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寝る前にもういっちょ投稿!(`・ω・´)

「それじゃー、次の道草いってみよー♪」

「大丈夫なんですか? もうかなり時間たってますけど……」


「賄賂も買ってあるし、たぶん大丈夫ー」

フェリス先輩は紙袋をプラプラと揺らす。

賄賂って悪い言い方だ、不安しかない。


「それに次の道草はすぐに済むからダイジョーブっ」


俺はフェリス先輩の後について、人気の少ない裏通りを歩いて行く。

こんな人通りの少ない道を歩くのはなんだか怖い。


「これどこに向かってるんですか……?」

「すぐわかるよー、すぐすぐー♪ そこ曲がったらもう目の前ー」


俺は言われるがままに歩き、その道を曲がる。

曲がった先には何人もの子供が走り回る広場に、少し大きな建物が見えた。


ど田舎にある規模の小さな学校のようにもみえる。

走り回っている子供達の顔立ちは幼く、俺よりも背が低い。

と言っても、そんなに大差はなさそうだけど……俺って本当に小さいな。


「着いたよー♪ ようこそ、あたしとティアちゃんが育った孤児院へ♪」

フェリス先輩はくるりとこちらに向き直り、ニッコリと微笑む。


「孤児院……」

フェリス先輩とティアちゃんは孤児院で育ったのか……全くそんな感じがしなかった。

そして、走り回っている子供たちを見ても全く悲壮感なんてなく、孤児だと言われなければわからない。

それだけでここがとても良い孤児院だというのがよくわかる。


「あっー! フェリスねーちゃんだー!」

広場で走っていた子供たちのうち、一人の少女がフェリス先輩に気付いて走り寄ってくる。

他の子供たちもフェリス先輩に気付いたようで、少し遅れて走り寄ってきた。


しかし、一番最初に気付いた少女は近くまでやってくると、立ち止まり、大きな声で

「フェリスねーちゃんがお人形さんつれてきたー!」

と叫びながら、Uターンして建物の中へと走っていった。


他の子供たちも、えっ? お人形? とびっくりしている。

そして、そんな子供たちも俺の姿を見て、「あー」と納得したような感じだった。


「ふひひ、お人形さんって。確かにお人形さんみたいに可愛いもんねっ、ルル後輩は」

フェリス先輩は本当に楽しそうに笑っている。

人形扱いされた俺自身はただポカーンとするしかなかった。


「ねぇねぇ、フェリス姉、この人だぁれ?」

「この子はあたしの後輩だよっ。はい、ルル後輩、自己紹介どぞっ♪」


「えっ? あ、ルルです、よろしくお願いします?」

急に自己紹介って言われたせいで、語尾が疑問形になってしまった。

いきなりの振りに弱いのでやめてほしい……


「フェリス姉の後輩? ねぇねぇ、ルルお姉ちゃん、こんなのが先輩で辛くない? 大丈夫ー?」

「なっ、こらー! こんなのってなにー!?」

「キャー! フェリス姉がおこったー! 怒り魔だー! みんなにげろー!」


三人の子供がわーきゃー言いながら走って逃げていった。

「あっ、こらっ! まてー!」

フェリス先輩は手に持っていた紙袋を置いて、子供たちを全力疾走で追いかける。

子供たちも足速いなー。


追いかけっこをしているフェリス先輩と子供たちをぼーっと眺めていたら、ふいに声をかけられる。

「なぁなぁ、ルルは彼氏とかいんのか?」

一人逃げずに残った子供から呼び捨てで呼ばれた。生意気な。


「いないけど」

「じゃっ、俺と結婚なー」

はぁ? 何言ってんだコイツ……いや、子供の言うことだ。大人の対応しよう。


「ごめん、結婚とかそういうのはまだ考えてないから」

「うわぁ、バッカだー。時代の波に取り残されるぞ。うちのふくちょーみたいになるぞー」

なんだと、コラー! こいつ馬鹿って言った、コイツ!

というか、ふくちょーって誰だ……


「少年、誰かに結婚を申し込むなら、まずは経済力がいるんだよ。お金いっぱいいるんだよ」

「えー、俺チョー強くなるぜ、ゆーりょー株ってやつだぞ。お金なんていくらでも稼げるぞ」

俺はこの少年に現実というものを教えてやらないといけないのかもしれない……


「はぁ、はぁ……こらっ、キッド。ルル後輩を困らせない。誰にでも結婚するなんて言っちゃダメッ」

フェリス先輩は左脇と右脇にそれぞれ子供を抱えて戻ってきた。

抱えられている子供は楽しそうに「助けてー、リース!」と叫んでいる。


リースっていうのはたぶん一緒に逃げていた一人だろう。

一人逃げおおせていたリースは、遠くでフェリス先輩の隙をうかがっている。


「えー、誰にでもは言ってないって」

「あたしやティアちゃんに何度も言ってたでしょー、それに他の人にも言ってたでしょっ」


「んー、フェリスはもう別にいいや」

「えっ!? 別にいいやって何っ!? えっ? なんでっ!? ちょっと傷ついたよっ!」

フェリス先輩はものすごくショックを受けているようで、ガーンという効果音がよく似合う顔になっていた。


「また来てたのかフェリス」

子供ではない低い女性の声が聞こえたので、そちらの方を見ると、栗色の寝癖長髪ヘアーな背の高い女性がこちらに向かって歩いてきていた。

その背には最初に俺の事を人形と呼んだ子供が引っ付いている。


「あっ、副長。お土産買ってきたよっ」

周りの子供たちはお土産という言葉に反応する。

遠くで隙をうかがっていたリースも走り寄ってきていた。

フェリス先輩は抱えていた子供を降ろし、紙袋を手にとる。

そして、紙袋の中からパイが入った箱を二つ取り出して副長に渡した。


「あぁ、いつもサンキューな」

「ふひひ、あとあたしの後輩も連れてきたよ」


「ん? あぁ、噂のお人形さんか」

「ルルです、よろしくお願いします」


「あぁ、よろしく。私はこの孤児院の副院長をやっているレイラだ」

レイラさんの後ろに引っ付いている少女は「お人形さんが喋ってる……」と言って、目を輝かせていた。


「で、今日仕事は?」


「あるよー」


「あるよーって……サボってて大丈夫なのか? しかも、後輩まで巻き込んで」


「た、たぶん……まだ大丈夫、たぶん……」

えぇぇ、もっと自信をもってサボって、俺まで不安になってくる。

いやもうとっくの前から不安だったけど。


「はぁ、さっさと仕事に戻れ、また休みの日にくればいいだろ」


「うんっ、そうだねっ。急いで戻るー。でも、その前に……院長は元気?」

「あぁ、今日は体調が良いみたいだ。って言ってもほとんどベッドの上なのは変わらないけどな……」

「そっか、わかった。ありがとっ。また休みの日にでも会いに来る」


子供たちは「もう帰っちゃうの?」と残念そうだ。

「それじゃー、また休みの日にねー」

「あぁ、またな」

「「ばいばーい!」」

子供たちは元気よく手を振っているので、俺も手を振った。控えめに。


あっ、そうだ忘れてた。

「そういえばレイラさん、そこのキッドという少年が、馬鹿は時代の波に取り残されて結婚できない、副長みたいにって言ってましたよ」

「えっ! ルル! おまっ! 俺そんな言い方してな……」

「ほう、キッド。お前そんな事言っていたのか……」

フッ、してやったり。

そして、キッドのギャーという叫び声を背に俺は歩き出した。


「ルル後輩っ、走ろうっ!」

……歩いている場合じゃないそうだ。

フェリス先輩と一緒に走り出す。

さすがに長時間サボりすぎて焦っているようだった。

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