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006

 誤算だった、歩く元気ぐらいはあると思っていたのに。

 お腹が痛い、頭が痛い。意識が朦朧とする。全身がだるい。今すぐ座り込んでしまいたい。

 邪念を振り払い、歯を食いしばり痛みに耐える。

 俺は十数分歩いたところで急激に体調を悪化させてしまっていた。


 更にもう一つの誤算は兵士の視力が普通だった事だ。

 ファンタジー世界で生きている(イコール)視力が良いと思い込んでいた。自分の視力が良すぎるから余計に思い込みを強くしていた。

 こんなことならもう少し乗っけていってもらえばよかったかな……

 


「はぁ、はぁ、はぁ……」

 あと少し、あと少しで門に辿り着く、兵士もそろそろ気付いてくれるはず。

 ふらふらになりながらも一歩一歩着実に前進する。


 そうしてようやく、門の左右に取り付けられた明かりが俺を微かに照らす距離まで近づいた。

 そこまで近づけばさすがに兵士は気付いたようで、驚いた表情を見せた後、生真面目な表情になった。

 兵士は鎧をがちゃがちゃいわせながら、こちらに向かって走り出している。

 そして、走りながら声をかけてきた。

「おい! 大丈夫か! 何があった!?」


 今更気付いたけど、言葉が通じない可能性があったな、そういえば。

 まぁ杞憂みたいだけど。

 はぁ、よかった、本当によかった。真っ先に安否を確認してくれるとか、超紳士。

 これなら大丈夫そうだ……本当によか……た……ア……レ?


 安心したせいか気を抜いてしまう。

 目の前の景色がぐるんと揺れたかと思うと急に縦に回転した。

 そして、ぶつかった衝撃が体の前面と顔に襲いかかるが、痛みは全くない。

 目の前に地面が見える。しかし、それもぼやけて黒くなって消えていった。

「おい! しっかりしろ! 大丈夫か!?」

 その声を聞いたのを最後に俺の意識はぷっつりと完全に切れた。




 -----------------




 カリカリカリと軽快な音が聞こえる。

 目を開けると、そこには見知らぬ古びた木製の天上が見えた。

 背中は硬すぎす柔らかすぎない心地のいい感触で、体にはシーツが掛けられている。

「あれ? 俺は……」


「お、目ぇ覚ましたか!」

 大きな声が聞こえてきたので、ゆっくりと起き上がり、その声がする方に目を向ける。

 そこには筋肉ダルマとでもいうべき赤髪の大男が、サイズ的にも見た目的にも合わない羽根ペンを握り、机に向かって座っていた。

 大男の額には二本の角が天に向かって生えており、それが更に凶悪さを醸し出していた。

 そんな大男は今ニヤリと微笑んでいると推測されるが、ちっとも凶悪さが緩和されていない。


 俺はそんな大男の姿に恐怖し、盗賊の頭か何かかと考える。

 だが、小綺麗な格好をして、机に向かってペンを走らせているような盗賊はいないだろうなと考え冷静になる。


「ここは……?」

「ここは冒険者協会のフロストベル支部だ。おれぁここを任されてる支部長のランドリクってもんだ、ランドってよんでくれや」

 盗賊ではなく俺を介抱してくれた恩人のようだ。ここはちゃんと名乗り返さねば。

「えっと、俺は……」

 あれ?俺名前どうしよう、元の世界の名前ってこっちじゃ浮きすぎない? しかも、今俺女だし……


「あぁ、いい、いい! 自己紹介とか詳しい事情はあとで聞く! それよかさっさとそこに置いてある水とパン飲んで食って体調整えろ!」

 俺が座っているベッドの側にあるテーブルを、羽ペンの先で指した。そこにはコッペパンのような物をのせたお皿と、取っ手のついたコップとピッチャーが置いてある。


 それを見た俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。

 「ありがとうございます、いただきます!」

 まずはピッチャーからコップに水を注ぎ、飲むという行為を何度か繰り返す。

 十分水分補給をしたあと、間を置かずパンに手を出して齧り付いた。

 美味い! 空腹は最高のスパイスだっていうけど、こんななんでもない只のパンがここまで美味しくなるなんて……

 そんな事を考えながら何度か齧り付いていると、あっという間になくなってしまっていた。


「ガッハッハァ! 良い食いっぷりだ! まだ食い足りねぇだろうが、ちょいと待ってろ。今おれの嫁さんが肉焼いてっからな」

「あ、はい、ありがとうございます」

 俺はそう言い頭を下げてペコリとお辞儀する。

「待ってる間に軽くちぃっとばかり聞かせてもらえるか? なんで嬢ちゃんは門の前でぶっ倒れてたんだ?」


「それは……」

 困った、なんて説明しよう。

 まず、異世界から人がやってくるというのがこの世界では普通の事なのかわからない。

 異世界から来たと言うのは不味いだろうな。バレたら最悪解剖とかされそう……

 狼についても情報が少なすぎるし話すのは不味い気がする。


 ということは……

「えっと……なんか記憶がなくなっちゃって、気付いたら平原を飲まず食わずで彷徨ってて、ぶっ倒れたというか……」

 なんていう苦しい嘘、下手すぎか! ダメだ、なんか申し訳なくて相手の目が見れない。


「はぁ、そんなに目ぇ泳がせてたら嘘だって言ってるようなもんだぜ。まぁいい、なんか言えねぇ事情があんだろ」

「えっ……」

 俺は目を見開いて驚く。それでいいのかよ……

「俺の経験則から言やぁ嘘が下手なやつに悪いやつぁいねぇ! ガッハッハァ!」

 なんという心の広さ、凶悪な容姿からは想像もつかない。

 ……いや、大雑把なだけかもしれない。なんかそんな気がする。


「名前は言えるのか?」

 あっ、考える時間はあったというのに名前の事すっかり忘れてた……

 もうどうすればいいのかわからないので、正直に答える。

「名前わからないです……」


「ん? 名前がわからない……記憶がないってぇのは本当なのか! そりゃぁ不便だな」

 なんか都合よく納得されたけど、記憶喪失は嘘です、なんて言えない……


「名前どうしよう……」

「どうしようって言われてもなぁ……」


 ランドさんは腕を組んで、んーと言いながら考え込んでいる。

 そして、ハッと何かに気付いたのか、手をポンと叩いて言う。

「あぁ! そういやぁあの手があったな!」

 そんな古典的な仕草する人初めて見たな、なんて思いながら疑問を返した。

「あの手?」

「名前が思い出せねぇなら、ステータス見りゃぁ一発だ!」


 ステータス!?


うああああ、思いつきで書いてるから登場人物とか全く考えてなかったああああ!

か、考えねば……


005と006を後から読み返してみたら、自分でもかなり変だと思えるレベルでやばかったので、少し書き直しました。

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