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二人で一つの物語  作者: 雨白狐
第零章 誰も知らないセカイ
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次章前座 『異世界入門』

 気がつくと、そこは姿見の中だった。いや、姿見の中という表現は少しおかしいようだ。ならばこう記すとしよう。ナイトは異世界の中に立っていた、と。



「いまのは…どうなったんだ?いまいち状況が掴めねぇんだが…ってあれ?」



 一人で喋っているうちに、自分が異世界に立っていること以外に、ある不可解な点を発見する。彼は己の声を聞きながらただただ呆然とした。

 彼が気づいたこと、その真相は…



「この声って…この体って…、まさかザークか!?」



 彼はとてつもなく驚いている。そしてそれをなんとかして確かめたいと思っている。しかし、それを確かめる術は無い。なぜかは分からぬが、己の姿が鏡に映らないのだ。彼はその現象の意味が理解できない。が、そんな時、頭の中に聞き覚えのある声が響いた。



『ナイトさん、ナイトさん…ですよね…?』



 その弱々しい喋り口調は間違いない、ザークのものだ。でもなぜ彼の声が頭の中で響くのか。その答えは次に彼の話す言葉の中にあった。



『なぜかはわかりませんが…僕たち一体化しちゃったみたいなんですよ』



 彼は、どうしようもない現状をただただナイトに伝えるのであった。そして、ナイト自身、この体がナイトのものではないと改めて確信する。


 一体化、それは一つの体を二人で共有するということ。すなわち、一つの体に二つの精神が宿っている。しかし、いまその体の主人格となっているのはナイトのようで。一体化の謎や主人格の疑問が湧き上がってくるなか、ナイトは一番の重要点に気付く。



「それはそうと…、俺はどうやって帰ったらいいんだ?」



 彼は自分が異世界に『閉じ込められている』事実をようやく飲み込んだ。



 姿見は、さっきまでの光を失っていた。だが、ナイトは諦めずに帰る術を探した。来てしまった時と同じことをしたり、姿見に力尽くで体を押し付けてみたり。できることは限られていたが、それでも諦めずに探し続けた。



『これから僕たちどうしましょう…』



 半分諦めモードのザークの口から、情けない言葉がこぼれ落ちる。そんな言葉にナイトは、



「どうする?きまってんだろ!帰るんだよ俺の世界に!!!」



 と、少し怒り口調で言い返した。しかし、そうは言ったものの、やはり、何かが起こるなんて、そんな気配は微塵もない。イライラが隠せないナイトに、一言ザークが指摘する。



『でも帰るって、どうやって………?』



 もっともな指摘だった。その指摘には、ナイトでさえ返す言葉に迷った。しかし、なんとか言葉を繋ぐ。



「どうやってって……。…それは今から探すんだよ!今から!!」


『ちょっと、待ってくださいナイトさん……!!』



 そう言うと、ナイトはザークの言うことすら耳に入りず、そのまま家を飛び出した。


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