑問に感じながら受け取った。
「他人がステータスを勝手にみるのは基本的にぁマナー違反だからな」
疑問が顔に出ていたのか、ランドさんが解答をくれる。
俺は異世界特有のマナーの一つを頭に入れつつ、ステータスが書かれている紙に目を通した。
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Lv2
名前 ルル
種族 吸血鬼【真祖】
年齢 不明
技能
特殊技能
・吸血姫(種族固有)
始まりの吸血鬼であり、唯一の吸血鬼。
孤高の姫はその多種多様な能力を自分自身で見つけ出していかなければならない。
・生活調和の御都合主義(異世界転移特典)
自身が発する言葉や文字、一部概念は捻じ曲げられる。
自身が見聞きする言葉や文字、一部概念の認識が捻じ曲げられる。
日常生活における元の世界と異世界の差異は、これらにより最小限に抑えられる。
・異次元武器庫の管理者
自身が触れている武器だと認識したものを、異次元に収納出来る。
一度収納した事がある武器であれば、遠隔で収納することも可能となる。
収納した武器は自身の体から1メートルの範囲内であれば、どこにでも出現させることが可能。
武器の一部だけを虚空に出す事も出来るが、その状態で自身以外がそれに触れると、その武器は自動的に収納状態に戻されてしまう。
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評価ありがとうございます!
かなりやる気が出ました!
というわけで、明日にはもう一話投稿すると思います。